西川のりお    超尖った若手時代。怒りと嫉妬を糧にパワフルに走り続けるお笑い暴走機関車。

西川のりお 超尖った若手時代。怒りと嫉妬を糧にパワフルに走り続けるお笑い暴走機関車。

いくら時代が変わろうと「安心してみられる」なんて、西川のりおにとってはホメ言葉でも何でもない。言語同断の暴走! 気骨ある叫び! ! 針が振り切れる危なっかしさ!!!


「ヤングOh!Oh!」が大人気で放送されている最中、空前の漫才ブームが勃発した。
まず日曜日の21時に放送されていた関西テレビ「花王名人劇場」で「おかしなおかしな漫才同窓会」というコーナーができ、新旧の漫才師が競演。
すると13~16%という異例の高視聴率となり、気をよくした「花王名人劇場」は、「激突!漫才新幹線」で、横山やすし・西川やすし、星セント・ルイス、B&Bという関東と関西の人気漫才師を競演させ、18%超え。
これをみて各局も新しいバラエティー番組を製作し始め、どのチャンネルでも漫才がみられるようになり、フジテレビで「THE MANZAI」が始まると一気にブームとなった。
フジテレビの横澤彪プロデューサー、佐藤義和ディレクターらがつくる「THE MANZAI」は数組が漫才をするというシンプルな内容ながら革新的だった。
フジテレビ第10スタジオに豪華なセットを組み、若い客を入れ、漫才の前にはショートPRムービーが流れ、登場時の出囃子はフランク・シナトラの「When You're Smiling(君微笑めば)」
出演者はベテランではなく若手が中心。
出演順は抽選で決め、楽屋には緊張感が漂い、舞台では真剣勝負が行われた。
ブームを牽引したのは、関東では、星セント・ルイス、ツービート、B&B、関西では、横山やすし・きよし、中田カウス・ボタン、西川のりお・上方よしお、ザ・ぼんち、太平サブロー・シロー、オール阪神・巨人、島田紳助・松本竜介など。
特にザ・ぼんちの人気はすさまじく、夏休みになるといつもは客の年齢層が高めの花月に若者が押し寄せ、ザ・ぼんちが登場すると多数のクラッカーが鳴らして、紙テープが投げた。
そして2人の出番が終わると一斉に席を立って出待ちに走った。
劇場は一気に客が減って、冷め、ザ・ぼんちの後に出演した芸人は苦笑い。
全芸人が、ザ・ぼんちの後に舞台に立つのをイヤがった。

それまでいまひとつ波に乗れてなかった西川のりお・上方よしおにとって、漫才ブームは大きな転機となった。
西川のりおは、相方をドツいたり、首を絞めたりする「暴走キャラ」、ガラガラ声で「ホーホケキョ」、腰を前後に動かして「ツクツクボーシッ、ツクツクボーシッ」、時代劇「旗本退屈男」をモチーフにした「天下御免の向こう傷、拙者、早乙女主水之介」などギャグでブレイクした。
「僕らは漫才ブームで爆売れしてるときも女の子にキャーキャーはいわれなかった。
ザ・ぼんちとかB&Bとかはいわれてましたけど。
そのときも僕はヒールにみられたかったんです。
のりおはなんちゅうやっちゃと思われてても、そやけど俺は最後まで残ったるぞという気持ちでやってましたから。
マラソンでいうたらね、トップ集団の3着か4着にずっとおる奴。
やらしいやっちゃ、こいつまだへばりついとるわといわれる、そういう奴になりたいんですわ」

ツービート、若土あきら、オール阪神・巨人、チャンバラトリオらと一緒に山口県、小倉の結婚式場「平安閣」のオープンイベントへ。
ブライダルフェアということでたくさんの若い女性がウエディングドレスを着ていて、彼女たちに話しかけて笑わせ、その後、舞台で漫才を行うのが仕事だった。
その内容に
「悪くないね」
と思った西川のりおは、手八丁口八丁で笑わせた。
そして仕事後、女の子たちと待ち合わせをし、数人の芸人と飲みに行った。
もはや独壇場となった西川のりおは、みんなを笑わすだけ笑わせ、飲めや歌えの大騒ぎ。
(これはひょっとすると・・・)
と手応えを感じていたが、目当てにしていた女性の彼氏が現れ、
(彼氏いるなら先にいえ!)
彼氏に
「俺、今日、客席にいたんですよ」
といわれ、
(知るか!)
さらにステージの様子を説明する彼氏に
「そしたらコイツがね」
とコイツ呼ばわりされてもつくり笑い。
結局、3万円のギャラは飲み代に消えた。

