小柳ルミ子+安井かずみ
1971年のデビュー以来、多くのヒット曲を放っている小柳ルミ子。キャリアが長いだけに楽曲を手掛けた作詞家、作曲家も多岐にわたります。それはもう日本の歌謡史が作れるくらいに豪華な顔ぶれです。そうした錚々たる作詞家の中に安井かずみがいます。
安井かずみといえば、加藤和彦とのコンビの印象が強いですが、70年代は沢田研二「危険なふたり」、郷ひろみ「よろしく哀愁」、西城秀樹「ちぎれた愛」などトップアイドルへの作品提供で知られています。飛ぶ鳥を落とす勢いとはこのことですね。
作風はスタイリッシュ。この一言に尽きます。そんな安井かずみが演歌歌手としてデビューした小柳ルミ子のシングルを担当しているんです。意外な感じがしますが、どれも予想を裏切る素晴らしい出来栄えです。
わたしの城下町
安井かずみが小柳ルミ子に提供したシングルは全部で5曲。1971年に2曲、1973年に3曲あります。小柳ルミ子のキャリアからすると多いような少ないような感じですが、1973年の時点では小柳ルミ子が発売したシングルの半分にあたります。
1971年、最初に提供した作品が小柳ルミ子のデビュー曲「わたしの城下町」でした。

わたしの城下町
演歌ですもんねぇ。安井かずみの経歴からすると異質というか、違和感を覚えます。しかし、小柳ルミ子との相性は意外に良かったのかも。
「わたしの城下町」は大ヒットし、小柳ルミ子の代表曲となります。
お祭りの夜
ファースト・アルバム「私の十二曲 小柳ルミ子 日本抒情歌集」が発売されるのは1971年9月25日です。ジャケットは「わたしの城下町」の別バージョンですね。

私の十二曲 小柳ルミ子 日本抒情歌集
9月25日というと、セカンド・シングル「お祭りの夜」の発売日でもあります。なのにアルバムには収録されていません。何故でしょうか?不思議ですね。

お祭りの夜
当時の映像で観れないのが残念ですが、前作に引き続き安井かずみが作詞を担当しています。
「お祭りの夜」は翌月に発売されたセカンド・アルバム「愛のカフェテラス・お祭りの夜」に収録されるのですが、このアルバムは変則というか企画もので、辺見マリとの抱き合わせになっています。

愛のカフェテラス・お祭りの夜
今では考えられませんが、今となってはそこが貴重とも言えそうです。まぁ、小柳ルミ子人気にレコード会社も慌てたということでしょう。
更に翌月の1971年11月25日には早くもサード・アルバム「お祭りの夜 ふるさと日本の唄」が発売されることになります。

お祭りの夜 ふるさと日本の唄・小柳ルミ子
3ヵ月連続でアルバムをリリースするとは!いや、いや、驚きです。
恋にゆれて
1972年に発売された4枚のシングルの作詞は、山上路夫となかにし礼が担当しています。1973年も4枚のシングルを出すのですが、最初のシングル「春のおとずれ」こそ山上路夫であったものの、あとの3枚は安井かずみが担当することになります。
安井かずみとのコンビで3枚目となるシングル「恋にゆれて」は5月25日に発売されました。

恋にゆれて
作曲は「わたしの城下町」「お祭りの夜」と同じく平尾昌晃ですがポップです。この曲、詩も曲もポップ。改めて言うのもなんですが、安井かずみも平尾昌晃もプロフェッショナルですよねぇ。
なかなか古い映像ではありますが、やはり当時の姿を見てみたいですよねぇ。残念ですが仕方がない!そんな時代だったのです。
十五夜の君
「恋にゆれて」は良い曲だと思いますが、この路線は好きではなかったのか、次のシングル「十五夜の君」では演歌路線に戻っています。

十五夜の君
しかし、まぁ、ここで注目すべきは曲調よりもジャケットです。
後に出るベストアルバムのジャケットを見てみましょう。

ヒット・コレクション
同じ写真を拡大して使っています。まぁ、だからと言って、どうってことはありません。しかし、13枚目のシングルとなる1974年10月発売の「冬の駅」は如何でしょう?

冬の駅
このアングルで押したかったのでしょうか?綺麗ですけどね。「十五夜の君」、そして次のシングルとなる「恋の雪別れ」を含む7枚目のアルバム「小柳ルミ子 あしたも日本晴れ」もこれですからね。

小柳ルミ子 あしたも日本晴れ
ポップなジャケットデザインにも関わらず「あしたも日本晴れ」という演歌なタイトル。方向性を決めかねていたのかもしれません。
恋の雪別れ
通算10枚目のシングルにして安井かずみとの最後のコラボレーションとなった「恋の雪別れ」。1973年11月10日の発売でした。

恋の雪別れ
同日発売のアルバム「あしたも日本晴れ」が横顔ジャケットなだけに、もしや「恋の雪別れ」もそうなのか?と期待と不安が入り混じりましたが正面の笑顔でホッとしました。
しかし、まぁ、曲は演歌なんですよね。
ポップ路線は捨てがたいですが、小柳ルミ子ファン、演歌ファンからすれば、これでなくちゃイカン!ということで、納得の1曲かと思います。この路線あればこそ、こうして息の長い歌手になったのでしょう。
改めて聴いてみると、安井かずみの洗練された詩が、一般的な演歌との違いを見せつけているように感じます。