怒涛の第1次UWF  うなるキック、軋む関節   社長逮捕 スポンサー刺殺 2枚の血判状

怒涛の第1次UWF うなるキック、軋む関節 社長逮捕 スポンサー刺殺 2枚の血判状

新日本プロレスの営業本部長だった新間寿が黒い感情を持って立ち上げたUWF.。しかしそれは選手やスタッフの熱くて純粋な思いに浄化され、超マイナーだが超前衛的なUWFは若者の圧倒的支持を受けた。しかしスポンサー会社社長刺殺、UWF社長の逮捕と事件が続き、ついに前田日明と佐山サトルのケンカマッチが起こってしまう。


旗揚げから半年、資金もテレビ放映もスポンサーもないままUWFは生き残っていた。
従来のプロレスファンの一部がUWF信者となり、それまでプロレスを無視していた格闘技ファンがTV放映されないUWFを観るために会場に足を運んだ。
その迫力に、結末の決まったショーではなく真剣勝負の格闘技と信じ、ジャイアント馬場の全日本プロレスはもちろん、ストロングスタイルのアントニオ猪木の新日本プロレスも八百長ファイトにしかみえなくなっていた。
人気を得たUWFは、TBSと放映契約を結ぶことになった。
しかし1984年10月19日、UWF事務所に、突然、白手袋をはめた警察官が踏み込んできて、大声で動かないように指示。
警察はショウジ・コンチャの書いた念書を提出させ、浦田昇社長を逮捕した。
その容疑は、約2ヵ月前(1984年8月4日)に佐山サトルのUWF入団会見が行われたが、その2日前、東京都新宿区荒木町に本拠を置く暴力団、住吉連合会の牧睦会の会長代行、滝沢弘と共にショウジ・コンチャを東京、港区赤坂の喫茶店に呼び出し、
「半殺しにするぞ」
と脅迫し、佐山サトルに関する一切の権利を放棄する念書を書かせたというもの。
逮捕後、浦田社長は以下のように説明した。
コンチャは暴力団とトラブルを抱えており、居場所を探していた滝沢はUWFに電話。
事務所の人間は浦田社長と喫茶店で会っていることを教えた。
そして浦田社長とコンチャが喫茶店で話し合っていたところに滝沢が現れ、コンチャを店の奥に連れて行った。
そして話を聞いて浦田社長に恩を売って後で金を請求するつもりで
「念書を書け」
と命じた。
浦田社長は何も知らないまま、その念書を受け取った。

しかし検察は信用せず、4日間、ぶっ続けで取り調べを行い、衰弱した浦田社長は、それまで否認してきた検察のストーリーが書かれた調書にサイン。
検察は脅迫よりも罪が重い「強要罪」が適用。
裁判では証拠が微妙な上、コンチャの証言に誇大妄想的な部分が認めらたたため、数ヶ月という短い禁固刑でしかも執行猶予つきの判決。
しかし有罪であること自体、不服な浦田社長は控訴したが、
「自白調書がある」
と認められず、弁護団はあきれて上告を勧めたが、浦田社長は
「日本の刑事裁判は信用できない。
もうイヤだ」
と拒否し、有罪が確定。
コンチャから損害賠償請求はなかった。
浦田昇社長の勾留中、スタッフは出てくるまで頑張ろうと誓い、選手も黙々と練習した。
この間、道場として自社の倉庫を提供した寺島幸男から500万円を提供を受けるなど周囲の厚情にも支えられた。
一方、逮捕の数日前に放映を決めていたTBSはすぐに撤退した。

