正統派二枚目俳優 竹脇無我(たけわき むが)

正統派二枚目俳優 竹脇無我(たけわき むが)

家庭の経済事情で映画界へ飛び込んだ竹脇無我。「アンコ椿は恋の花」(映画)に初主演するや、たくさんの映画やドラマでクールな二枚目として活躍しました。


映画界へ入るまで

竹脇無我(たけわきむが)は、1944年にアナウンサーの竹脇昌作の三男として生まれました。長兄は、やはりアナウンサーの義果(よしみ)で、6人兄弟です。

無我は、青山学院大学法学部を卒業していますが、映画デビューは16歳のときです。

父:竹脇昌作

竹脇昌作 - Wikipedia

彼の父親の昌作は、無我が15歳の時に自殺し、長兄の義果はアナウンサーを続けるも徐々に仕事の疲労で視力を失っていきます。

そんな折、2歳年上の次兄が病で18歳という若さでこの世を去りました。無我は、苦しくなっていく一家の経済状況を立て直すべく、16歳で映画界へ飛び込んだのでした。

映画デビュー

無我は、1960年15歳の時に松竹映画「しかも彼等は行く」で俳優デビューします。父譲りのソフトな美声と正統派な顔立ちで人気を集め、1965年に演歌歌手の都はるみの同名のヒット曲「アンコ椿は恋の花」を映画化した歌謡映画「アンコ椿は恋の花」で初主演を果たしました。

この映画は、電気工場の工員修一(無我)が旅先の伊豆大島でバスガイドの明子(香山美子)と出会い好意を寄せあうのですが、明子は旅館の御曹司(豊太郎)との婚姻を勧められ、無我演じる修一と豊太郎の間で心を揺らすのです。歌手の都はるみは、明子の妹役です。

主演を果たした「アンコ椿は恋の花」

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松竹は、無我より先に俳優デビューしていた田村正和と共に松竹の看板俳優としてプロモーションしていたと言います。

田村正和は、無我の一歳年上。人気俳優の坂東妻三郎のDNAを存分に発揮し、注目を集めていました。田村と無我のイケメン俳優を2枚看板にした松竹は向かうところ敵なしだったでしょう。

1966年当時の田村正和

田村正和 - Wikipedia

無我は、テレビドラマにも出演するようになり、一躍スターとなりました。時代劇やホームドラマなどで幅広く活躍し、美声であったことから女性ファンがたいへん多かったそうです。また、知的で優しいイメージが定着し「理想の夫ナンバーワン」とも言われていました。

テレビでの活躍は、長兄・義果の尽力もありました。失明しテレビ局を退職した長兄・義果は、無我の個人事務所「タケワキプロダクション」の設立に協力し、マネージャーとして出演交渉に務めていたのです。

作品集

数々の映画やドラマに出演した無我ですが、特に当たり役となった作品を紹介したいと思います。

時代劇で、必ず彼の出演作品にタイトルがあがるのが「大岡越前」です。TBS系のナショナル劇場で1970年から1999年にかけて放送されました。主役の大岡越前は加藤剛、無我演じる榊原伊織は、大岡越前の親友であり協力者である小石川養正所の医師です。この「大岡越前」での共演がきっかけで、加藤剛との共演も多く、親交も深かったそうです。

左:榊原伊織(竹脇無我) 右:大岡越前(加藤剛)

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つぎに、1970年から1977年まで放送された「だいこんの花」シリーズです。

この「だいこんの花」の主演である森繁久彌は、無我の父である昌作とNHKアナウンサー1期の同期生であり、親友同士でもあったのだそうです。ドラマの中で森繁と無我は親子を演じていますが、この共演をきっかけに、プライベートでも森繁を「おやじ」と呼ぶほど慕っていたそうです。

DVDのジャケットに記されている「人知れず 忘れられた 茎に咲き 人知れず こぼれ散り 細かな 白い だいこんの花」という森繁久彌の詩をドラマのオープニングで無我が朗読しています。 

つぎもドラマなのですが、若き柔道家を取り巻く人間模様を描いた「姿三四郎」です。この作品は、何度も映画やドラマ化されているのですが、竹脇無我が主演した「姿三四郎」が、改革開放間もない中国のテレビで初めて放送された日本の連続ドラマであり、一定年代の中国人はみな「姿三四郎と言えば竹脇無我」と答えるそうなのです。

無我が演じたのは1970年版にドラマ化されたものです。この前年にドラマ「柔道一直線」がヒットしたの受け作品が出来ました。姿三四郎は何度も映像化されていて、ドラマ版の姿三四郎を演じた俳優だけでも、牧真介、舟橋元、倉丘伸太郎、勝野洋、加藤成亮と、無我を含めて6人にものぼります。

最後に無我の遺作となったのが、中村雅俊主演の2014年公開「ふうけもん」です。この映画は2008年に制作され2009年に公開予定でしたが、制作会社の諸事情により公開が2014年となりました。無我は、公開前の2011年に死去しています。

この映画のストーリーは、裏社会を生きていた男が心機一転、便利屋を始めます。主人公・江頭右京(中村雅俊)を通じて、家族とは、友情とは、信頼、許しとはといった根源的なテーマが織り込まれている作品です。実在する便利屋の元祖である右近勝吉をモデルとした映画です。

遺作は「ふうけもん」ですが、カメラの前で演じた最後の映画は、2010年公開の映画「大奥」です。大奥の男女の役回りを逆転させたものになっています。主演は二宮和也が水野、柴咲コウが吉宗を演じるなど若手人気俳優を多くキャストに据えています。

そんな中、無我は主演・二宮和也が演ずる水野の父役として出演しています。これが俳優竹脇無我の最後の演技となりました。

おわりに

多くの作品に出演した無我ですが、親友の松山英太郎死去のショックと二枚目を演じるストレスとで、48歳(1992年)にうつ病になってしまいます。親友の松山英太郎とは「大岡越前」や「江戸を斬る」など多数の作品で共演した仲でした。

松山英太郎を失ったショックは大きかったようで、お酒で自殺の衝動を紛らせてる日々だったようです。一時入院を繰り返すこともありましたが、娘と「おやじ」と呼ぶ森繁久彌や大岡越前以来、親交の深い加藤剛の励ましにより、うつ病の治療に専念したとそうです。

8年間の闘病の末、復帰しますが2009年に森繁が死去します。このことによるショックもあり、またもうつ的症状なのか、落ち込みが激しくなり飲酒や喫煙を始めてしまいました。うつ病を発症したとき糖尿病と高脂血症も併発していて治療していたのですが、飲酒や喫煙をきっかけに再発してしまいました。

2011年8月21日、小脳出血にて67歳でこの世を去りました。
訃報に際し、俳優陣ほかたくさんの人々からの追悼メッセージが送らるほど愛された俳優だったのです。

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