猿岩石のヒッチハイク旅   アジアの西端、トルコへ。日本アカデミー賞女優、室井滋参戦。

猿岩石のヒッチハイク旅 アジアの西端、トルコへ。日本アカデミー賞女優、室井滋参戦。

アジアは、香港、中国、ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマー、インド、ネパール、パキスタン、イラン、トルコ。ヨーロッパは、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリア、ドイツ、フランス、そしてゴールの大英帝国、イギリスまで。野宿、絶食が当たり前の「香港-ロンドン ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」旅。


そしてやむなく乗ったタクシーでアンカラ市内の安いホテル街があるウルス地区へ。
それらしき場所に着くと
「ここ?
ヒア?
早く、早くメーター切ってちょうだい。
メーター切ってちょうだい!」
カットメーター、プリーズ!」
とドライバーを急かせた。
それでもタクシー代で2,000円を使い、残りは3,000円。
「すごくいかがわしそうだな」
といいつつ怪しげなホテル街をとにかく安いホテルを探して歩いた。
「ハーイ、エクスキューズ・ミー。
ワンナイト・ハウマッチ」
といって入った1軒目のホテルでは、1泊70万トルコリラ(900円)といわれ
(安い!)
と思ったが
「また後で、レイター。
ジャスト・モーメント、ちょっと待ってて」
といって出て、もっと安いホテル探し。
3軒目で
「もうちょっとチープ」
と交渉の末、40万トルコリラ(520円)にしてもらった。
それを支払うと所持金は2500円になり、部屋まで荷物を運んでくれた若いホテル従業員に
「ボク、お金ないからさ、ボク、ガムあげるよ」
といってチップとしてガムを1枚あげた。
部屋に荷物を置くとホテル周辺を捜索。
猿岩石の顔写真とトルコ語のメッセージ入りボードを首に下げて
「知らない?」
「知ってます?」
と聞いて回ったが収穫はゼロ。
「こりゃ大変だよね、捜すのね。
まいったなー」
とミッションの大変さを痛感。
「あ~疲れた。
明日に備えようと」
といって寝た。

118日目、8月8日、地中海で一晩を過ごした猿岩石は
「ついでにエーゲ海も・・・」
と目的地をエーゲ海に面したリゾート地、ボドルムに設定。
「BODRUM」
と書いた紙を掲げ、ヒッチハイク開始すると2時間後、小型のジープが停まってくれた。
「ノー・マネー、OK?
ヒッチハイク」
『お金なんかいらないよ』
気のいい運転手は、そういってドアを開けてくれた。
「気持ちいいなあ、これ」
2人はホロをかぶった後部座席に座って、窓から入ってくる風を感じながら、5時間後、ボドルムに到着。
エーゲ海でも有数のリゾート地に到着したとき、すでにあたりは夕暮れ。
海の近くで降ろしてもらった2人は、お礼をいった後、空手着を脱いで寝床探しを開始し、結局、堤防で野宿。

一方、追跡2日目の室井は、アンカラ市内の猿岩石が野宿していそうな公園「CEMRE PARKL」を捜索することにした。
さわやかな朝、腹を空かして歩いていると目に入ってきたのはパン屋。
「うまそー。
コレ、うまそう。」
といって20万トルコリラでクロワッサンを購入。
さらにカバンからタバコ1箱取り出し、ジュースを指さし
「あのさあ。
ジャパニーズ、タバコ。
チェンジ、チェンジ」
と交渉し、物々交換に成功。
40円+タバコを支払い、道端で立ったまま、トルコで初めての食事をとった。
そして
「ドー・ユー・ノゥ?」
と歩きながら情報収集するも手がかりなし。
途中、警官に出会い、CEMRE PARKLにいく道を聞いた。
警官が
『チョウザ、チョウザ(すごく遠い)』
というで、室井は
「これに乗せていって欲しいんだけど・・」
とパトカーに乗せてくれと頼んだ。
『タクシーに乗りな』
「ノーマネー」
『ここを真っ直ぐいって、右に曲がって、そのままいって』
パトカー乗車を拒否し、改めて道順を説明する警官に、室井は『ありがとう』というタイミングで
「ケチ!」
と日本語でいって去った。

