前田日明 (まえだ・あきら)
1998年にはすでにリングス・ラストマッチと銘打って、引退セレモニーを行っていた前田であったが(対戦相手は弟子の山本宣久で、前田の判定勝利)、最後にもう一戦、大物との戦いを求めて交渉を続けていた。
当初、標的としたヒクソン・グレイシーは、前田ではなくPRIDEでの高田延彦との再戦を選んだ。
ヒクソンと並行してカレリンと交渉していた前田陣営だが、オリンピック4連覇を狙うカレリンの周囲は参戦に否定的でこちらも難航した。
だが、最終的に交渉がまとまり遂に『霊長類最強の男』がプロのリングに上がることになった。
旧ソ連国家スポーツ省の事務次官をやっていたリングス・ロシアの代表ウラジミール・パコージンが「ソ連崩壊によってスポーツ振興が途絶え、喰えなくなっていた我が国の格闘家たちが、前田の尽力によって何十人も救われた。ロシアの英雄といわれているあなただ、そんな男のためにたった一試合やるくらい、いいじゃないか」と涙を流してカレリンに訴えて実現したと前田は語っている。
また一説には、ファイトマネーを五輪を目指す地元の少年レスラーたちに贈るためにカレリンは決断したとも言われているが、日本のマスコミにカレリンは「私に挑戦してきたのは彼が初めてでした。真剣だったから、受けました。」とだけ語っている。
カレリンとの引退試合は民放のニュース番組で特集されるほど、世間から注目された。
「ヒクソンなんて目じゃない。本当に強い男と対戦するのはこっち」と前田は発表時にコメント。
後に前田は、引退試合の相手にカレリンを選んだ理由について前田は「本当に強い人間っていうのは、こういうことだよっていうのを証明したかった」と語っている。
前田日明 対 アレクサンドル・カレリン試合ルール
・5分2ラウンド
・ロープエスケープ=1ロストポイント
・ダウン=2ロストポイント
・ロストポイントが6つになった時点でTKO負け
・2ラウンド終了時ポイント差で勝敗を決定
・グラウンドによる打撃は禁止
打撃や関節技が許されるこのルールは、アマレスの選手であるカレリンに対して、前田日明に有利なルールだと言われていた。
試合開始と同時に、前田からキックで優勢に攻めるが、カレリンは表情を変えることなく、レスリングの構えのままにじり寄っていく。
後に前田自身が「ベストのタイミングだった」と語ったタックルも、まったく通じず、そのままがぶって前田の体(身長191cm、体重117kg)を子供のように振り回した。
1Rの中盤になんとか脚関節を取った前田だが、カレリンはあっさりとロープエスケープで難を逃れる。
これで先制のポイントは奪ったものの、前田の攻勢はこのときだけだった。
以後はずっとカレリンの独り舞台で、前田をもてあそぶかのようにマットの上に転がすと、こらえる間も与えずにカレリンズ・リフトで投げ飛ばす。
関節を極めるわけでもなく、ただヒジをつかんで仰向けの顔面に押しつけると、前田は身じろぎもできず、レフェリーから何度もギブアップをうながされた。
結果、袈裟固めで2度のエスケープを奪われた前田の判定負けで試合は終わった。
前田日明を軽々と持ち上げるカレリン
前田日明が語るアレクサンドル・カレリン
カレリンと行なった試合について前田日明は、
「バチーンッと俺がベストなタイミングでタックルで倒しに行って『もらった!』と思ったんだけど、カレリンはビクともしない。」
「タックルした瞬間、『ダンプカーと衝突したんじゃないか」と思ったぐらいの衝撃だったよ。アンドレ(アンドレ・ザ・ジャイアント 身長223cm、体重236kg)でもタックルで倒せたんだけどな」
「実際試合をして、クラッチがメチャクチャ強い。アバラの骨が折れるんじゃないかと思った。」
「えっ、こんなクラッチあるの?と思った」
「競走馬に触ったことがあるんですけど、同じ感じの筋肉」
「筋肉のつき方が軽量級の選手と同じなんですよ。ああいう体は持って生まれたものじゃないと、いくら鍛えてもそうならないでしょうね」
となどと述べ、筋肉の質の素晴らしさと体の強さを語っている。
カレリンの敗北と引退
2000年9月26日、シドニーオリンピック決勝のオリンピック4連覇を賭けた試合で、ルーロン・ガードナーに敗れた。
カレリンは世界選手権9連覇を成し遂げた後、ロシア下院選に出馬。
圧倒的な支持を集め、当選した。
しかし、下院議員になったことが仇となり、トレーニングの時間が激減し、33歳の肉体は筋肉が落ち体力も失ってしまっていた。
オリンピック4連覇を賭けた2000年のシドニーオリンピック予選リーグ初戦では「カレリンズ・リフト」はすべて空振りに終わり、試合中に喘ぐように肩で息をし、何度も苦しそうな表情を見せていた。
かろうじて決勝に進んだカレリンだったが既に疲労困憊で『霊長類最強の男』の面影は既に無かった。
この敗北を最後にカレリンはレスリングを引退。
総合格闘技への転身が噂されたが、これも否定し『霊長類最強の男』は静かにマットを下りた。
その圧倒的な戦闘力で日本でも多くの影響を与えたカレリン
カレリンにあやかり「アレクサンダー」をリングネームにしたアレクサンダー大塚
「霊長類最強の女」「女カレリン」などの異名を誇る吉田沙保里
漫画『グラップラー刃牙』にも登場するカレリン
板垣恵介の漫画『グラップラー刃牙』にカレリンをモデルにしたキャラクター『アレクサンダー・ガーレン』が描かれている。
アレクサンダー・ガーレンとは (アレクサンダーガーレンとは) [単語記事] - ニコニコ大百科