西川のりお  それは高3の夏休み、同級生からの1本の電話で始まった。

西川のりお それは高3の夏休み、同級生からの1本の電話で始まった。

西川のりおの師匠は、なんと西川きよし。超マジメで超厳しいが一生ついていきたいきよし師と超メチャクチャで超面白い、でもついていけないやすし師。強烈な師匠に挟まれ、育まれた過激な弟子時代。


高校に入り、異性の肉体への興味と欲求が高まった西川のりおは、、エロ本を読み漁った。
入学してしばらくした頃、授業が終わって昼休みになり、校内食堂に行こうと立ち上がった瞬間、
「北村おるか、北村」
とかなりスゴんだ声が教室に響き渡り、振り返るのは怖かったので、とりあえず着席した。
後ろから近づいてくる気配がして
「お前、北村やろ」
ガラの声でいわれ、みてみるとガラの悪そうな男がいた。
「ハイッ」
裏返った声で答えると
「呼ばれたらすぐ返事せんかい。
応援団入ったのはわかってんねんやろ」
「僕そんなん入ってませんけど・・・」
相手が勘違いしていると思い答えたが
「入っとるやないか。
ちゃんとここに書いてあるやないか。
みてみい」
といって出された用紙をみてみると自分の名前が書いてあった。
慌てて思い出すと、入学式のとき、
『これからの学校生活について』
というアンケートに答えて、名前を書かされたことがあった。
(アレか!)
と思いつつ、
「名前を書いたときはアンケートだといわれ、応援団とは一切言われなかったのですが・・・」
と抗弁。
しかし
「もう入ったことになってんねん。
ごちゃごちゃいわんと早う屋上に上がらんかい」
といわれ、半ば強制的に屋上へ連れていかれた。

そこには肩幅くらいのスタンスで立って、太鼓に合わせて
「押忍!、押忍!」
と手を広げ、肘を曲げずにピンと伸ばしたまま手を叩く練習をしていている人や、大股に四股を踏んで立ち、先輩から腹に突きを入れられる度に
「ごっつあんです」
といっている人がいた。
西川のりおは、なんで殴られて礼をいっているのか理解できなかったが、結局、応援団に入ることになった。
1年生のときはツラく大変だった。
しかし2年生になって自分の舞(演舞)」に合わせて1年生が手を叩くのはかなり気持ちがよかった。
いつも1時間目の授業が終わると、すぐに校内食堂にいってコロッケ2個入りのコロッケ定食60円を食べるのがお決まりだったが、ロングの学生服、ダボダボの太いズボン、先のとがったクツをはいて、ガニ股で歩いていくと、席がいっぱいでも目が合えば譲ってもらえた。
4時間目が終わり、昼休みになると他の生徒がビクビクしながらみる中、応援団の練習。
「それがたまらなく気持ちよく、カッコイイと思いながら、意識しまくって演舞していた」
夏は、甲子園出場を目指す野球部の応援があった。
「かっとばせ、かっとばせ」
とツメ襟の学ランを着ての応援は、地獄の暑さだった。
西川のりおは、活力を求め、スタンドを見渡したが家族以外の女性は見当たらず、さらに暑苦しくなった。
野球部が負けた翌日から夏休みとなるので
「不謹慎だが正直なところ、早く負けてくれ」
と思いながら、学ランの背中に塩を浮かせながら応援。
大阪地区予選4回戦で負け、スタンドに向かって
「ありがとうございました」
といって泣きじゃくる野球部に拍手を送ったが、目は笑っていた。
そして翌日から夏休みをエンジョイした。


学祭のときは、学校が解放されて女性もやってきたため、かなり意識しながら大講堂やグラウンドで演舞。
「カッコええなあとみられてる」
と思って、何人かに声をかけたが全滅。
「こんな硬派な男よりロングヘアーでナヨナヨした軟派なヤツの方がモテる」
と嘆いた。
イヤイヤ入った応援団だが後悔どころか、かなり良く、高校3年生になると
「団長になってやろう」
と思うほどになっていた。
まず人にみられるという快感を知ったこと。
そして発声練習で腹式呼吸ができるようになったことは、後の仕事に大いに役立った。
何より
「生まれて初めてケツを割らずに3年間全うした」
ということが大きく、そのために被ったダミ声は勲章だった。