「他の奴らはうまいことやってるんちゃうか」
と思いながらホテルに戻るとラウンジでビートきよしが女の子といて
「あんまりフラフラしたらダメだよ」
「お父さん、お母さん心配するよ」
と足を組みながら説教しつつ、
「ところで今日は泊まっていいの?」
と口説くのを目撃。
部屋に戻る途中、ビートたけしにバッタリ会って
「どないしたん?
飲みに行かへんかったんか?」
と聞くと
「当たりめえだよ。
行ったってしょうがねえじゃねえか。
でっ、お前らどうだった?
成果はあったの?」
「・・・・」
「ホラッ、その顔!!
ダメだったんだろ。
みんなそういう結果になるんだから。
アホだね、まったく。
オレはもう、ちゃんとスタンバイしてあんだよ。
そろそろ女が部屋に来るってわけ。
ナッ、違うだろ?
お前らと。
さあ部屋でゆっくりTVでも観て、1発やるか!」
意気揚々と部屋に戻っていくたけしに西川のりおは心の中で
(お前なんか死んでまえ)
しかし翌日、
「どやった?」
と聞くと
「シャレなんないよ。
2時半に女が来るっていうからさ。
タンスの中に隠れたり、ベッドの下にもぐったりしてさ・・・・」
「なんで?」
「だって驚かして・・・
笑いも必要だなっ思ったんだ。
どうしたら面白いか考えたわけよ。
気がついたら5時だもん。
まいっちゃうよ。
ホントッ、シャレなんないぜ」
「それでタレ(女性)が来たん?」
「来るわけないだろ。
オレは九州には2度と来ねえぞ」
西川のりおの憂さは一気に晴れ、グッスリ寝れた分、自分の勝ちだと思った。

以前、東京で1度だけ関係を持ち、その後、教えてもらった電話番号にかけたがつながらなかった女性と赤坂のホテルでバッタリ再会。
「偶然やないか。
どないしてたん?」
「私、今日、ここに泊まってるの」
「俺も泊まってるんや。
ちょっとよかったらコーヒーでも行けへん」
「でも人待たせてるから」
「アホいうな。
逃がさへんで」
「絶対逃げへんから。
ほら、キーもあるし」
西川のりおは、その部屋番号を記憶しつつ、
「男と泊まってるんやろ」
「そんなことない。
1人よ」
「それにしてもひどいやないか。
あれから何度も電話したんやで」
「ごめんなさい。
私も連絡しようと思ってたの」
「今日、俺の部屋来てくれる?」
「そんなに焦らなくていいでしょ」
「焦ってるわけやないけど、俺、久しぶりやからな」
しかし彼女はラウンジで人と待ち合わせがあるという。
「男やろ?」
「いえ、ちょっと仕事のお話があるの」
「何の話やねん」
粘る西川のりおに、ついに彼女は部屋に入ってキス。
「行かなくちゃいけないの。
行かせて。
12時半には必ず来るから」
「そんなんいうて、またダマそういうんちゃうやろな」
「どうしたの。
疑り深いわね。
最近、何かあった?」
「アホいえ。
まあエエワわ。
12時半に来てくれるんやな」
時間は23時。
西川のりおは、プロ野球ニュースをみてから風呂に入り、オーデコロンを体にふりかけた。
しかし24時半になっても女性は来ない。
「まあ、時間通りには来んわな」
25時になっても来ないのでフロントに電話すると
「お部屋に入っておられます」
といわれ、直接女性の部屋に電話したが誰も出ない。
「12時半やなくて2時半の聞き間違いかもしれへん」
と自分を勇気づけ、待った。
すると廊下を歩く音が聞こえたので、ドアまでいってのぞき穴に目を当てると向かいの部屋にアベックが入っていった。
それをみてガマンできなくなった西川のりおは、再び女性の部屋に電話。
すると
「もしもし」
といきなり男性が出て、かすかに女性のうめき声も聞こえた。
(してる最中や!)
西川のりおは、あわてて電話を切った。
その後、女性のうめき声が耳に残って寝れず、睡眠不足のため東京の仕事は空回り。
大阪に帰って、
「オレは、また女が信用でけへんようになった」
といって楽屋を笑わせたが、この話を坂田利夫に嫁にバラされ、誰も信用できなくなった。

