『ニューヨーク・シティ・セレナーデ』
某自動車メーカーのCMでお茶の間でもおなじみ、日本でも大人気だったクリストファー・クロスの『ニューヨーク・シティ・セレナーデ』。原題も当然、カタカナを英語にした『New York City Serenade』と思っていた方も多かったことでしょう。サビの歌詞でも、"When you get caught between the moon and New York City" のように、"ニューヨーク・シティ" という言葉が登場するので当然の発想です。
ところが、実際の原題は『Arthur's Theme (Best That You Can Do)』、日本語に訳すと『アーサーのテーマ』。実は元々は、1981年のアメリカのコメディ映画『ミスター・アーサー』の主題歌として制作された楽曲で、世界的にも映画の主題歌という認識が主流のようです。第54回アカデミー賞ではアカデミー歌曲賞を受賞し、全米シングルチャートでもナンバーワンを獲得しています。
『クリスタルの恋人たち』
『クリスタルの恋人たち』は、ローズ・ピアノのサウンドをベースに、グローヴァー・ワシントン・ジュニアのサックス、ビル・ウィザースのボーカルがメロディを奏でる楽曲。全米シングルチャートでは年間18位、第24回グラミー賞では最優秀R&B楽曲賞を受賞した歴史的ヒット曲です。日本でも、久保田利伸のカバー・シングルを筆頭に、近年も多くのアーティストがカバーしています。
原題は『Just The Two Of Us』で、意味は「私たち二人だけ」。
1番、2番の冒頭の歌詞に、
I see the crystal raindrops fall
(クリスタルのような雨粒が落ちるのを見ている)
I hear the crystal raindrops fall
(クリスタルのような雨の音が聞こえる)
のように "クリスタル" という言葉が登場するので、邦題はこれらを引用したのかもしれません。
『夢見るNo.1』
『夢見るNo.1』は、『コール・ミー』の世界的ヒットで有名なブロンディの楽曲で、本曲もまた米英のシングルチャートでナンバーワンを獲得した大ヒット曲です。原曲は、ジャマイカのレゲエ・バンド、パラゴンズの1967年の楽曲。本曲は、その最初のカバーです。
原題は『The Tide Is High』で、意味は「潮が高い」。恐らく「恋敵が多くて大変なこと」の比喩表現なのでしょう。曲中には、
The tide is high but I'm holdin' on
(ライバルが多くて大変だけど頑張っているわ)
I'm gonna be your number one
(私はあなたのナンバーワンになるわ)
というフレーズが繰り返し登場します。後者の歌詞から、"No.1" というタイトルが付けられたのかもしれません。
『シーサイド・ラヴ』
日本でもファンの多い、オーストラリア出身のソフトロック・デュオ、エア・サプライ。本曲『シーサイド・ラヴ』は、彼らにとって唯一、全米シングルチャートでナンバーワンを獲得した代表曲です。
原題は当然、カタカナを英語にした『Seaside Love』かと思いきや、実際は『The One That You Love』で、意味は「あなたの愛する人」。歌詞を見ても、海に関するフレーズは全くありません。エア・サプライというと海のイメージが強いので、意図して "シーサイド" と付けたのでしょうか。
『9時から5時まで』『9 to 5 (モーニング・トレイン)』
1981年、アメリカでは奇しくも2曲の "9 To 5" という曲が大ヒットしました。
一つがドリー・パートン、もう一つがシーナ・イーストンの楽曲です。厳密には、シーナ・イーストンの曲名は、ドリー・パートンの曲名との混乱を避けるため、北米向けに『Morning Train (Nine To Five)』というタイトルが付けられました。いずれも、全米シングルチャートでナンバーワンを獲得する大ヒットを記録しています。
一方の邦題は、ドリー・パートンの方が『9時から5時まで』、シーナ・イーストンの方が『9 to 5 (モーニング・トレイン)』。ある意味、原題に忠実と言えますが、ドリー・パートンの方は、自身が主演したコメディ映画『9時から5時まで』と同じタイトルにして合わせたということなのでしょう。
『暴走マイライフ』
『暴走マイライフ』は、ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンドのヒット曲で、原曲は1972年のオーティス・クレイの楽曲です。ただし、オーティス・クレイ版は『愛なき世界で』という別の邦題が付けられています。
原題は『Tryin' To Live My Life Without You』で、意味は「俺は君なしで自分の人生を生きようとしている」。歌詞には、
I used to smoke five packs of cigarettes a day
(1日にタバコを5箱吸っていた)
I'd drink four or five bottles of wine
(ワインをボトルで4, 5本飲むよ)
といったフレーズがあり、いかにも "暴走" という雰囲気を醸し出しています。