ホテルから8km、2時間歩いて公園に到着すると、早速、聞き込み&捜索を開始。
「ドー・ユー・ノゥ?」
しかし手がかりは得られず
「いないよなー」
公園からの帰り道、
「だけどさあ、インターネットでさー、
アンカラに来てるかどうか、ちょっと捜した方がいいんじゃないかな、まずは。
インターネットの店、インターネットカフェとかあるのかな?」
とインターネットができるパソコンショップや日本企業などを探すことに。
「Is there パソコンショップ Here?」
通りすがりのいかにも知っていそうな人に聞いて回ったが、なかなか情報は得られない。
そこで交番へいった。
『ショッピングセンターだったらあるよね。
タクシーでいけるよ』
「ノー、ノー」
『歩いて?」
「イエス」
『歩いては行けない。
すごく遠い』

12km、4時間歩いて、ヘトヘトになりながらショッピングセンターに到着。
そしてやっとパソコンショップを発見。
室井は、
「ハロー。
ルッキング・フォア・マイフレンド。
プリーズ・インターネット・サービス」
といって
「友達を捜してるんですが、インターネットサービスをみせて下さい」
と伝えようとし、女性店員もキチンと応対してくれるが伝わらない。
するとたまたま居合わせた女性客が
『May I Help You?』
といってくれた。
「ドー・ユー・ハブ・インターネットサービス?」
『Are you Japanese?』
「イエス、イエス」
室井がいうと女性客は
『それでは日本語で』
と日本語でしゃべった。
室井は大喜びで
「ありがとう。
地獄に仏。
知ってます?
ジゴクにホトケ」
女性客がインターネットの接続ができないか聞くと、女性店員は、
『ここでは無理です』
すると女性客は、店の電話を借りてホテルにいる夫に電話。
『日本の女の人が困ってるんだけど、そっちに連れてっていい?』
ご主人の返事はOK。
『ホテルで待ってます』
「あっいいんですか?」
『はい』
「ホテルに行って?」
『はい』
「一緒に行ってもいいんですか?」
『はい』
「ありがとう、すいませんね。
申し訳ないです。
イヤ、うれしい。
なんていい人なんだろう。
よかったー。
この人に会えなかったら」
そういって口を押さえる室井は涙目だった。

女性客の夫は日本人。
くさび形文字の研究者で、学会のためトルコのホテルに滞在していた。
そのホテルに移動後、その優しいご主人とご対面した室井は、猿岩石追跡アイテムの1つ、電波少年のホームページアドレス「 http://www.ntv.co.jp」と接続方法を書いてあるたメモを渡した
「これでどこにいるのかを知りたいんですけども・・」
『はい、ちょっと待ってください』
ご主人は自分のノートパソコンで準備を始めた。
すると横から奥さんが
『何か飲みますか?』
「いいんですか?」
幸せすぎて涙と笑いが止まらない室井。
「うれしい。
何でもいいです。
お水でも何でも」
そして冷蔵庫からダイエットコーラを出されると
「いいんですか、コーラなんて!」
と350ml缶を半分ほど一気飲み。
「うぁーッ、おいしい」
するとインターネットの接続が完了。
猿岩石の近況をチェックすると
「2人の現在いる場所・・・
トルコ。
アンカラからアンタルヤへ移動中だって。
アンカラにいないよ!」