西川のりおは、師匠である西川きよしの盟友で10歳上の坂田利夫と
「兄弟分で仲がいい」
という。
妹の結婚式でスピーチを頼まれた坂田利夫が、式のかなり前から
「ふつつかな妹ではありますが・・・・」
「至らぬ兄ではありますが・・・・」
と暇さえあれば練習していた。
西川のりおがリラックスしたほうがいいと思い
「そんなマジメにやらんでもエエやんか」
といっても、
「イヤイヤ、ピシッとせなアカンやろ。
妹に恥かかせたらかわいそや。
アッ、背広も新しくあつらえんと・・・」
と決して緊張を崩さない。
西川のりおは
(「アホの坂田」と呼ばれているが根はマジメ)
と思った。
そして当日、スピーチの順番が回ってきたとき、カチカチに緊張する坂田利夫をみて、西川のりおが
(舞台はあんなに長いのになんでアガるんやろ?)
と不思議に思っていると
「ふしだらな妹ですが・・・」
といって思い切り妹に恥をかかすのを目撃した。

後輩の結婚式で、花月で出番があった坂田利夫は、会場が近かったので途中で抜けて、
「舞台がありますので挨拶だけでもと顔出させてもらいました。
本日は誠におめでとうございました」
とだけいって颯爽と帰っていった。
西川のりおが
(そんなあわてて帰らんでも十分間に合うのにエエカッコして)
と思っていると、すぐに
「ドカーン」
とすごい音がした。
出口と厨房口を間違えて飛び込んでウエイターと激突し、顔からソバをダラリと垂らした坂田利夫が出てくると会場は大爆笑。
あまりの惨めさに、その後の出番を休んでしまった坂田利夫をみて、西川のりおは
(アホや)
と思った。

坂田利夫は、お通夜の前にも
「ええ、この度はどうもご愁傷様でした。
ええ、この度はどうもご愁傷様でした」
と何度も練習。
そして会場に着くと
「ええ、この度はどうも・・・」
とマジメにお悔やみをいおうとしたが、葬儀を仕切っていた芸人仲間に、
「そんなんいわんでエエがな。
坂田さんが来てくれて、おもろい話でもしてくれたら、それで故人も喜んでくれる。
ご飯食べてないやろう?
寿司でも食べ」
といわれ、
「ボク食べに来たん違います」
と断ったが、
「まあ、そういわずに」
とすすめられ、結局、寿司を食べ、酒を飲んだ。
そして焼香をするために遺族の前に進んだ坂田利夫は、
「ええ、この度はどうもごちそうさまでした」
西川のりおが
(あんなに練習してたのに・・・)
と思っていると、さらに焼香の仕方がわからず、あわてて灰をぶちまけて遺族の喪服を真っ白にしてしまい、
(アホや)
と思った。

漫才がブームになると落語家は仕事が激減。
関西のトップを走っていた明石家さんまですら追い越された感があった。
しかしさんまは、魔術師のようなトークで漫才師と絡み、イジり、仕切ってお笑い界の好位置をキープ。
島田紳助は
「漫才ブームが来て、やった、これでアイツを引き離せると思うて。
ブームが終われば絶対にさんまの方が有利になるから、2馬身はリードせなアカンかったのにアイツはくっついて来よって。
関係ないくせに・・・」
とその適応力に驚き、西川のりおは、
「ずーっとさんまがおるなあ、なんでや?」
と周囲に漏らし
「いや、あんだけのメンバー仕切ろうと思ったらさんまさんくらいしかアカンのとちゃいます」
とナダめられると
「なんで俺やったらアカンねん」
と嫉妬心ムキ出しでヒガんだ。
こうして売れない時代を経て「ヤングOh!Oh!」と「漫才ブーム」で全国区へ進出した西川のりおは、この後、アニメ「じゃりン子チエ」のテツ、「俺たちひょうきん族」、深夜ラジオ「ヤングタウン」のパーソナリティと独特のキャラクターで、ますますブレイクしていった。

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