「愛と哀しみのボレロ」とは

「愛と哀しみのボレロ」のポスター
黄金町&映画「愛と哀しみのボレロ」(その②)|ほくとの気ままなブログ
オープニングは、チャリティ公演の前の喧噪のような場面から始まります。突然場面が変わるので、一瞬混乱してしまうところもありますが、最後の場面になって、こういうことだったのかと納得してしまいます。
メインとなる4人のモデルになった人々
この映画では、モデルとなる4人の音楽家、ダンサーがいます。ソ連から亡命したバレエ・ダンサーのルドルフ・ヌレエフ、シャンソン歌手のエディット・ピアフ、指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤン、バンドリーダーや作曲家・編曲家として成功したグレン・ミラーの4人です。
映画でのエピソードは、架空のものもありますが、同じ時代を生きてきた4人の、象徴的な部分を切り取って、それぞれの国や立場から見た、それぞれの歴史を描いています。
主な登場人物
パリ・メイヤー家

シモン・メイヤーと妻のアンヌ・メイヤー、息子のロベール・ブラ
愛と哀しみのボレロ_1 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ

ボリス・イトビッチと妻のタチアナ・イトビッチ、息子のセルゲイ・イトビッチ
愛と哀しみのボレロ_1 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ
パリ・カールとエブリーヌ

ドイツ軍の軍楽隊長のカール・クレーマーとナイトクラブの歌手エブリーヌ
愛と哀しみのボレロ_1 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ
ベルリン・クレーマー家

ベルリンへ帰ったカールと、生きてカールの帰りを待っていた婚約者マグダ
愛と哀しみのボレロ_1 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ
アメリカ・グレン家

マイクに向かい、妻のスーザンへのメッセージを語るジャック・グレン
愛と哀しみのボレロ_1 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ

ジャックの妻スーザン・グレンと長男ジェイソン、長女サラ
愛と哀しみのボレロ_1 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ
「愛と哀しみのボレロ」のあらすじ
1981年のフランスで、国際チャリティー音楽祭が開催され、ヨーロッパやアメリカの音楽家や芸術家たちが参加します。ラヴェルのボレロをオーケストラが演奏し、声楽家が歌い、ダンサーが踊るという企画が実現し、進行役をエディットが務めることになります。
オーケストラの指揮者カール、声楽家のサラとパトリック、ダンサーのセルゲイ、そして進行役のエディットは、国籍も経歴も職業も違いましたが、第2次世界大戦を生き抜いてきた、それぞれの歴史がありました。
シモンとアンヌ、息子のロベールと孫のパトリック
シモンとアンヌの夫婦は、一見チャリティー音楽会とは無縁のように思えます。アンヌは収容所で衰弱しながらも生き残りましたが、シモンはガス室に送られ亡くなってしまいます。解放されたアンヌは、置き去りにした息子を探しますが、なかなか見つからず、精神を病んでいきます。
アンヌが列車から線路に置き去りにした息子は、駅の近くの教会で育ち、愛情ある里親の元でロベール・ブラとして成長し弁護士になります。ロベールの息子パトリックは、自分自身の人生を見つけようと模索を続け、詩や歌を書いては自分で歌うようになります。そしてチャリティー音楽会のシンガーの一人に選ばれます。

収容所でバイオリンを演奏するアンヌ
愛と哀しみのボレロ_1 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ
ボリスとタチアナ、息子のセルゲイと孫のタニア
ボリスを失ったタチアナは、息子を育てるためにバレエ団の教師として働き、息子のセルゲイもバレエダンサーとして認められていきます。ソ連国内でも国を代表するダンサーとして勲章も与えられ、海外公演も許されるようになります。パリのオペラ座での公演の成功を、電話で母のタチアナに知らせた直後、モスクワに戻る途中の駅でフランスに亡命してしまいます。

フランス公演のセルゲイ
愛と哀しみのボレロ (アイトカナシミノボレロ) - 関心空間
カールとマグダ
捕虜収容所から解放されたカールは、ドイツに戻り、生き残っていた婚約者と結婚します。指揮者として成功し、アメリカでの公演もチケット完売の知らせを受けて喜びますが、客席には評論家2人しかいませんでした。ヒトラーの前で演奏したことでユダヤ人などの反感をかい、チケットを買い占められていました。チケットが売れているのなら、演奏をするべきという信念のもとに、2人の観客に向けて演奏するカールでした。

