元祖『霊長類最強の男』カレリン。前田日明の引退試合の相手を務めた史上最強レスラー

元祖『霊長類最強の男』カレリン。前田日明の引退試合の相手を務めた史上最強レスラー

「霊長類最強の男」と呼ばれたロシアのレスリング選手、アレクサンドル・カレリン。掴まれた相手は投げ技を怖れてそのままフォール負けを選ぶという圧倒的な破壊力をもつ『カレリンズ・リフト』を武器に13年間無敗だった史上最強のレスラー。そのカレリンの実績や映像、前田日明の引退試合の相手を務めたときのエピソード&貴重動画を紹介。


1959年大阪府生まれ。 幼少期より少林寺拳法や空手を習い1977年に新日本プロレスへ入団。その後、プロレス団体UWF、世界初となる総合格闘技団体リングスを旗揚げし、プロレス・格闘技業界に新風を吹き込み「格闘王」と呼ばれる。1999年、アレクサンダー・カレリン戦で現役を引退。引退後はHERO'Sでスーパーバイザーを務めた後、2008年に第2次リングスをスタート。青少年育成のためのイベント「The Outsider」をプロデュースしている。

前田日明 (まえだ・あきら)

1998年にはすでにリングス・ラストマッチと銘打って、引退セレモニーを行っていた前田であったが(対戦相手は弟子の山本宣久で、前田の判定勝利)、最後にもう一戦、大物との戦いを求めて交渉を続けていた。

当初、標的としたヒクソン・グレイシーは、前田ではなくPRIDEでの高田延彦との再戦を選んだ。
ヒクソンと並行してカレリンと交渉していた前田陣営だが、オリンピック4連覇を狙うカレリンの周囲は参戦に否定的でこちらも難航した。
だが、最終的に交渉がまとまり遂に『霊長類最強の男』がプロのリングに上がることになった。

旧ソ連国家スポーツ省の事務次官をやっていたリングス・ロシアの代表ウラジミール・パコージンが「ソ連崩壊によってスポーツ振興が途絶え、喰えなくなっていた我が国の格闘家たちが、前田の尽力によって何十人も救われた。ロシアの英雄といわれているあなただ、そんな男のためにたった一試合やるくらい、いいじゃないか」と涙を流してカレリンに訴えて実現したと前田は語っている。

また一説には、ファイトマネーを五輪を目指す地元の少年レスラーたちに贈るためにカレリンは決断したとも言われているが、日本のマスコミにカレリンは「私に挑戦してきたのは彼が初めてでした。真剣だったから、受けました。」とだけ語っている。

カレリンとの引退試合は民放のニュース番組で特集されるほど、世間から注目された。
「ヒクソンなんて目じゃない。本当に強い男と対戦するのはこっち」と前田は発表時にコメント。

後に前田は、引退試合の相手にカレリンを選んだ理由について前田は「本当に強い人間っていうのは、こういうことだよっていうのを証明したかった」と語っている。

前田日明 対 アレクサンドル・カレリン試合ルール

・5分2ラウンド
・ロープエスケープ=1ロストポイント
・ダウン=2ロストポイント
・ロストポイントが6つになった時点でTKO負け
・2ラウンド終了時ポイント差で勝敗を決定
・グラウンドによる打撃は禁止

打撃や関節技が許されるこのルールは、アマレスの選手であるカレリンに対して、前田日明に有利なルールだと言われていた。

試合開始と同時に、前田からキックで優勢に攻めるが、カレリンは表情を変えることなく、レスリングの構えのままにじり寄っていく。

後に前田自身が「ベストのタイミングだった」と語ったタックルも、まったく通じず、そのままがぶって前田の体(身長191cm、体重117kg)を子供のように振り回した。

1Rの中盤になんとか脚関節を取った前田だが、カレリンはあっさりとロープエスケープで難を逃れる。
これで先制のポイントは奪ったものの、前田の攻勢はこのときだけだった。

