アンプラグド~アコースティック・クラプトン
90年代に流行った音楽用語のひとつに「アンプラグド」があります。アコースティックではなくアンプラグドと呼んだところが新鮮でオシャレでしたねぇ。当時、日本人の多くは意味分からんかったと思いますが。。。
この言葉が一般化したのはMTV内の同名のライブ番組からです。この番組「MTVアンプラグド」は1989年から1999年までレギュラー放送されていました。現在でも時折不定期に放送されていますが、やはりインパクトがあったのはレギュラー放送時代ですね。普段あまり見かけることのないレジェンド級の大物アーティストが出ていましたから。
中でもエリック・クラプトン。彼のライブの模様を収録したCD、DVDの成功によって「MTVアンプラグド」の認知度は日本でも一気に高まりました。
アンプラグド~アコースティック・クラプトン
エリック・クラプトンのアルバム「アンプラグド~アコースティック・クラプトン」は、グラミー賞6部門で賞を獲得し、全世界でなんと2,600万セットも売り上げる大ヒットとなりました。これによって若干低迷気味だったエリック・クラプトンのキャリアも活性化しました。
アルバムタイトルに偽りなしで、アンプラグドなだけにアコースティックなわけですが、エレキをギンギンに弾きまくっていた名曲「いとしのレイラ」がグッとシブく大人の曲に様変わりしていて驚かされたものです。
ライブの楽しみの一つに、ライブでしか披露されないカバー曲というのがあります。本作でもロバート・ジョンソンの「ウォーキング・ブルース」やマディ・ウォーターズの「ローリン&タンブリン」をはじめ、実に多くのカバー曲を披露しています。全14曲中、9曲がカバー。カバーが聴けるのはライブでの楽しみとはいえ、ちょっと多すぎないかと心配にさえなりますが、どの曲も素晴らしい出来栄えですからねぇ。改めてブルースが好きなんだなぁが分かる大人の1枚です。
通常のライブよりもカバー曲が多めと言うのはエリック・クラプトンに限らず「MTVアンプラグド」の特徴でもありますね。皆さんリラックスしてるということかもしれないです。
本作は「アンプラグド・アルバムを1990年代前半の流行にしたアルバム」と評されただけあって、以降多くのMTVでのライブを収めたアンプラグド・アルバムが世に出ることになります。ということで、代表的なアンプラグド・アルバムを集めてみました。
MTV アンプラグド・イン・ニューヨーク
カバー曲が聴けるのはライブの楽しみということでは「MTV アンプラグド・イン・ニューヨーク」もそうでしょうね。通常とはひと味違うライブを披露したニルバーナの作品です。このアルバム、MTVだとかアンプラグドだとかと関係なく名盤といって良いでしょう。
MTV アンプラグド・イン・ニューヨーク
全14曲中、カバーは5曲。ミート・パペッツのカバーを3曲も演っているのは、まぁ、演りたかったんでしょうけど流石に3曲は多いようにも思えますね。が、違和感はありません。因みに、クリス・カークウッド、カート・カークウッド (共にミート・パペッツ) の二人がサポートというかゲストで入っています。
ステージは葬儀をイメージしたものになっていますが、翌年皮肉にも、ボーカルのカート・コバーンが猟銃自殺してしまいます。この事は不謹慎だとは思いますが、番組で最高のエピソードと言われています。
只、それだけに留まらず「MTV アンプラグド・イン・ニューヨーク」はローリング・ストーン誌が選んだ「オールタイム・ベスト・ライヴ・アルバム50」に於いて10位に選出されており、ニルヴァーナの最も重要なアルバムに数えられてもいます。
それにしても、デヴィッド・ボウイをカバーするとは思いませんでした。しかも「世界を売った男」という比較的地味な曲を。オリジナルに忠実なアレンジですが、流石に雰囲気ありますねぇ。
ところで、この時にカート・コバーンが着ている毛玉ありのカーディガンは、オークションで約3600万円という高値で落札されたんですよ。
UNPLUGGED...AND SEATED / アンプラグド
インプレッションズ(ピープル・ゲット・レディ)、サム・クック(パーティを開こう)、ヴァン・モリソン(ハヴ・アイ・トールド・ユー・レイトリー)、トム・ウェイツ(トム・トラバーツ・ブルース)、キャット・スティーヴンス(さびしき丘)などなど、これまた多くのカバーを披露してくれたロッド・スチュワート。もともと歌の上手いヒトですが、アンプラグドとなると尚更歌の上手さが際立ちます。
UNPLUGGED...AND SEATED / アンプラグド
誰の曲であろうとロッド・スチュワートが歌えば、もうそれはロッドの曲になる。あの声ですよ。魅力的ですよねぇ。
しかし、ここで嬉しいのは何と言ってもゲストです。そう、現在ローリング・ストーンズのギタリストとして活躍している盟友ロン・ウッドの参加です。2人が在籍していたフェイセズの楽曲「ステイ・ウィズ・ミー」が聴ける喜びはデカイです。
更には、ロン・ウッドも参加していたアルバムで、イギリスとアメリカの両国で、ロッド初のチャート1位を獲得した「エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー」。そこからシングルカットされ、これも大ヒットとなった「マギー・メイ」をロン・ウッドのギターで聴ける。これは嬉しい!アレンジも良いですし、盛り上がります。
昔の仲間と久々の競演。これは観てる方も、演ってる方も楽しいに違いありません。MTVアンプラグドでは、こうした旧友との再会がバンドの再結成につながったという例もあるんですよ。次にご紹介するキッスがそうです。
MTV アンプラグド : キッス ― 地獄の再会
アコースティックだというのに何と毒々しい邦題なんだ!と、思われた方もいらっしゃることでしょう。その気持ち、確かに分からなくは在りません。が、これで良いんです!
なぜ良いのかと言うと、70年代にリリースされたアルバムタイトルには全て「地獄」という言葉が使われていたんです。70年代が彼らの絶頂期だったというだけではありませんよ。70年代はオリジナル・メンバーだったんです。そして、MTV アンプラグドで、脱退していた2人のオリジナルメンバーがゲストで登場するんです。なので、アルバムの邦題に「地獄」がつくのは当然というか、付けてくれないとピンとこないわけです。