たった2人の観客の前で演奏を指揮するカール
愛と哀しみのボレロ_1 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ
エブリーヌと娘のエディット
ドイツ軍人との子供をもうけたことで糾弾されたエブリーヌは、故郷に戻りますが、そこにも居場所はなく、娘を残して自殺してしまいます。エブリーヌにはつらくあたった父母も、孫のエディットはかわいがり、愛情を持って育てます。成長したエディットは、パリに出て、様々な仕事を経てテレビのキャスターになります。

祖父母に見送られパリに旅立つエディット
愛と哀しみのボレロ_1 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ
ジャックとスーザン、息子のジェイソンと娘のサラ
ジャックはアメリカ軍の軍楽隊の指揮官として、妻と幼い子供たちを残してヨーロッパに派遣されます。前線での慰問、戦後の戦勝パレードや行事などで音楽を担当して雰囲気を盛り上げます。
家に戻り、子供たちも成長し、長男のジェイソンはテレビや映画のプロデューサーに、長女のサラは才能ある声楽家になり、サラはチャリティー音楽会で歌うことになります。ボーカル部分を2つのパートに分けることにしたサラは、オーディションでパトリックをパートナーとして選びます。

慰問団の指揮をするジャック
愛と哀しみのボレロ_2 (1981) フランス こんな日は映画を観よう/ウェブリブログ
50年の時を超えてめぐり合う4つの家族たち
そして舞台はまた1981年のパリ、トロカデロ広場でのチャリティー音楽会の場面に戻ります。進行を務めるエディット、エディットが自分の娘とは知らずにオーケストラの指揮をするカール、亡命して祖国には戻れないセルゲイ、声楽家となったジャックの娘サラと、アンヌの孫パトリックが、一つの舞台を一緒に作り上げていきます。
「愛と哀しみのボレロ」に関する感想・評価 / coco 映画レビュー
「愛と哀しみの・・」という日本題は、何となく面はゆい題名だな、と当時から思っていたのですが、今日、34年ぶりに観てみると、ある意味、なかなか当たっているかな、とも思いました。
http://kandoujin.blog48.fc2.com/blog-category-10.html「感動手習帳」~芸術をじっくり予習、楽しく反芻。 ◆舞台全般鑑賞記
名作を作り上げた巨匠たち
監督は、クロード・ルルーシュ
代表作として「男と女」、「白い恋人たち」、「パリのめぐりあい」など多数の作品があります。スポンサーがつかず、自費で制作した「男と女」はカンヌ国際映画祭のパルムドール、アカデミー外国語映画賞を受賞しました。「白い恋人たち」は、権威主義的とみなされ、正当な評価を受けられない時期が続きました。

監督のクロード・ルルーシュ
クロード・ルルーシュ - Wikipedia
音楽はフランシス・レイとミシェル・ルグラン
フランシス・レイは映画音楽も多く手掛けている作曲家で、代表作には「男と女」、「白い恋人たち」、「ある愛の詩」などがあります。「愛と哀しみのボレロ」では、アンヌのバンド仲間として出演もしています。
ミシェル・ルグランは、作曲だけでなく、ジャズピアニストとしても活動しました。代表作には「シェルブールの雨傘」、「栄光のル・マン」、「華麗なる賭け」など多数あります。
ボレロの振り付けは、モーリス・ベジャール
振り付けは、「20世紀バレエ団」のモーリス・ベジャールが手掛けました。
ジョルジュ・ドンが踊るボレロは、ソリストが円卓の上で踊り、群舞がそれを取り囲むという手法で、パフォーマンスとして知的財産権を取得して、許可なく同じ振り付けで踊ることができません。

再上映の際に作成された相関図
「感動手習帳」~芸術をじっくり予習、楽しく反芻。 ◆舞台全般鑑賞記
チャリティー音楽会では、主な登場人物と、それにかかわる様々な人々が、会場やテレビで、それぞれの思いを胸に見ているシーンが流れます。ボレロの繰り返される主旋律が、繰り返される様々な人生を象徴しているようです。
それぞれの親子を、それぞれの俳優たちが2役で演じているので、混乱してしまいそうですが、時間の経過と共に、一つの家族の歴史として見ることができるようになっていきます。
テレビで見ても楽しめますが、ぜひ映画館の大画面で見ていただきたい作品です。