高3の夏休み、他の高校に通う中学時代の同級生から電話があった。
その同級生は、田中といい、それほど仲が良かったわけではなかったが、やけに明るい声で
「久しぶりやなあ。
花月の招待券が2枚手に入ってん。
観に行かへん?」
と誘ってきた。
「花月て何やってるねん」
「漫才やろ。
落語やろ。
そうや、テレビで観てるやろ、新喜劇、吉本新喜劇や。
面白いから行こうや」
「そうかあ、ほな行こか」
西川のりおは、勢いに乗せられ応じたが、なぜ田中が自分を誘ってきたんか不思議だった。
「田中というやつは、ケンカは強くないが、ちょっとカッコウをつけて不良っぽい格好をしている男だった。
まさかこれが俺の人生と運命を変える出会いになるとは、このときは知る由もなかった。
同級生の1本の電話が」

当日、大阪環状線、天満駅で待ち合わせ。
一駅乗って大阪駅で降り、夏の暑い昼下がりにうめだ花月に向かった。
大きな看板にペンキで色とりどりに名前がいっぱい書かれてあり、
「大きい字で書いている人と小さい字で書かれてる人があるなあ」
というと
「大きい字は看板芸人で、小さい字は前座の人間やなあ」
と田中が得意顔で教えてくれたので
(コイツ、なんでそんなこと知ってんねん)
と訝しんだ。
「ほな行こうか」
前をいく田中について花月の入口へ。
「これで2人分ですね」
と敬語でチケットを渡した田中に
「あの券、なんの券やねん」
と遠慮気味にたずねると
「株主券や。
オカンが知り合いからもろてきよってん」
「株主券てなんや」
「吉本の株持ってたら何枚かもらえんねん」
ロビーを抜け、扉を開けて劇場の中へ。
「コマからみたらかなり小さい劇場で入り口の女の人も心なしかコマの女(ヒト)の方がキレイだった」
しかし中に入った途端、大きな笑い声が聞こえた。
そこにコマ劇場のような仰々しさはなく、カッコウをつけて気取っている客は1人もいなかった。
「今始まったとこみたいやなあ」
歩いていく田中の後をキョロキョロしながらついていくと、客数は400人か500人くらいで劇場の半分より少し多め。
客層は中年から年配のオバちゃんが大半だった。

田中は舞台上にに男性の若手漫才師がいるのに
「ここ空いてるから、早よ来い」
と大きな声でいい、西川のりおは多くの人の視線を浴びながら前進。
さらに
「何してんねん。
早よ」
と自分を呼ぶ田中の声が場内に響く中、最前列ど真ん中の席に座った。
舞台を見上げると若手漫才師のアゴがみえるほどの至近距離で、田中は
「トップや。
前座やな」
と説明。
西川のりおは、声を出さずにコクリとうなずいた。
「次はやすしきよしや。
これがオモロいねん。
今売り出し中や。
漫画トリオももう居てないから、次はこのコンビや」
パチパチと自分たちで手を叩きながら赤青のアロハに真っ白なラッパズボンをはいた2人の男が出てきて
「横山やすしです」
「西川きよしです」
と自己紹介。
西川のりおは
(メガネかけた方は、エラい神経質な顔した銀行員みたいやな)
と思った。
銀行員がボケたりヘマをやるともう一方は、しゃべる度に目をむいて、
「パッチーン」
と音をさせて頭を叩いた。

