篠原とおる
ヒロイン・アクション劇画のパイオニアといえば、それはもう篠原とおる。70~80年代は特に人気で多くの作品がテレビ・映画化されました。
そんな篠原とおる の代表作のひとつが「さそり」です。

さそり 女囚701号編
1970年に「ビッグコミック」に連載された「さそり」は、漫画家「篠原とおる」が、その独自なスタイルを確立した作品としても知られています。大ヒット!
内容は当時としてはとても過激でセンセーショナルを巻き起こしました。復讐ものと言うだけでも反社会的な作品ですが、主人公が殺人未遂で服役しているという当時としては異常な状況設定。しかも、リンチだなんだと暴力的ときては、もうPTAは黙っていないという代物ですね。

さそり
漫画のヒットを受けて、1972年から梶芽衣子の主演で映画化されたのですが、これもまたヒットし彼女の代表作となっています。
暴力もあればお色気もあるという、梶芽衣子の主演でシリーズ化された「さそり」。順にご紹介します。
女囚701号 さそり
まず最初に言っておかなければならないのは、代表作となっただけあって「さそり」での梶芽衣子は美しい!70年代の浅野温子といった感じですね。可愛くもあります。
その浅野温子じゃなかった、梶芽衣子が主演する「さそり」シリーズの第一作。それが1972年8月25日公開の「女囚701号 さそり」です。

女囚701号 さそり
ストーリーは、梶芽衣子 演じる女囚の松島ナミが刑務所を脱走し、裏切った男たちに復讐するといった内容となっています。
凄惨なシーンがお色気を伴ってやってきますので、飽きることがありません!

女囚701号さそり
荒唐無稽なポルノ映画になることを嫌った梶芽衣子が、漫画とはイメージを変えることを提案するのですが、それは主人公がしゃべらないというものでした。大胆ですよねぇ。結果、独特な作品となっています。
監督も素晴らしく、この作品には独特な演出があります。ガラス張りの床下からのショット、回転する室内セットによる場面転換、暗転などの画面構成などがそうですが、これは伊藤俊也が監督を務めた3作目まで続き、大きな特徴となっています。
女囚さそり 第41雑居房
シリーズ2作目「女囚さそり/第41雑居房」は、1972年12月30日に公開されました。前作から4ヶ月。早いですねぇ、それだけヒットしたということなのでしょう。

女囚さそり 第41雑居房
内容は、前作の続編になります。脱走した松島ナミが再び刑務所に入れられ、また脱走するという。警察は何をしているんだという話でもありますが、おかげで松島ナミは脱走の常習犯という有難くないキャッチフレーズを頂戴することに。
本作でも伊藤俊也 監督は冴えており、空想世界のような演出で楽しませてくれます。
女囚さそり けもの部屋
シリーズ3作目となった「女囚さそり けもの部屋」は、主人公の名前こそ同じですが、ストーリーは独立しており続編とは言い難い内容となっています。そりゃ、そうですよね。そう何度も何度も脱走と収監を繰り返すわけにはいきませんからね。警察の信用問題にも関わりますし。

女囚さそり けもの部屋
続編とは言い難いとはいえ、暗い過去を持つ主人公、松島ナミのイメージはそのままですし、内容も相変わらず辛い目にあい怨みを抱くというところはそれまで同様です。
なので、ファンは安心して観ることができますよ。
残念なことに本作を持って監督の伊藤俊也は降板となります。先鋭的、実験的な演出が映画会社に嫌われたというのがその理由のようです。
芸術性よりも娯楽性を求められたということなのでしょうが、いつの時代もクリエーターはそこで悩まされるんですね。しかし、しかしですよ。時間が経ってみれば、芸術的なものが娯楽性をも伴っていたということはよくありますからね。伊藤俊也監督の鋼板は返す返すも残念としか言いようがありません。
女囚さそり 701号怨み節
1973年12月に公開された4作目の「女囚さそり 701号怨み節」がシリーズ最終作となりました。監督は長谷部安春が務めています。長谷部安春は日活で活躍していた監督で、「女囚さそり 701号怨み節」は東映での1作目となります。

女囚さそり 701号怨み節
娯楽路線となったことで賛否が分かれ物議をかもした本作。最終作となったことから考えると否定派の方が多かったのでしょう。
松島ナミはこれまで同様のイメージ設定ですが、ロマンスが描かれているあたりが娯楽路線ならではといえますね。
それにしても松島ナミ。刑事殺し8件、脱獄3回(未遂28回)とは、どのような理由があったとしても死刑でしょう。ロマンスやってる場合ではないように思いますが。。。
ところで、「女囚さそり701恨み節」のポスターが最高なんです。

女囚さそり701恨み節
篠原とおるのイラストが冴えてます。なかなか入手は難しいですが、ファンならずとも欲しくなる逸品ですね。
さて、梶芽衣子主演の「さそり」はこれで最後ですが、リメイク版が1976年から制作され、多岐川裕美、夏樹陽子、水野美紀など錚々たる女優が松島ナミを演じていくことになるのです。「さそり」よ永遠なれ!ですね。