警察に事務所に踏み込まれて1ヵ月後の11月10日、3人の若者が週刊プロレス編集部を訪問し
「UWFテレビ放映熱望署名」
と書かれたノートを9冊、差し出した。
みると関東の大学のプロレス研究会の学生が署名を集めていて、週刊プロレスはそれを各TV局に届けた。
5日後、UWFは新シリーズ「イヤーエンドスペシャル」と開始。
開幕戦の後楽園ホールは3200人の超満員。
試合前、リング上で行われるスパーリングを食い入るようにみつめた。
藤原喜明は新日本プロレス時代から試合前スパーリングを続けていたが、関節技や寝技の攻防で客が
「おおっ」
と声を漏らすのを初めて聞き、客のみる目が肥えてきているのを感じた。
彼らは試合が始まっても真剣にみていた。
12月5日、イヤーエンドスペシャル最終戦、メインイベントは、スーパータイガーvs 藤原喜明。
佐山サトルは藤原に55発のキックを叩き込んでKO勝ち。
悲鳴が上がるほどの惨劇だったが、3日後、藤原喜明は、ビールのロング缶片手に早稲田大学でトークイベントに参加。
その顔に変形するほどの腫れや傷はなかった。
藤原のタフネスによるものなのか、イベントの主催者、早稲田大学プロレス研究会を含め、多くの人にはわからなかった。

しかし格闘技をやっている人間はUWFが100%プロレスであると確信していた。
「相手を倒すためには中心部にインパクトを与えフォロースルーを加えることが必要になる。
フォロースルーがあるからこそ相手にダメージを与えることができるんです。
UWFのキックはインパクト(当たる)まで速くみせて、そこで止める。
レガースをした足はパーンといい音を立てるけど、フォロースルーがないから相手にダメージを与えない。
プロレス的にうまく蹴っているなという印象です」
(正道会館館長、石井和義)
打撃だけでなく、投技や寝技、関節技についても専門家がみれば、UWFは真剣勝負としては疑問な場面が多々あった。
つまりバレていた。
しかし多くの若者たちは超マイナーで超前衛的なUWFに強く魅了され強く支持していた。

このトークイベントに17歳の星名治がいた。
タイガージムに入会し、会場に足を運んでUWFの試合を観続けていた星名は、勇気を振り絞って藤原喜明に入門を直訴し新弟子となった。
UWF道場での練習は10時開始。
星名たち新弟子は、それまでに掃除や準備を行う。
道場のある世田谷区に住む前田日明、高田延彦、山崎一夫は定刻にやってきて、中でも前田日明は自転車通勤。
足立区に住む藤原喜明はよく遅刻。
佐山サトルは、ほとんど来なかった。
みんな仲がよく道場の雰囲気は最高で、ゴッチ式を含むトレーニングと打撃、寝技、投技の技術練習、そしてスパーリングを行う。
星名は、寝技のスパーリングで腕や脚をアメのように曲げられながら、少しずつ逃げ方を覚えていった。
藤原はとにかくうまく、前田はとにかく怖く、高田はとにかく力が強く、木戸や山崎は比較的優しかった。
カールゴッチは、当たり前のように肋骨や背骨を強く押したり、ケツの穴に指を入れるなどエゲツなかった。
星名は、試合の日、会場で佐山サトルのキックをミットで受けたが、そのスピードの速さにビックリした。
数ヵ月後、自分のデビュー戦が決まったが、試合直前、レフリーが
「今日コレな」
といって拳を握って親指を下に向けた。
負け役という意味だった。
それまで何度も道場で強かった先輩が試合でアッサリ負けるのをみていたので、試合の結末が決まっていることはわかっていた。
「でも僕の中で何も変わらなかった。
自分がやっていることは間違ってないと思っていたからです。
試合の中身は試合時間も含め何も決まっていません。
決められているのは勝敗とフィニッシュだけです」
(星名治)

1985年1月、UWFは「サンライズ・ウイークス」を開始。
開幕戦、1月7日の後楽園は超満員。
続く、千葉県松戸市 、千葉県市原市、東京都福生市、愛知県豊川市、長野県飯田市では観客数は伸びなかったものの、1月16日の大阪府立臨海スポーツセンターでは再び超満員。
メインイベントは、スーパータイガー vs 藤原喜明。
勝敗は、KO、ギブアップ、レフリーストップ、ドクターストップのみで、3カウントのフォールもロープブレイクも認められないという特別ルール。
佐山サトルは一方的に蹴りまくった。
藤原喜明は倒れ、倒れた後も蹴られ続けたが、組みついて素早くグラウンドに持ち込み、チキンアームアームロックで佐山の左肩を極めた。
佐山はうめき声を上げ、前田や高田があわててかけよった。
佐山は左肩を脱臼した-とされたがすべて決められた演出だった。