やっているのは野球ネタで、キャッチャーのきよしが
「(指が)1本は直球。
2本はカーブ」
とサインを説明。
ピッチャーのやすしが投げようとするが、
「股ぐらボリボリかいたら何のサインか、ようわからへんがな」
再びきよしは
「1本は直球。
2本はカーブ。
わかったやろ?」
とサインを説明。
やすしはサインをみながら
「ハッキリわからんなあ
1本か2本か」
といって投げるときよしは
「カーブやないか!」
と怒る。
「カーブのサイン出したやないか!」
「1本しか出してないやないか」
「もう1本出してるやないか」
やすしに股間を指さされたきよしは激しく目をむいて
「そんなモン、計算に入れるな。
ややこしい」
会場は大爆笑。
笑いすぎて客がせき込むと、やすしは
「客がセキしとるやないか。
なんとかせい」
きよしはその頭を
「パシッ」
とはたくと笑いは頂点に達した。
2人はしゃべくりまくり、舞台の端から端まで動きまくった。
横山やすしのボケと西川きよしはツッコみに客席の西川のりおはハマってしまった。
「人生で本気で本当に面白すぎて笑いすぎて涙が出て腹がよじれたのは、これが最初で最後といっても言い過ぎではない」

「もうエエわ」
といってやすしきよしが舞台から降りた。
笑いすぎて汗だらけの西川のりおは
「短いなあ」
「15分以上やってたで」
同じく笑いすぎて涙が出ている田中はサッと返答。
その後、落語や手品、新喜劇を観たが、その最中もやすきよの漫才が頭をよぎり、
「もう1回最初から観ようや」
田中に頼むと
「もう1回みても同じネタやし、同じことしよるだけやで」
とあまり乗り気ではない様子。
しかし
「みたいねん」
と食い下がり
「ほな、みよか」
と渋々いう田中に
「ありがとう」
「悪いなあ」「ゴメンなあ」
と必死にヨイショ。
とにかくどうしてもやすしきよしがみたかった。

2回目の舞台が始まり、トップバッターの若手漫才師は
「♪街の灯りがとてもきれいねヨコハマー
ブルーライトヨコハマー♪」
といういしだあゆみの歌を
「ヨコハバー」
などと崩していくネタだったが、西川のりおは、
「早よ、終われ」
と独り言。
横の田中は寝ているように目を閉じていた。
舞台の上の1人が
「お前の歌が下手やから1番前のお兄ちゃん2人寝てるがな」
と振ってきたが、無視。
もう1人が
「寝てへんがなあ。
恐い顔して怒ってるがな」
といっても笑えなかった。
「もうこれ以上やっても怒られるわ」
2人が頭を下げて引っ込むと、田中は、
「1回目と一緒やろ」

続いてやすしきよしがセンターマイクに向かって走ってやってきた。
「横山やすしです」
「西川きよしです」
と挨拶。
以後は同じネタが繰り広げられ、西川のりおは大声で笑ったが、田中はあまり笑わなかった。
そしてやすしが
「股ぐらボリボリかいたら何のサインか、ようわからへんがな」
といったとき、西川のりおは思わず
「1本は直球。
2本はカーブ」
といってしまった。
すると西川きよしが目をむいて
「かなんな。
この前に座ってる兄ちゃん、たしか1回目も観とったがな。
やりにくいなあ」
まさか自分の言葉を拾って話しかけてくるとは思ってもみなかった西川のりおは驚愕したが、その後も
「早よ、サインみて投げんかい。
このズボン安いから屈んだらシワが入るんや」
と西川きよしがいうと舞台に向かって
「〇〇〇〇ちゃう?」
と安売りチェーン店の名前をいった。
「そうや、980円や。
ほっといてくれ。
兄ちゃん詳しいなあ」
西川きよしは再び客席の西川のりおに話しかけて
「その代わり、靴はどこで買うた思てんねん」
と白い靴を強調。
西川のりおが
「〇〇〇〇や」
と格安シューズ店の名前を出すと
「そうや。
シューズで980円。
そやからすぐに底抜けんねん。
この兄ちゃん一体誰やねん」
西川きよしがノッて返す度に客は大爆笑。
「もうエエわ」
やすしきよしはアドリブの強さを見せつけて漫才を終わらせた。
「みんな笑っとったなあ」
西川のりおがいうと
田中は冷めた口調で
「あれは客イジリや」
そして
「出よか」
といって立ち上がり、西川のりおは出口に向かって追いかけた。

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