怒涛の第1次UWF  うなるキック、軋む関節   社長逮捕 スポンサー刺殺 2枚の血判状

怒涛の第1次UWF うなるキック、軋む関節 社長逮捕 スポンサー刺殺 2枚の血判状

新日本プロレスの営業本部長だった新間寿が黒い感情を持って立ち上げたUWF.。しかしそれは選手やスタッフの熱くて純粋な思いに浄化され、超マイナーだが超前衛的なUWFは若者の圧倒的支持を受けた。しかしスポンサー会社社長刺殺、UWF社長の逮捕と事件が続き、ついに前田日明と佐山サトルのケンカマッチが起こってしまう。



1984年、アントンハイセル事件に端を発する一連の新日本プロレスのクーデター騒動の末、営業本部長だった新間寿は会社を追われた。
復讐に燃える新間は、自分の団体をつくることを決意。
フジテレビと水曜20時、銭形平次の後釜として自身の団体を放送することを契約。
猪木や長州力を新日本プロレスから引き抜き、引退したタイガーマスクも加入させ、アメリカのWWFとのパイプを使ってアンドレ・ザ・ジャイアントやハルク・ホーガンを呼び、自分を追い出した奴らを見返してやろうと目論んだ。
その復讐にための団体を
「UWF(Universal Wrestling Federation、ユニバーサル・レスリング連盟)」
と名づけた。
社長に大学の後輩、浦田昇を据えた。
結婚式場や喫茶店、輸入代理店などを営むサンフルト(株)の社長である浦田は、学生時代、中央大学レスリング部で全日本選手権と全日本学生選手権で優勝した経験があった。

新間は次に新日本プロレスに残っていた部下に声をかけ引き抜いた。
そしてアントニオ猪木に2500万円を渡し、UWFへの協力を要請。
猪木は、新日本プロレスの選手数名をUWFに移籍させること、UWFのリングに上がって挨拶をすることを約束。
新間は次に長州力に声をかけた。
長州力は、2000万円を受け取らず、UWF参加を断り、アニマル浜口、小林邦昭、寺西勇、キラーカーンと維新軍を結成し、新間同様、クーデター事件後、新日本プロレスを辞めた大塚直樹(元営業部長)のもとでテレビ朝日と契約を結んだ。
猪木、長州がダメとなれば、客を呼べるのはタイガーマスク=佐山サトルしかいない。
しかし佐山サトルは結婚問題や佐山の妻の父親にアントンハイセルへ投資させた件で新間に強い不信感を持っていた。
新間は佐山サトルを
「ニューヨークのアディソン・スクウェア・ガーデンでタイガーマスクの復帰戦をやろう。
WWF認定インターナショナルジュニアヘビー級タイトルマッチだ。
もちろん君が勝って新チャンピオンになって凱旋帰国した後はUWFのエースとして迎える。
UWFはフジテレビがゴールデンタイムで放映してくれるからメインイベンターである君には、これまでの数倍のギャラが払われる」
と口説き、佐山はそれに同意した。


1984年1月8日、東スポは
「現在引退中のタイガーマスクは、必ずこの手でリングに上げます。
3月26日のアディソン・スクウェア・ガーデンのリングに彼を出場させます」
という新間寿のインタビュー記事を掲載。
10日後、佐山サトルがテレビ朝日「欽ちゃんのどこまでやるの!」に出演し、リング復帰を宣言。
後は

・3月26日にニューヨークで行われるWWFの定期興行にタイガーマスクが出場し、タイトルマッチに勝つ
・それは日本では4月4日にフジテレビの「激闘ザ・プロレス」で放映され、不死鳥のように復帰したタイガーマスクに日本中が歓喜
・その1週間後の4月11日にUWFの旗揚げ戦が大宮スケート場で行われる

という筋書きだった。
しかし新日本プロレスはWWFにクレームを入れた。
それはテレビ朝日とWWFの間には
「テレビ朝日と契約中の選手は他局の放送に出演できない」
という契約があり、まだ契約期間が残っている佐山がWWFのリングに上がってフジテレビが放映するのは契約違反。
その場合、新日本プロレスはWWFに違約金を請求せざる得ないと通告。
WWFは高額の契約金を払ってくれている新日本プロレスとモメるわけにいかず、新間に
「テレビ朝日と契約が残っている以上、サトル・サヤマをWWFのリングに上げることはできない」
と告げた。
こうしてタイガーマスクの再デビュー戦は中止となり、佐山サトルは激怒。
新間がギャラアップを提示したが応じず、UWF参戦を拒否。
猪木も長州もタイガーも呼べなかった新間にフジテレビも激怒。
銭形平次の後釜番組は、プロレスではなく西川きよし司会のクイズ番組「ザ・わかるっチャ!」になった。
フジテレビ、猪木、長州、タイガー、WWF、すべてを失い、復讐から絶望の団体に変わったUWFだったが、旗揚げ戦は1ヵ月に迫っていた。

