時代を先取りしすぎた「早すぎた未来」が、いま鮮やかに甦る
1980年代前半、日本のポップス・シーンに彗星のごとく現れ、またたく間にスターダムへと駆け上がった女性コーラス・バンド、Sugar(シュガー)。彼女たちの代表曲「ウエディング・ベル」は、毒のある歌詞を透明感あふれる美しいハーモニーで歌い上げるという斬新なスタイルで、今なお語り継がれる名曲です。
しかし、Sugarの本質は単なる「一発屋のアイドル・グループ」ではありませんでした。彼女たちが活動期間中に残した4枚のオリジナル・アルバムを聴き直すと、そこには当時の水準を遥かに凌駕する高度な音楽性と、2020年代のリスナーをも魅了する「先進性」が詰め込まれています。
2026年1月23日、フォーライフミュージックエンタテイメントより、Sugarの全オリジナル・アルバムが最新デジタルリマスター音源で一挙配信解禁となりました。世界的なシティポップ・ブームの中で再評価が進む今、彼女たちが提示した「早すぎた未来」の正体を探ります。
個性が光る全4作品:進化し続けた音楽的変遷
今回の配信では、1981年のデビュー作から1985年の最終作までの変遷を、最高品質のサウンドで辿ることができます。
■1. 『Sugar Dream』(1981年12月5日リリース)
デビュー・アルバムにして、その音楽的志向の高さを見せつけた一枚。ラテンフュージョンバンド「カリオカ」のメンバーを中心とした腕利き演奏陣による洗練されたアンサンブルと、3人の清涼感あふれるコーラスが見事に融合しています。初期の瑞々しさと都会的なセンスが同居する名盤です。
■2. 『Coffee Break』(1982年9月21日リリース)
前作の路線を継承しつつ、よりフュージョン色を強めてスケールアップした2ndアルバム。よりテクニカルな演奏と、それを乗りこなす彼女たちの表現力が際立ちます。昼下がりのティータイムを思わせる軽やかさと、大人の哀愁が絶妙なバランスで保たれています。
■3. 『Sugar Bean』(1983年5月21日リリース)
外部の強力なブレーンが参加し、音楽性を大きく拡張した3rdアルバム。原田真二、越美晴、山梨鐐平といった個性豊かなアーティストが楽曲提供し、巨匠・瀬尾一三が編曲を担当。実験的な試みとポップスとしての完成度がハイレベルで結実した、Sugarの転換点とも言える作品です。
■4. 『29:00 AM』(1985年8月21日リリース)
Sugarの最終作となった本作は、初期・松田聖子作品のプロデュースで知られる小田裕一郎がプロデュース、全編曲を入江純が担当。80年代中盤のデジタル・ファンクの意欲と洗練を併せ持ち、アーバンな雰囲気漂う傑作です。現在、海外のDJやコレクターからも高い支持を得ている「和モノ・ファンク」の逸品でもあります。
現代の感性と共鳴する「普遍的なサウンド」
Sugarの音楽が、なぜ今これほどまでに新しく聞こえるのでしょうか。そこには、AORやボサノヴァ、ジャズの要素を柔軟に取り入れたシティポップ的なアレンジと、浮遊感のあるシンセサウンド、そして軽快なカッティングギターがあります。
これらの要素は、現代の音楽シーンにおけるVaporwave(ヴェイパーウェイヴ)やFuture Funk(フューチャー・ファンク)といったインターネット発のジャンルとも極めて高い親和性を持っています。サンプリング・ソースとしても機能するような、研ぎ澄まされた音の断片は、40年以上の時を経て、デジタル・ネイティブ世代の耳にも「自然に届く普遍性」を備えています。
ミキ(Vo, Key)、クミ(Vo, Gt)、モーリ(Vo, Ba)の3人が奏でたハーモニーは、単なる懐古趣味の対象ではなく、現在進行形のポップ・ミュージックとして再び命を吹き込まれました。
音楽配信サービスで始まる「新しい旅」
今回の全アルバム一挙配信は、Apple Music、Spotify、Amazon Music、LINE MUSICといった主要音楽配信サービスでスタートしています。
最新のリマスタリング技術によって、ボーカルの細かなニュアンスや楽器の細部までが鮮明になったSugarの楽曲たち。当時のファンはもちろん、当時を知らない若い世代にも、ぜひその「早すぎた未来」を体感してほしいと思います。色褪せることのない彼女たちの音楽は、今日もまた、私たちの日常に寄り添う一曲として輝き続けることでしょう。
【配信作品(2026 Remaster)】
『Sugar Dream』
『Coffee Break』
『Sugar Bean』
『29:00 AM』