【ランディ・バース】弱小球団にやって来た「史上最強の助っ人」

【ランディ・バース】弱小球団にやって来た「史上最強の助っ人」

阪神タイガースファンに「神様」と言わしめた伝説的な助っ人、それがランディ・バース選手。掛布選手、岡田選手と共に「バックスクリーン3連発」を記録した1985年には3冠王に輝き、チームも日本一に大きく貢献したバース選手の球歴を振り返る。


伝説の記録との戦い

リーグ優勝を決めた阪神タイガースファンの興味は、バース選手が王貞治選手の持つシーズン55本塁打記録に並び、それを破るのか?という事に移っていきます。バース選手がこの年の54本目の本塁打を放った時点で残りは2試合。しかもその2試合とも巨人戦。そして当時の巨人の監督は王貞治監督でした。

残る2試合、「江川卓投手以外」の巨人の投手陣が、王監督の持つ記録を抜かすことはおろか、並ぶことも許さないとばかりに捕手を座らせたままの「事実上の敬遠」をし続けた事は、当時大きな社会問題となりました。(最終戦に登板した斉藤雅樹投手は、バース選手のバットに届く所に投げるというコントロールミス?をし、バースはセンター前ヒットを1本打っています)

「巨人投手陣は逃げた」と…

当時の記事

後に王貞治監督は「自分は敬遠を指示しなかった」と言い、当時巨人に在籍したカムストック投手は、「バースにストライクを投げると罰金を取られた」とこの年のシーズン終盤の事を振り返っています。この2人の言葉が2人とも嘘ではないとするならば、王監督以外のコーチの誰かが敬遠を指示したと見られています。この年、バース選手は結局シーズン54本塁打で終了。本塁打、打点、打率に加え、最高出塁率と最多勝利打点王の5冠王になります。ちなみに外国人助っ人としてセリーグのホームラン王になったのは、バース選手が初めてでした。

更にその翌年の1986年、今度は王貞治選手のもつ「7試合連続本塁打」という記録にバース選手が挑むことになります。5試合連続本塁打を打った時点で迎えた巨人戦、当時ルーキーだった桑田投手から本塁打。タイ記録達成がかかった翌日、先発した江川投手からバース選手は本塁打を打ち、王貞治選手の持つ記録に並びます。
前年の「55本塁打の遺恨」の時も、そしてこの日もバース選手にストレートで真っ向勝負を挑んだ江川投手には賛辞が贈られ、バース選手自身も「江川はいつも勝負してくれた」と後に語っています。

初の日本一

西武ライオンズと対戦した、1986年の日本シリーズ、第1戦で、バース選手は工藤投手から3ラン本塁打を打ったのを皮切りに3戦まで3試合連続本塁打を打ち、苦手の守備でもファインプレーを見せるなどシーズ大活躍します。レギュラーシーズンとあわせて日本シリーズのMVPも獲得し、阪神タイガース球団初の日本一に大きく貢献します。

翌1986年には前述した様に7試合連続本塁打を放つなど大活躍。2度目の三冠王に輝きます。
その後もタイガースの中心になっていたバース選手ですが、難病を抱えた息子の対応を巡って球団と対立。1988年シーズン半ばで解雇となります。大黒柱のバースを失って以降、阪神は長い「暗黒時代」に突入していきます。

活躍したオマリー選手、シーツ選手、マートン選手は「ヒットメーカー」タイプですので、バース選手に最も近いのはマウロ・ゴメス選手ではないでしょうか。

バースの再来?

シーズン開幕前、阪神タイガースの新外国人助っ人の事を「バースの再来」と書くことが関西のスポーツ紙で恒例となっていますが、期待をかけられた外国人助っ人が不発に終わる度に、阪神ファンは神様・バース選手の偉大さを思い出すのでした。

アメリカに帰国した後、バース選手は本業の牧場経営の傍ら、2004年からはオクラホマ州議会の上院議員になり政治家としての面も持っています。また、退団時に球団と対立したバース選手ですが、元来親日家。引退後もたびたび来日。ファンの前にその姿を見せてくれています。

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