「あと2000円くらいしかないのに・・・」
嘆く室井に、親切なご夫婦は、長距離トラックに乗ることをアドバイス。
そしてメモに
「アンタルヤに行きたい」
「お金がない」
とトルコ語で書いてくれた。
室井はトラックターミナルへ向かい
「アンタルヤに行きたいんだけど。
お願い」
といってメモを見せた。
そして男性の先導で連れていってもらったのはバス乗り場
「バスじゃなくてさあ、車に乗せてもらいたいんだよ、オジチャン」
アンタルヤ行きのバスの料金は2,000円もするために当然却下。
「サンキュー、サンキュー」
といって案内してくれた男性と別れた室井は、メゲずにトラックを当たっていく。
そして2人の男が乗るトラックで
『この娘、お金ないんだって』
『かわいそうだから乗せてやるか』
『ちょっとくらい、お金出せよ』
といわれ、タバコを出したが、ついでにお札も1枚持っていかれてしまった。
そしてトラックの荷台には先客がいた。
「何だ、これと一緒かよ」
と笑う室井は、3匹のヤギと一緒にアンカラを出発した。

アンカラから南西に400km、アンタルヤまで揺れる荷台の上で長旅が始まった。
室井は、荷台前方にいるヤギに対し、真ん中に荷物を置いてバリケードをつくり、最後部に座った。
そしてまず帽子と頭の間にタオルを挟んで、日焼け対策。
するとヤギがオシッコしだし
「あっ、オシッコだ。
ガマンしてー」
と頼んだが止めてくれなかった。
トラックに揺られ少し落ち着いてきた室井は、ハーモニカを取り出して、「上を向いて歩こう」を吹き出した。
すると雲行きが怪しくなり、大粒の雨とヒョウが降ってきて、とても上を向けない状態に。
「アイタタタタ」
室井はビニールのカッパをかぶったが
「サブー」
「イテー」
を連発。
あまりの寒さに羊も鼻水をタラしていた。
とにかく耐えていると、やがて天候は回復。
室井はカッパをかぶったまま荷物を枕にして寝た。
アンカラを出て4時間、日が傾き始めた頃、車がスローダウン。
「どうした?」
寝ていた室井が起き上がると車は道路の端で停車していた。
「エンストか?」
心配しているとなんとか発進。
しかし明らかにエンジン音がおかしい。
「ダメダメ、黒煙はいてる。
おかしい。
ダメダメ、ストップ」
室井は運転席に呼びかけたが、運転手はアクセルを踏み続け、数十m、低速走行した後、ついにエンジンが動かなくなった。
「ああ、どうしてこうなるかな」
男たちは運転席から降りて修理を試みたが直らず、室井と同行スタッフに
『アンタたち、他の車探してくれないか?』
『悪いな、許してくれ』
といった。

室井は、荷物を降ろし、ここまで乗せてもらったお礼を告げ、新たなヒッチハイクの準備。
5千円と一緒にのし袋に入っていた紙を取り出し
「上げ底で紙が入ってたんだよ。
ほら、こんなデッカい紙。
やったじゃん。
これに書けばいい」
といって口紅でメッセージを書いていると、1台の車が停まり、男性が降りてきた。
『こんにちは。
どうしたの?』
地面で書いていた室井は男性を見上げながら
「アンタルヤ!」
といってメモを渡した。
『アンタルヤ?』
「イエス」
『この通りを向こうへ行くんだよ』
「あっちでしょ」
わかっていることを教えてくれる男性に室井は
「ちょっとみせて」
といってメモを取り返し、下を向いて作業を再開。
日本語で
「おっちゃん、乗せてくれないんだったら話しかけんなよ」
と毒づいた。
男性は
『手伝ってあげるよ』
といって室井から紙と口紅をとって、自分の車のボンネットでメッセージを書いた。
そして書き終わると
『チャイ』
「チャイ?」
『ティー』
とお茶に誘ってくれた。
「いいの?
どうしてそんなに優しいの」
室井は車に乗った。