1985年5月2日、、UWFに「海外タイムズ」というスポンサーがついた。
海外タイムズは大会ポスターやチケットに社の広告を入れることを条件に月1000万円を払った。
UWFは「海外UWF」に社名を変更。
グアムキャンプが敢行され、11ヵ月間、給料が出ず、清算されない領収書を保管し続けていたUWFスタッフたちにも給料が出た。
羽振りがよくなると、すぐにテレビ東京で中継も決定した。

1985年6月、UWFは

・7月からリーグ制を導入
・試合は3週間に5試合
・レガースとキックシューズをつけない場合、キック攻撃禁止
・試合中はダウンとロープエスケープをロストポイントとしてカウント
・グラウンドでの打撃は禁止
・顔面への拳、頭突き、肘、膝での攻撃は禁止

と新ルール、新制度を発表した。
リーグ制は、週刊プロレスが発案で、Aリーグ、Bリーグにわかれて総当たり戦を行う。
勝ち=1点、負け=0点、引き分け、0.5点でポイントを争い、Aリーグ最下位はBリーグ降格、Bリーグ最上位者はAリーグ昇格になる。
選手の向上心を煽ると共に、得るものも失うものもあまりない弱小団体で悲しみと喜びを生み出そうという目論見もあった。
その他はすべて佐山サトル考案によるもの。
試合数を減らし間隔をあけることで、練習、トレーニング、技術、コンディショニングの向上を図り、その結果、試合の質が良くなり、観客にも認めてもらえると主張した。
シューティングレガースとシューティングシューズは佐山サトル考案で、初代タイガーマスクのマスクをつくったOJISAN企画の豊嶋祐司が製作。
かつて1977年10月に行われたアントニオ猪木 vs チャック・ウェップナー(映画「ROCKY」のモデル)戦でも佐山サトル考案のオープンフィンガーグローブが使用されたが、UWFのレガースの中身は発泡スチロールで表面は本皮。
シューズも同じ素材を使用し、甲の部分にクッションが入り、ヒモはハイキックを蹴ったときに目に入らないよう踵部についていた。

海外タイムズは、実は純金ファミリー契約証券という2000億円以上を騙し取っていた豊田商事の子会社だった。
豊田商事の永野一男会長は無類の格闘技好きで、ボクシングの協栄ジムの後援者だった。
協栄ジムの金平正紀の紹介でUWFはスポンサードを受けることになった。
浦田昇社長は、数回、永野一男会長に会っていたが、海外タイムズや豊田商事が何をしている会社なのかはまったく把握していなかった。
やがて豊田商事は自転車操業の末に破綻。
被害者は、高い利息を約束され投資したにも関わらず、元金さえ戻らなくなり、自殺者まで出た。
UWFの新ルール発表から10日後、6月18日、大阪市北区天神橋の永野一男のマンションの前で、大勢の報道陣が張りつく中、2人の男が現れ、窓を破壊し部屋に侵入。
永野一男をメッタ刺しにして殺した。
たくさんのマスコミの前で起こったショッキングな殺人事件に世間は驚愕。
UWFはあわてて「海外UWF」から「UWF」に名前を戻したが、テレビ東京との中継話は消えてしまった。
浦田社長の逮捕、TBS撤退、スポンサー会社の社長の刺殺事件、テレび東京撤退、異常事態の連続でUWFのスタッフの精神状態はボロボロだった。

1985年7月8日には安生洋二がデビュー。
幼稚園から小4までニュージーランドで過ごしたため、小5で英検2級を取得。
東大に行けると騒がれた。
中学生のとき、タイガーマスクに憧れ、高田延彦の試合をみて、高校卒業後、UWF入りを志願した。

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