コラージュ作品
日本のヒップホップシーンを牽引し続け、2025年にデビュー35周年という大きな節目を迎えたスチャダラパー。その中心人物であるMCのANIが、音楽の枠を飛び出し、アーティストとしての新たな一面を披露する。2026年2月13日(金)より、東京・原宿の「tHE GALLERY HARAJUKU」にて、自身初となるコラージュ作品の個展「スチャダラパー・ANI展」が開催される。
本展をキュレートするのは、ANIと30年以上の親交を持つ編集者・クリエイティブディレクターの米原康正氏。「ゼロイチの始まりの場所」をコンセプトに掲げる同ギャラリーで、ANIが密かに、しかし情熱的に積み重ねてきた表現の断片が、ついに白日の下にさらされる。
歌詞の「行き詰まり」から生まれた、もうひとつのサンプリング
今回の展示に至る背景には、ANIが長年拠点としてきた目黒通りの作業部屋での、ある「日常」があった。
かつては夜通し音を出せたスタジオも、時代の移ろいとともに昼間の作業へとスタイルを変えた。テクノロジーの進化でメンバーが集まらずとも楽曲制作が可能になった今でも、ANIは歌詞を書くためにその部屋へ向かう。しかし、創作は常に順調なわけではない。歌詞に行き詰まった時、彼の指先が動いたのはペンではなく、ハサミとカッターだった。
部屋に散乱する雑誌、ポストに届くチラシ。それらを切り抜き、ノートや余っているレコードジャケットに貼り付ける。「アイデアを待つ間」の気晴らしであったはずのコラージュ作業が、次第にそれ自体が目的となるほど熱を帯びていった。
ANIはステートメントの中で、「自分たちが作る曲はサンプリング主体なので、ネタを探して組み合わせて加工してという過程が、やってるコラージュとあまり変わらない」と語る。既存の素材を切り取り、文脈を組み替え、全く別の価値を生み出す。それはまさに、スチャダラパーが35年にわたって体現してきた表現手法の視覚化とも言えるだろう。
昭和特撮とK-POPが交差する、唯一無二の脳内世界
展示される作品群には、ANIが持つ特異な好奇心が色濃く反映されている。昭和の特撮ヒーロー、特に「改造人間」というどこか哀愁と異形さを湛えた要素。そこに、現代の華やかなK-POPガールズグループのビジュアルが混ざり合う。
一見すると相容れないこれら二つの要素が、ANIの感覚によってリミックスされた時、どのような化学反応を起こすのか。本人ですら「自分でもよくわからない欲求に突き動かされて作っていた」と吐露するその作品群は、商業的な狙いや他者の評価から最も遠い場所にある、「純粋な創作」の面白さを突きつけてくる。
キュレーター米原康正が見た、ANIの「変わらなさ」
キュレーターの米原氏は、ANIの制作スタイルを「ミュージシャンの余技ではない」と断言する。
「サマージャム95」のリリース前から続く二人の付き合い。米原氏は、当時の彼らが誰に見せるためでもなく「趣味のもの」を持ち寄って遊んでいた空気感を、ANIがいまもなお持ち続けていることに驚きと敬意を表している。流行が移ろい、立場が変わっても、30年以上ほぼ同じテンションで、誰に頼まれるでもなく一人で作り続ける才能。その「初期衝動」の持続こそが、表現者・ANIの本質なのかもしれない。
開催概要とメッセージ
会場となる「tHE GALLERY HARAJUKU」は、アーティストのファーストステップを支援する場所だ。フォロワー数や経歴ではなく、キュレーターの心が動くかどうかを基準に選ばれるこの場所で、ANIの「趣味の延長線」が展示されることには大きな意味がある。
会期は2月13日(金)から2月22日(日)まで。初日にはオープニングレセプションも開催される。音楽という「聴く」表現で時代を作ってきたANIが、紙とノリという極めてアナログな手法で提示する「視覚的サンプリング」。その稀有な才能の断片を、ぜひ原宿の地で目撃してほしい。
tHE GALLERY HARAJUKU
■ANI SOLO EXHIBITION " スチャダラパー・ANI展 "
会期: 2026年2月13日(金)〜2月22日(日)
場所: tHE GALLERY HARAJUKU(東京都渋谷区神宮前3-20-21 ベルウッド原宿1階-C)
時間: 11:00〜19:00(月・火休廊)
オープニングレセプション: 2月13日(金) 18:00〜20:00