男性は運転しながら
『もう日が沈んで危ないから泊まった方がいいよ』
といって、ある家の前に停車。
出てきた男性に
『この娘が困ってるんだ。
この人たちを泊めてあげてくれないか』
頼まれた男性は
『じゃあ、ちょっとついてきて』
といった。
男性が運転する車に先導され、トルコ語がまったくわからず、わけがわからない室井は
「どういうことなのかな?」
車はアンタルヤの手前150kmの村、アフィヨンに到着。
『ここで降りて』
といわれ、外をみると外で数人の男が握手している。
不安を覚えながらも室井は
「ハロー」
と笑顔で降車。
男たちに案内されて
「どうなってんのかなあ。
わかんない」
と泣きそうな顔でついていった。

そして一軒の家に到着。
「ここに泊めてもらえるのかな」
といいながら入っていくと庭で
『いらっしゃい』
と、この家のお母さんに出迎えられて握手。
口紅でメッセージを書いてくれた男性は、室井から大きな荷物を取って
『さあ、あの部屋へ』
といった。
室井は通された部屋でカッパを脱いだ。
どうやら泊めてもらえる様子。
「すみません、本当に」
と正座して頭を下げる室井をお母さんはハグをして両頬にキス。
「はずかしい、はずかしい」
テレる室井に手を握りながら
『友達、友達』
といった。
室井は、夕食まで村を散歩。
子供たちが集まってきたのでハーモニカで「上を向いて歩こう」を披露。
自分で笑ってしまうほど何度も音を外したが、子供たちは盛り上がってくれた。
「なんかテレちゃうな」
日が暮れると美味しい夕食をごちそうになった上、お母さんから女性が頭を覆う布「ヒジャブ」をプレゼントされ、室井は感謝しきりだった。
「こんな親切なの、すごいね」

119日目、8月9日、猿岩石はボドルムの堤防で起床したが、無一文なので食べ物も飲み物も買えない。
そこで船の清掃など1日だけのアルバイトを探すことにした。
「サムシング・ジョブ」
「アイ・ワント・トゥ・ワーク」
「ジョブ!」
停泊中の船の人に笑顔で話しかけていき、断られ続けた。
9隻目、
「ワン・ディ・ワーク」
『1日だけ?』
「イエス、アイ・ホープ・メイク・マネー」
『お金が欲しいんだ』
「イエス」
『いいよ』
船長らしく人物は船に乗るように促した。
その船は、海水浴客を乗せて食事付きクルージングを行う観光船。
2人は厨房の手伝いを命じられ
「残りモンが食える」
とほくそ笑んだ。
午前10時、優雅な客たちを乗せ、船が出港。
厨房ではランチづくりが開始し、2人はシェフの指示に従って調理補助を行った。
船は30分ほどで目的地到着。
離島の近くに停泊した船から、ある客はエメラルドグリーンの海に飛び込み、あり客は甲板ベンチで日光浴。
2人は、それを横目にみながら
「いいな、リゾートで来てる人は」
(有吉)
「俺達、仕事」
(森脇)
12時、食堂は満員になって、厨房から完成したランチがドンドン搬出。
すべての料理を出し終えると、シェフにまかないをつくってもらい、久々にまともな食事。
その後、戻ってきた食器を洗った。
17時、帰港。
すると船はすぐにナイトクルージングの準備に入り、厨房の2人もディナーの準備に追われた。
ナイトクルージングの客は、美しい夜景を楽しんだ後、22時に帰港。
2人は厨房の清掃をして、24時に1日の仕事が完了。
1人、100万トルコリラ(1300円)の日当をもらい、Iヵ月ぶりに無一文でなくなった2人は、そのまま船の甲板で泊まらせてもらった。

