敬子「薫さん、あなたはその陶器を眺めて司を偲ぶつもりらしいけど、 あなたに出来るのはそれだけよ。」
敬子「薫、司はどんなことがあっても渡さないわよ。 あんたなんか……あんたなんか死ねばいい!」
司は失明してしまう。
バーナーが異常を起こしていることに気付いて、慌てて元栓に手を掛けた。 その瞬間、窯は大爆発を起こして司の体を吹き飛ばしてしまうのだった。
窯焚き中の爆発事故に巻き込まれて病院に担ぎ込まれた。
幸い命に別状はなかったが、
診察の結果角膜が熱損傷していることが判明した。
疲労が蓄積していたこともあり、
司は医師から絶対安静を告げられた。
目に包帯を巻かれた状態で自宅療養に入った司は、
暗闇の中で様々な思案に暮れた。
このまま目が見えなくなるのではないか。
司「見えない。お前が見えない」
『陶芸家としての輝ける第一歩を踏み出したその日はまた、
結城司に失明の宣告が下された日であった』
完全失明。 回復の見込みなし。 医師は、司に盲人用の白い杖を手渡した。
司は一心不乱に陶芸に打ち込んだ。 点字本を頼りに、新しい作品を生み出そうと懸命に頑張り続けた。 土を捏ね、轆轤を回し、分からないことがあれば点字本で調べる。
敬子「司、あたしが抱けないのね。 あたしは貧乏だけなら辛抱するわよ。 どうにも我慢出来ないのは、あなたがその見えない目の奥底でも、 ずっと薫の姿を見続けていることよ」
司「薫、俺や敬子のところにもう来るな。
お前俺に同情してくれてるようだが、もうたくさんだ。
愛だのヘチマだの言ったところで、目の見えるお前に俺の身になれる訳がない。
無駄な同情など豚にやってくれ」
言い捨てて、司は夜の街へ手探りで出て行った。
薫はポーチから針を取り出した。「私も何も見えなくなれば、司と同じになれる」
意を決して自分の目を突き刺そうとしたその時、誰かの手が薫から針をもぎ取った。
司の姉・小百合だった。
司の姉・小百合「薫さん、いつも針を持っているのは女としてとてもいい心掛けよね。 でも、針は物を繕うために使うものでしょ。 あなたに繕って貰いたいのは、司の心」
薫は司の目になろうと誓う
敬子「あんた、また司とあっていたのね!」と殴ろうとする。
それを止める薫。
薫「敬子さん、あなた本当に司の妻なの?司を苦しめることしかしてないじゃない。私はもう司とはあいません。」
敬子「そんな言葉信じるもんか!」
薫「信じるも信じないのも勝手になさい。ただこれだけは言っておくわ。私は司を一生愛し続けます。」ときっぱり言って薫は立ち去る。
陶芸に打ち込む司。その出来栄えは素晴らしいものだった。