以後はずっとカレリンの独り舞台で、前田をもてあそぶかのようにマットの上に転がすと、こらえる間も与えずにカレリンズ・リフトで投げ飛ばす。
関節を極めるわけでもなく、ただヒジをつかんで仰向けの顔面に押しつけると、前田は身じろぎもできず、レフェリーから何度もギブアップをうながされた。

結果、袈裟固めで2度のエスケープを奪われた前田の判定負けで試合は終わった。

前田日明はカレリンとの対戦前「あれはレスリングのルールだから通用する技。自分は絶対に喰らわない」と自信の程を語っていたが、実際の試合では2回カレリンズ・リフトを受けてしまった。

前田日明を軽々と持ち上げるカレリン

前田日明が語るアレクサンドル・カレリン

カレリンと行なった試合について前田日明は、
「バチーンッと俺がベストなタイミングでタックルで倒しに行って『もらった!』と思ったんだけど、カレリンはビクともしない。」
「タックルした瞬間、『ダンプカーと衝突したんじゃないか」と思ったぐらいの衝撃だったよ。アンドレ(アンドレ・ザ・ジャイアント 身長223cm、体重236kg)でもタックルで倒せたんだけどな」
「実際試合をして、クラッチがメチャクチャ強い。アバラの骨が折れるんじゃないかと思った。」
「えっ、こんなクラッチあるの?と思った」
「競走馬に触ったことがあるんですけど、同じ感じの筋肉」
「筋肉のつき方が軽量級の選手と同じなんですよ。ああいう体は持って生まれたものじゃないと、いくら鍛えてもそうならないでしょうね」
となどと述べ、筋肉の質の素晴らしさと体の強さを語っている。

カレリンの敗北と引退

2000年9月26日、シドニーオリンピック決勝のオリンピック4連覇を賭けた試合で、ルーロン・ガードナーに敗れた。

カレリンは世界選手権9連覇を成し遂げた後、ロシア下院選に出馬。
圧倒的な支持を集め、当選した。
しかし、下院議員になったことが仇となり、トレーニングの時間が激減し、33歳の肉体は筋肉が落ち体力も失ってしまっていた。

オリンピック4連覇を賭けた2000年のシドニーオリンピック予選リーグ初戦では「カレリンズ・リフト」はすべて空振りに終わり、試合中に喘ぐように肩で息をし、何度も苦しそうな表情を見せていた。
かろうじて決勝に進んだカレリンだったが既に疲労困憊で『霊長類最強の男』の面影は既に無かった。

この敗北を最後にカレリンはレスリングを引退。
総合格闘技への転身が噂されたが、これも否定し『霊長類最強の男』は静かにマットを下りた。

その圧倒的な戦闘力で日本でも多くの影響を与えたカレリン

本名:大塚 崇(おおつか たかし)
アレクサンダーの名は、大塚が尊敬するアレクサンダー・カレリンに因む。
早くからプロレスと総合格闘技を股にかけて活躍。
PRIDE初参戦で 強豪マルコ・ファス を破り、一躍スターダムにその後も、ヘンゾ・グレイシーや ヴァンダレイ・シウバらと死闘を展開し、 桜庭和志と並んでプロレスラーの強さを世間に見せつけ た。

カレリンにあやかり「アレクサンダー」をリングネームにしたアレクサンダー大塚

女子レスリングのフリースタイル53kg級で、オリンピック3連覇中(アテネ・北京・ロンドン)、世界選手権13連覇中、アジア大会4連覇中、全日本選手権12連覇中、個人戦200連勝中。2012年には国民栄誉賞を受賞。
吉田沙保里がカレリンが持っていた世界大会12連続連覇を超える13大会連覇を記録してからは「霊長類最強の女」「女カレリン」と呼ばれている。
カレリンは「彼女には素晴らしい技術とタックル、それに経験がある」と吉田を称賛している。

「霊長類最強の女」「女カレリン」などの異名を誇る吉田沙保里

漫画『グラップラー刃牙』にも登場するカレリン

板垣恵介の漫画『グラップラー刃牙』にカレリンをモデルにしたキャラクター『アレクサンダー・ガーレン』が描かれている。

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