一方、追跡3日目の室井は、お母さんと家族に別れを告げ、昨日、村に案内してくれた男性にアンタルヤまで乗せていってもらうことになった。
後部座席の窓をハンカチで覆って日焼け対策を施してから眠った室井は、アフィヨンから150km、アンタルヤに到着すると
「サンキューサンキュー。
気をつけて帰ってね。
ンッ」
と笑顔で男性の頬にお礼のキス。
そして自分も頬にキスをされ
「ヒゲ、痛かったね」
そしてアンタルヤでメッセージボードを首にぶら下げて
「知らない、これ」
と聞き込み開始。
途中で男性に
『英語話せますか?
この通りを100m行くと日本人とトルコ人の家族が住んでるよ』
といわれ、 
「私、お金ないの」
といったが強引な男性についていくことに。
着いたのは日本語観光相談所「MiHRi」
案内係をしていた日本人女性に
『マリーナの方は行かれました?
あの辺りに行くとたくさん人がいるので多分、目撃者がいると思います」
といわれ、2km歩いてマリーナの捜索を開始。

しかしそこはトルコでも指折りのリゾート地。
遙か彼方までビーチが続き、1人で捜すにはあまりに広い。
「どうしようかな」
「困ったなあ」
「あー、お腹減ったなー」
「苦しいー」
といいながら3時間捜索した後、吸い込まれるようにレストランへ。
そしてここまでの我慢の反動か、
ピラフ、スパゲティ、クラブスープ、サラダ、
「時価だから怖い」
と思いつつシュリンプ、ピザ、ビールとバンバン注文。
まずはビールを喉に流し込み、、
「ぅあーッ」
と幸せを味わう。
料理も
「おいしい! 」
と完食し、食後のコーヒーを追加注文。
夢中で飲み食いした結果、お会計は、200万トルコリラ。
「どうしてそんなに高いの?
あっエビ(シュリンプ)だよ!
あーショックだ」
残金は600円。
落ち込んで店を出てからも、
「食べなきゃよかった、あんなにいっぱい」
と後悔しながら、木陰で昼寝。
目が覚めると決心した。
「やっぱ働かなきゃダメだ、これ」

日本語観光相談所「MiHRi」に戻って、日本人女性にトルコ語で仕事探しのメッセージを書いてもらった。
そして室井が思いついた仕事は「トルコ風呂」だった。
かつて日本で「トルコ風呂」といえば、風俗業や風俗店を指していた。
正式名称「個室付特殊浴場」といい、本当はやってはいけないサービスを提供してくれる風俗店の俗称だったが、トルコ人から抗議を受けて「ソープランド」に改称し、石けん業界から抗議はなかったようで現在に至る。
しかし本来、トルコ風呂とは、トルコを含む中東やアジア諸国に広く見られる伝統的な公衆浴場のこと。
美的な外観と計算された熱効率、給排水の構造は、建築学の視点から高く評価されている。
基本的な構造は、半地下に建てられて窓はない。
入り口に番台があって、中に脱衣所と浴室があり、客は、腰布、サンダルだけで浴室に向かう。
浴室は、蒸し風呂で、汗を出しながら、あかすりやマッサージなどのサービスを受けることができる。
通常、男性客に対しては男性、女性客に対しては女性がサービスを行い、そのマッサージは手荒だが快適。
入浴を終えた客は、洗面台で体を流し、人によっては脱衣所で体を休めながら飲食やおしゃべりを楽しんだ後、入浴料とチップを支払って店に出る。

「ハロー。
エクスキューズ・ミー」
店先で室井がいうと
『ハロー』
と男性の大きな声が返ってきた。
「プリーズ、リード(読んで)」
室井は出てきた男性に書いてもらったメッセージを提示。
『男しか働けないんだ。
女はダメ』
男性専用トルコ風呂店のようで拒否されたが粘った。
マッサージするジェスチャーをしながら
「べリーうまい、すごく上手」
腕に力こぶをつくって
「力ある」
とアピール。
15分後、
『わかった』
といわれると、うれしさのあまり男性に抱きついて肩をたたいた。
男性は、この店の「親方」だった。
親方に連れられ更衣室へ移動。
黄色いヘアバンド、黄色いTシャツ、白い半パンという仕事着に着替えると、パンツ一丁になった親方と共に生まれて初めてトルコ風呂に入った。
中は蒸気だらけで
「オー」
『ハマム(トルコ風呂)』
「オー」
『オー』
親方と仲良くいい合った後、さらに奥の狭い部屋に入っていった。
そこにはベッドがあり、局部にタオルを置いただけの男性が寝ていた。
ここで仕事を覚えるためのレッスンがスタート。
狭い部屋の中、室井はパンツ一丁の親方の指示を受けながら、ほぼ全裸の男をマッサージ。
それは全身の韓国式アカスリのようなマッサージと洗体作業で思った以上の重労働だった。
にもかかわらず、なぜか順番待ちができて、入ってくる客を汗だくになりながら
「気持ちいい?
ナイス?」
と懸命にマッサージ。

