「加山雄三のブラックジャック」でお馴染み!孤高のバンド「ヒカシュー」

「加山雄三のブラックジャック」でお馴染み!孤高のバンド「ヒカシュー」

70年代末期巻上公一を中心に結成されたヒカシュー。当時は「P-MODEL」「プラスチックス」とともに「テクノ御三家」と言われていましたが、現代音楽や即興演奏を取り入れるなど彼らは「テクノポップ」の一言では括る事が出来ない音楽性を持っておりました。現在もコンスタントに活躍している彼らの活動を振り返ってみましょう。


ヒカシューの結成、現在にいたるまでの経緯

ヒカシューは1977年、ボーカル巻上公一の主宰していた劇団「劇団ユリシーズ」の周辺人物を中心に結成されました。

1979年、YMOなどのテクノポップブームに乗っかり、シングル「20世紀の終わりに」でメジャーデビュー。シンセサイザーやリズムボックスを使った当時の音楽性から「P-MODEL」・「プラスチックス」とともに「テクノ御三家」と呼ばれました。

「20世紀の終わりに」も収録されているファーストアルバム「ヒカシュー」

ヒカシュー

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テクノ御三家の中ではタイアップにも積極的で、「パイク」は映画「チェンジリング」の日本版主題歌に、「ガラスのダンス」は「加山雄三のブラックジャック」に起用されました。

90年代以降はアニメ「超時空世紀オーガス02」の主題歌・劇伴音楽を担当、また石野卓球やケンイシイなど現代テクノ系のミュージシャンによるリミックスアルバム「レトロアクティブ」をリリースするなど、多方面に活動し話題を集めました。

石野卓球、ケンイシイなどテクノミュージシャンが参加した「レトロアクティブ」

レトロアクティブ

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(しかしこの頃は大分複雑な事情があったらしく、前者は途中で音楽を降板、2012年に再発したサントラも主題歌の「不思議をみつめて」に改題して発売されました。)

2012年に再発されたオーガス02のサントラにはオーガス02の名前ではなく、「不思議を見つめて」というタイトルだった。

不思議をみつめて

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アクの強すぎるボーカルを始めとした独自の音楽性

ヒカシュー一番の特徴と言えば、なんといっても巻上公一の独特過ぎるボーカルです。

オペラ的とも演歌的とも言えない何とも言い難いこの歌い方は、誰にも真似できない唯一無二の存在です。

一聴したらいわゆる「ヘタウマ」系なんじゃないかと思う方もいるとは思います。
しかし、彼は90年代にモンゴル発祥の特殊な歌唱法である「ホーミー」に傾倒して他アーティストへの客演で披露、また東京の田園調布でボイス・パフォーマンス教室を開講しているなど、非常に高い歌唱力を持っております。

本当に一言では言い表せない歌い方ですが、強いて挙げるなら同時期に歌手デビューした戸川純に近い感じではないでしょうか。
(実際に巻上氏初のソロアルバム「民族の祭典」の「おおブレネリ」で共演しています。)

戸川純もゲスト参加したソロアルバム「民族の祭典」はタイトル通り世界の民謡・童謡のカバーアルバムだった

民族の祭典(紙ジャケット仕様)

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また音楽性も前衛パフォーマンスを中心とした小劇団発のバンドらしく、楽曲の中に語りや寸劇を取り入れるなどの演劇的な要素、即興演奏や不協和音を取り入れた現代音楽など様々な要素が混在しており、テクノポップブームが終焉した80年代後半以降はさらにこの傾向が強くなっていきます。

このように「独自の世界観を持っているボーカル」「デビューが同時期」「テクノポップブームが過ぎ去った後もジャンルを超越して活躍する」という共通点から同じテクノ御三家のP-MODEL(平沢進)と比較される事もあります。

しかしP-MODEL(平沢氏)の音楽性は「コンセプトに分かりやすいストーリー性がある」「メロディ・曲の展開がキャッチー」という意外ととっつきやすい部分があり、それに比べると現代音楽や即興演奏など非音楽的要素が強いヒカシューはやや難解さがあるかもしれません。

ヒカシューが与えた影響

このように独創的な音楽性をもっているバンドですが、ヒカシュー(もしくは巻上公一)に影響を受けたアーティストが多く存在します。

その中でも有名なのは電気グルーヴの石野卓球でしょう。彼のボーカルスタイル(特に前身バンドである「人生」時代)は初期の巻上公一の影響を感じさせます。

また前述のリミックスアルバム「レトロアクティブ」では「パイク」をリミックス。このアルバムに対して否定的だった巻上公一も例外的に褒めており、後に雑誌上にて対談するきっかけを作りました。

近年も石野氏のソロで巻上氏の声をサンプリングした曲「Hukke」(アルバム「CRUISE」に収録)の発表、ピエール瀧氏逮捕による電気グルーヴの音源回収に対する署名に巻上氏が記者会見に参加するなど、深い親交が続けられております。

巻上公一の声をサンプリングした「Hukke」を収録している石野卓球「CRUISE」

CRUISE

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またニューウェーブバンドPOLYSICSも「パイク」をカバー、ライブで何度も共演するなど、電気グルーヴよりさらに若い世代からもリスペクトされています。


70年代末期のデビューから現代まで四半世紀に渡る活動で、今もなおリスペクトするミュージシャンが多い「ヒカシュー」。文章だけでは伝わり切れない奇妙な魅力があります。
みなさんも是非聴いてみてください。

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