Blood
年が明けて1988年。「大江慎也 with ジョニーサンダース」名義ですが、ソロになって初のシングル「GREAT BIG KISS」が4月に発売されます。
ジョニーサンダースとは、そう、あのニューヨークドールズのジョニーサンダースです。「GREAT BIG KISS」とは、シャングリラスで有名な曲のカバーです。
GREAT BIG KISS
そして、2曲目の最後にちょっとだけ入っている「LIKE A VIRGIN」とは、そう、マドンナの大ヒット曲のあれです。
それから2か月後の6月に4枚目となるアルバム「Blood」が発売されます。
Blood
メジャーからインディに戻った途端にこれか!と目を覆いたくなるようなジャケットに、いきなり聴く気をそがれてしまいますが、このアルバムは素晴らしいです。
外見で人を判断してはいけないという格言の好例といえますね。「GREAT BIG KISS」で味を占めたのか、同じ系統である1曲目の「STOP THIS CRYIN’ INSIDE」から快調に飛ばします。
バックを務める1984との関係がこなれてきたといった感じです。大江慎也の精神状態は決して万全ではなかった、いえ、悪かったのですが、このアルバムを聴く限り、明るく、穏やかで、透明感があり、とても心地よいものに仕上がっています。相変わらず不安定なボーカルではありますが、だからこその唯一無二なのです。
PECULIAR
アルバムタイトル通り、どこか奇妙な5枚目のアルバム「PECULIAR」。1984とともにデート・オブ・バースが全面的にサポートした本作。アルバムジャケットからも分かるように、再びメジャー(徳間ジャパン)からの発売です。
PECULIAR
デート・オブ・バース+メジャーレーベルということで、どうなったかと言いますと、ニューオーダーですね。高級感があります。
やはり、良いスタジオで優秀なスタッフと共に作り上げると、コストはかかるのでしょうが、完成度は高くなります。ただ、気に入るかどうかはリスナーの好みの問題ではありますが。
この後、大江慎也はONESというバンドを結成。1990年5月にアルバム「WILL POWER」を発売した後、音楽業界から姿を消してしまいます。
精神的な病に加え、大腸を全摘出するという大病を乗り越え復帰するまでに15年も要することになります。
今にも崩れ落ちそうな、儚い夢のような、大江慎也が紡いだ歌の数々は、一度はまると抜け出せなくなります。