7人洗った後、ようやく休憩となり、室井は店の外のベンチに座り、
「空いてたんだよ、最初。
ドンドン増えちゃって・・」
と不思議がった。
そこに親方が冷水のを持ってやってきて、コップについでもらい
「サンキュ、サンキュ」
といって飲んだ後、仕事再開。
マッサージ中、客のタオルがズレて性器が丸出しとなっても洗い続け、両手を合わせて客の体をパンパン叩いたり、濡れた布の袋に空気を入れて膨らませてこすったり、新技もどんどんマスター。
2回目の休憩に入り、外のベンチに座って涼んでいると、親方は大きなタオルでバサバサと扇いでくれた。
「そんなにしてくれなくたっていいんだよ」
それより手伝ってよ。
どうして私だけにすんだよ」
室井はうっとうしそうにいったが、異常な忙しさと親方の異常な優しさには理由があった。
親方は店の入り口に
「日本人女性によるマッサージサービス中」
と張り紙をしていたのである。
トルコ語で書かれた張り紙をみて、新たに客が入店するのをみて、室井は、
「5人入ってった。
また1人で洗うんでしょ」
と泣き笑い。
そして親方に
「トゥギャザー、トゥギャザー。
おっちゃん、サボるんだもん。
カモン、カモン」
と救援を頼んだがかなわず、結局、汗と泡にまみれながら5時間、22人の男を洗ってようやく終了。

「はー疲れた。
もしかしたら頭の血管切れてるかもしれない」
といってスタッフルームでたたずんでいると
『Hey』
と親方が夕食を持って登場。
「優しいじゃん!
ここで食べんの?」
『Yeah』
「サンキュー、優しいじゃん、パパ」
最初の一口を親方に食べさせてもらい、室井は
「おいしい!」
とグッドサイン。
食事の後、
『これは給料だ』
と100万トルコリラを渡され
「嬉しい」
と喜んでいると、さらに、
『お客さんがこんなに置いてった。
チップ!』
といって90万トルコリラを渡された。
「チップだよ。
濡れてるもん金が・・・
ありがとうサンキュー」
給料とチップ合わせて190万トルコリラをGETした室井は、毛布と枕を親方に用意してもらい、スタッフルームのベンチでお泊まりした。

120日目、8月10日、船に泊まらせてもらった猿岩石は、朝、船員に別れを告げて道路に移動。
「ISTANBUL(IS (イスタンブール)」
と書いた紙を掲げてヒッチハイク開始。
2時間後、赤いミニバスが停車。
運転手は
『ベルガマ(に行く)』
といった。
ボドルムにツアー客送った後、ベルガマに帰るところだという。
ベルガマはイスタンブールより、かなり手前だが2人は乗せてもらうことにした。
「サンキュー」
広々とした車内に乗り込んで改めてお礼をいうと、運転手は前をみたまま、腕を上げて親指を立てた。
5時間後、ボドルムから300㎞離れたベルガマに到着。
バスを降り、お礼をいって運転手と別れると、今夜の野宿ポイント探し。
「いいね、これ」
なかなかいい公園を発見し、腰を下ろすと、目の前にはレストランがあった。
お金を持っている2人は、たまらず入店。。
「うわあ、ハンバーグだ!」
有吉はそういった後、店員に向かって
「あの、ワン、ビア」
と追加注文。
森脇はすかさず
「なんでビール頼むんだよ」
とツッコんだ。
お会計は90万トルコリラ(1200円)。
残金は110万トルコリラ(1400円)となり、レストランの前の公園に戻って野宿。