1984年2月、佐山サトルは、東京、世田谷の高級スポーツジクラブの中に「タイガージム」をオープンさせ、長年の夢、理想の格闘技実現のための第1歩を踏み出した。
そして山崎一夫が新日本プロレスを退団し、タイガージムのインストラクターとなった。
タイガーマスク時代から佐山サトルの付き人だった山崎一夫は、高田延彦らと共に売り出し中だったが、クーデター事件で嫌気が差し、佐山サトルに引退を相談。
「辞めるのはもったいない」
といわれタイガージムに入った。
インストラクターとして指導しながら自分の練習も続け、佐山とスパーリングをして、サンドバックを蹴って、技を磨いた。
タイガージムは、入会金3万円、月会費1万5000円と高額ながら、タイガーマスク人気で入会者が殺到。
しかしスポーツクラブとの契約で格闘技を教えることは禁止され、会員は週1回、月4回、技を教わったりスパーリングをすることはなく、ひたすらブリッジやスクワットなどのトレーニングを繰り返した。

菊田早苗(総合格闘家、GRABAKA主宰、元ライトヘビー級キング・オブ・パンクラシスト、ADCC2001 88kg級優勝)は、小学6年生のときにスーパータイガージムに入門したが物足りなさを感じてすぐに退会した。
タイガージムの共同経営者にショウジ・コンチャがいた。
(佐山は社長、コンチャは会長)
本名、曽川庄司は、実業家で、新日本プロレスの興行を請け負っていたが、実は暴力団とも関係していて前科8犯。
それを知らない佐山は
「お父さん」
と呼んで慕っていた。
17歳で新日本プロレスに入門し、19歳で海外遠征に出て、帰国後すぐにタイガーマスクとして国民的スーパースターになってしまった佐山は、ある意味、世間知らず。
しかしやがてタイガージムが自分の理想とは程遠いどころか、高額な月謝を取りながら160名を超える会員にトレーニングをさせるだけというやり方や、インストラクターへの給料を支払わなかったり、佐山のサイン会などの売り上げを半分以上搾取するショウジ・コンチャをみて
「金儲けをしようとしているだけなのでは?」
と疑い始める。


「いま思えばショウジ・コンチャは、僕が本気で格闘技をやろうとしているなんて信じてなかったんでしょうね。
だからタイガージムに関しても、金儲けとしか考えてなかった。
タイガージムでは契約上、会員に格闘技は教えられなかったけど、インストラクターや内弟子だけの練習ではガンガン格闘技の練習をしてたんですよ。
それで1度、僕の打撃で弟子が鼻血をドバッと出して、ジムの絨毯部分が真っ赤になっちゃったことがあるんですけど、ショウジ・コンチャは『まさか?本当に格闘技の練習をやってるとは思わなかった』みたいな感じで。
そもそもプロレスラーをバカにしていたような部分もあったと思います。
その後、いきなり『全日本プロレスに出てくれ』とかいろんなことをいい出したんで、いよいよ怪しいなと思ってきた頃、ある方(北沢幹之、力道山先生最後の弟子と呼ばれ、リングスのヴォルク・ハンやアンドレイ・コピィロフとスパーリングしても簡単に関節を極めさせなかった実力者)がショウジ・コンチャの正体を全部教えてくれたんですよ。
ある会社の社長なんですけど、以前コンチャにだまされた経験があって『あいつはとんでもない男だよ』って。
それでだまされていたことに完全に気づくんです」

結局、新間寿が集めたレスラーは、前田日明、ラッシャー木村、剛竜馬、グラン浜田の4人だけだった。
前田は、2月29日の合同練習を最後に新日本プロレスを離脱した。
新間は猪木の頼み込み、オープニングシリーズの5試合だけという期間限定で高田延彦が送ってもらった。
新間は全日本プロレスのジャイアント馬場にも頭を下げ、馬場はアメリカ、テキサス州のテリー・ファンクに3人の外国人レスラーをUWFに送るよう指示し、ロスにいたマッハ隼人にもUWFへの参戦するよう命じた。
3月10日、前田は新間と共に渡米し、2週間ほどWWFのツアーに帯同。
3月26日、佐山サトルの代わりにアディソン・スクウェア・ガーデンのリングに上がり、カナダの無名レスラー、ピエール・ラファイエルとWWFインターナショナル蛇級王座決定戦を戦い、10分32秒、コブラツイストで勝った。
翌3月27日、新間は旗揚げ戦を2週間後に控えた段階で、密かに