一方、追跡4日目の室井は、トルコ風呂屋を出て、アンタルヤの広大なビーチで捜索再開。
メッセージボードを首にぶら下げて歩き回って
「この人たち知らない?」
と聞き込みをしているとビーチの店員に
『ビーチの放送を使えばいいよ。
こっちに来て』
といわれ、放送ステーションへつれていってもらった。
そしてまず男性スタッフがトルコ語で
『サル ガン セキ。         
2人の日本人を捜しています。
御存知の方はご連絡ください』
サル ガン セキ。
2人の日本人を捜しています。
御存知の方はご連絡ください』
とスピーカーで呼びかけ。
続いて室井が
「あのー、日本から来た室井滋です。
猿岩石の2人、今捜してます。
あのー、もしここにいたら、ここなんか、あのー、迷子の人が、あのー、来るところみたいで、ここに来て下さい。
猿岩石の2人、猿岩石の2人、よろしくお願いします。
サンキュー」
と恐らくアンタルヤビーチで初の日本語をスピーカーで響かせた。


放送後の反応を待ち、1時間後、
『見た人がいました』
猿岩石の目撃者が現れたという情報が入り、急行。
『3人だったよ。
リュックサックを背負って、1人はこんなビデオを持って。
3、4日前、あの岩場にいたよ』
目撃したという男性は数日前にみたというが、それでも室井は2人がいたという岩場へ向かった。
「この人たちをみませんでした?」
とそこにいた子供たちに聞き込み。
『あの岩場にいたよ』
『カニを食べていたよ』
『フジツボも食べてた』
『2日前ここにいたけど、今はいないよ』
という情報と岩場につくったカマの跡を発見。
「ここで何か食べてたんだ。
ショックだなー。
どこ行ったかなー。
この人達捜してるんだけど」
しかし子供たちは、そこから先は知らなかった。

室井は、猿岩石はもう街を出てしまったと考え、聞き込み場所を国道沿いに移した。
「エクスキューズ・ミー」
「ドー・ユー・ノゥー?」
聞いて回っていると、露店でビーチ用品を売っているお兄ちゃんが
『ボドルム!ボドルム!』
といった。
「ボードロンって何よ?」
『ボドルムに行ったよ』
「知ってるの?」
『3人いて1人カメラ持ってた。
この通りを向こうへ行ったよ』
「どこ?どこ?」
『自動車!
自動車!』
「とにかくボートラムってとこに向かったんだ」
室井はへたり込んだ。
そして再度、日本語観光相談所「MiHRi」へ戻って、ボドルム行きのヒッチハイク用のメッセージを書いてもらった。
さらに書いてくれた案内係の日本女性から
「ボドルムに日本人でペンションやってる方がいるから、もしアレだったら訪ねてみてください。
エミコさんて方なんで、ペンションの名前はエミコペンション」
と頼れる情報もGET。
そしてヒッチハイクスタート。
1台のトラックが停まってくれたので、あわててかけよると
『この車はボドルムへは行かない』
といわれ、手ではありがとうとジェスチャーしつつ、日本語で運転手に
「行かないんだったら停まんなよ」
と毒づいた。

気を取り直して再開すると、50分後、トラックが自分のほうに向かって路肩に入って来たので、荷物を持ってよけた。
「なんだよ。
こうやって入ってこなくてもいいじゃんかよー」
再び日本語で毒づきながら運転席へ向かった。
すると右側の助手席に子供がいるだけ。
「あっ、父ちゃんどっかいっちゃった」
室井がいった次の瞬間、左側の運転席から下りて回ってきたドライバーが、
『ボドルム?』
「ボドルム、ボドルム」
するとドライバーは荷台を開けてくれた。
「オー、 サンキュー、サンキュー!
うれしい。
オー、イスつき、イスつき」
トラックは引っ越しを終えてボドルムへ帰るところで荷台にはソファーとクッションがあった。
走り出してしばらくすると雨が落ちてきたが、旅でたくましくなった室井は
「ちょっと待てばすぐやむよ」
とヘッチャラ。
しかし空腹は別。
「腹へったなー」
といいながら寝ていたが、トラックが市場にさしかかると飛び起き、
「マーケットだぁー」
と叫んだ。
むなしく通過するトラックの上で
「あーうまそうだー」
「あーいいニオイ。
あー焼いてるよ。
トウモロコシ焼いてる。
トウモロコシ食おうよ。
トウモロコシ食わねぇ?」
と恨めしそうにいい、最後に
「腹へったー」
といって力尽きた。

空腹に耐えながら6時間、エーゲ海に面した街 、ボドルムに到着。
時間は深夜0時を回っていたが、街はにぎやかで、
「ドー・ユー・ノウ、エミコペンション?」
と聞きながら日本人のペンションを探す。
「エミコペンション あった!」
そしてオーナーのエミコさんに荷物を置かせてもらい、今度は猿岩石を探して深夜の街へ。
繁華街は若者であふれていたが、なかなか手がかりを得られない。
しかし
『マリーナでみたよ』
という男性を出会うと室井は思わずダッシュ。
しかしマリーナはどこかわからない。
「マリーナ、オーバー・ゼア?」
と人に聞きながら、なんとかマリーナに到着。
猿岩石を探して歩いていると
『Hey』
と首から下げたメッセージボードをみた男性に呼び止められた。
『昨日この辺にいたよ』
「マイフレンド、いた?」
『ここに来たよ。
昨日来た、昨日。
このボートに』
「昨日?」
2人は、船で働いていたらしい。
「長くいたの?」
『一晩ボートで寝て、朝になって出て行ったよ』
「行っちゃったかー」
室井は、肩を落としてエミコペンションに戻った。

121日目、8月11日、ベルガマの猿岩石は、
「ISTANBUL(IS (イスタンブール)」
と書いた紙を掲げてヒッチハイク開始。
1時間後、小型トラックが停まってくれた。
「ウイ・アー・ノ・マネー、OK?」
というと運転手は、乗ってこいとジェスチャー。
2人が車の行き先を確認するとイスタンブールの手前にあるヤロバに行くという。
ベルガマの市場でスイカを運んだ帰りで、荷台にはスイカが数個転がっていた。
「このスイカ、もしかしたら・・・」
淡い期待を抱きながら荷台に揺られて3時間後、運転手に
『食事休憩をとるか?』
と聞かれ
「Yes」
と答え、レストランへ。
しかし運転手は席に座らず、ドウゾ、スワッテというジェスチャー。
「あっ、この人、お金がないんだ」
と気づいた2人は、ドウゾドウゾと席に座ってもらい、食事が運ばれてくるとドウゾドウゾと勧めた。
こうしてこの旅で初めて、オゴられるのではなくオゴり、会計は110万トルコリラ(1400円)で、残金0。
無一文になったが
「オゴると気持ちいいね」
と笑い、余ったパンを紙で包んでテイクアウトし
「救援物資があるから何とかなる」
ベルガマを出て6時間、トラックは300㎞走って、マルワラ海に面する街、ヤロバに到着した。
『この湾の向こう岸がイスタンブールだ』
別れ際、運転手に教えてもらい、お礼をいった後、本日の野宿ポイント探し。
近くの公園のベンチで寝ることにしたが
「ムチャクチャ寒いね」
と遊具の中に移動。
翌朝、少し寝坊して起きると自分たちが寝ている遊具で子供たちが遊んでいた。
港に移動し、イスタンブールに行き、かつタダで乗せてくれる船を探したが、断られ続けた。
マルワラ湾の向こうには、救援物資が届くイスタンブールがみえていた。

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