・UWFは旗揚げシリーズを最後にプロレス興行会社として再スタート
・UWF所属4名(前田日明、ラッシャー木村、剛竜馬、グラン浜田)は新日本プロレスのリングに上がる
・新日本プロレスはファイトマネーとして毎月200万円をUWFに支払う
・1985年以降の新日本プロレスはシリーズごとに2回のUWF興行を保障する
・UWFのリングは、新日本プロレスが価格交渉の上、引き取る
・UWFは、新日本プロレスのWWF所属選手の招聘に全面的に協力する

とUWFを新日本プロレスに吸収合併させる計画と同意書を作成した。


その後、大宮市周辺には、UWFスタッフによっての旗揚げ戦のポスターが貼られていった。
「今、新しいプロレススが始まる
わたしは数十人のレスラーを確保した
新間寿復活宣言
私はプロレス界に万里の長城を築く
UWFオープニングシリーズ
4月11日(水)大宮スケートセンター」
中央に、大きくマイクを握った新間寿。
右側に、アントニオ猪木、タイガーマスク、前田日明、ラッシャー木村、マサ斎藤、剛竜馬、藤原喜明、高田延彦、長州力、アニマル浜口の顔写真。
左側に、アンドレ・ザ・ジャイアント、ハルク・ホーガン、ローラン・ボック、ボブ・バックランド、アブドーラ・ザ・ブッチャー、キラー・カーンらの顔写真。
実はその多くが出演候補という、後で訴訟が起こってもおかしくないギリギリのポスターだった。

テリー・ファンクに電話で
「日本で新しく誕生したグループの試合に出てほしい」
と要請を受けたダッチ・マンテルは、テネシー州ナッシュビルのヒールレスラーで、4年前に全日本プロレスに参戦したことがあった。
そして5時間かけてロスアンゼルスに飛び、スコット・ケーシー、ボブ・スウィータンと合流し、11時間かけて日本に到着。
午後の早い時間に成田に到着した3人は迎えに来たUWFスタッフから
「最初の試合は今夜」
といわれた。
他のレスラーと共にバスで試合会場に着いたのが17時。
控室の扉に日本語と英語で対戦カードを描いた紙が貼られてあった。
ダッチ・マンテルは、相手のアキラ・マエダも、タイトルマッチだということも、そのWWFインターナショナルヘビー級というタイトルも初耳。
しかしやることは1つ。
最初はマエダを徹底的に痛めつけ、客の不安といら立ちがピークにっしたら、最後にこっぴどく負ける。
ヒールとして試合を盛り上げ、客を喜ばすために全力を尽くそうと思った。


大宮アリーナは超満員。
しかし出場していたのは選手は、前田日明、ラッシャー木村、剛竜馬、グラン浜田、マッハ隼人、高田延彦、そして外国人選手。
前座試合が終わり、メインイベント、前田日明 vs ダッチ・マンデルが始まった。
しかし試合は盛り上がず、退屈した観客が、
「フッジッワラ、フッジッワラ・・・」
と藤原喜明コール。
それを聞きながら前田日明が必死に攻撃。
しかし観客は
「イーノーキ、イーノーキ・・・」
「チョオシュー、チョオシュー・・」
「ドーラゴン、ドーラゴン・・・」
と観客は猪木、長州力、藤波辰巳を次々とコール。
ポスターに掲載されていた選手の出場を求めた。
自分が否定されているように感じた前田日明はキレた。
ダッチ・マンデルをロープに飛ばし、戻ってきたところにフライングヒールキック。
くるぶしがモロに顔面に入り、マンテルは一瞬、失神。
前田はほとんど意識のないマンテルをジャーマンスープレックスで投げ、8分13秒、フォール勝ち。
鼻、口、さらに目からも血が出ていたマンテルは数人のレスラーに支えられながら控室に戻った。
すると前田日明がやってきて
「ソーリー、ソーリー」
と何度も頭を下げた。
その後、マンテルは、スコット・ケーシー、ボブ・スウィータンと話し合った。
「日本人はワーク(試合を盛り上げる)の仕方を知らないのか?」
「ヤツらは最初から盛り上げるつもりなんかない。
ショートグループだ」
「普通じゃない。
80%がシュートで20%がワーク。
彼らは観客を楽しませるためではなく相手を叩きのめすためのトレーニングを積んでいる」

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