よしだたくろう
70年代初頭「フォーク界のプリンス」と呼ばれて脚光を浴び、今なお多くのミュージシャンにリスペクトされている吉田拓郎。
今更何の説明の必要もないでしょうが、デビュー当時は「よしだたくろう」と表記されていました。

よしだたくろう
吉田拓郎が「よしだたくろう」として活動していたのは1970年~1974年の約5年間です。初期。デビューから絶頂期までとも言えるかもしれません。まぁ、絶頂期と言っても吉田拓郎は今でも売れてますからねぇ。最初のピークと言った方が適切でしょうかね。
その期間に彼が作り出した音楽は、今聴き返してもグッと来るものがあります!
青春の詩
「広島フォーク村」名義の自主制作アルバム「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」に参加した後、エレックレコードからシングル「イメージの詩」でデビューします。もっともエレックもインディのはしりのレコード会社ですね。
よしだたくろうの代表曲のひとつですね。「イメージの詩」は1970年 6月 1日 に発売されています。プリンスだの貴公子だのと言われていただけあって、この頃の よしだたくろう はカワイイです。
2枚目のシングルジャケットを見ると思わず抱きしめたくなる的なカワイさです。

青春の詩
シングル「青春の詩」から約半年後の1970年11月1日にファースト・アルバム「青春の詩」が発売されます。バックを務めたのはマックスという今となってはよっぽどの音楽通でないと分からないと思われるバンドですが、当時はバンドがソロ・アーティストのバックを務めるということは珍しかったそうですよ。

青春の詩
「イメージの詩」も「青春の詩」も収録されていますが、もしかするとこのアルバムの中で吉田拓郎ファン以外にもっとも知られている曲は「雪」かもしれませんね。「猫」が歌ってスマッシュ・ヒットさせた曲です。
人間なんて
ライブアルバムを間にはさんで1971年11月20日、2枚目のスタジオアルバム「人間なんて」発売。当時は賛否あったようですが、結果としてこのアルバムによってフォークソングは市民権を得て、 よしだたくろう はアイドルのように扱われることになります。

人間なんて
日本の音楽界にとってもエポックメイキングとなったこのアルバム。なぜそのようになったかと言えば、それはもうアルバムから2か月後にシングルカットされた「結婚しようよ 」が大ヒットしたからですね。
当時のフォークソングといえば哲学的というか、深刻なテーマを持った歌ばかりだったなか、「結婚しようよ 」は等身大というか現実的なラブソングですからね。新鮮だったわけです。
「結婚しようよ」はアルバムもシングルも同じバージョンです。が、アルバムはエレックレコードから、シングルはCBSソニーから発売されているんですよね。
元気です。
CBS・ソニーレコード移籍後初のアルバム「元気です」。1972年7月21日の発売でした。このアルバムに先駆けて「旅の宿 」が先行シングルとして発売され、よしだたくろう にとって現時点では唯一のオリコン1位を獲得しています。
因みに「旅の宿」は、シングルとアルバムではバージョンが違います。ファンの方、要注意ですよ!なんですが、当時はこうしたことは珍しかったんですよね。
どちらもアコースティクでいい感じですが、シングルの方がポップなアレンジになっています。
「旅の宿」同様にアルバム「元気です。」もオリコン1位に輝き、よしだたくろう のキャリアの中でもっとも成功したアルバムとなっています。

元気です。
特筆すべきは、このアルバム1972年度の年間売上2位となっているのですが、1973年度の年間売上でも4位にランクされているんです。すごっ!
伽草子
1973年も よしだたくろう は2枚のシングルを発売しています。「伽草子」と「金曜日の朝」がそれですが、前年の「結婚しようよ」「旅の宿」とはまたちょっと雰囲気の違う曲です。
結婚して落ち着いたのか?というと、そんなことでもないようですが、どこかメルヘン。肩の力を抜いた感じが心地よい曲です。
シングルが素晴らしいと、当然アルバムにも期待するわけですが、1973年6月1日に発売されたアルバム「伽草子」は最高です。

伽草子
よしだたくろう も不機嫌そうな表情ですし、今見るとなんてことないアルバム・ジャケットですが、当時はこれがえらくカッコよく見えたんです。同じようなチェツクのシャツを買い求めたファンは数知れずでしたよ。
あ、それよりも収録曲「春の風が吹いていたら」で、奥さんとデュエットしています。これも新鮮でしたねぇ。
今はまだ人生を語らず
CBSソニーから最後となるアルバムが1974年12月10日に発売されます。同時に よしだたくろう 名義としても最後のアルバムです。
アルバムタイトル「今はまだ人生を語らず」。大きく出ました。私ごととは言えとてつもなく大きなスケールを持ったタイトルです。

今はまだ人生を語らず
ジャケット・デザインもカッコイイですね。ここまでの中では最高の出来栄えと言ってもいいでしょう。内容的にも捨て曲なしの大傑作!
森進一に提供した「襟裳岬」、猫に提供した「戻ってきた恋人」をセルフカバーし、「よしだたくろう&かまやつひろし」名義で大ヒットした「シンシア」も収録。
よしだたくろう の作品としては最も完成度が高いのではないかと思います。素晴らしいです。オリコン1位と商業的にも成功しています。
が、残念ながらこのアルバムは現在聴くことは出来ません。廃盤ではなく発売禁止となっています。残念ですよねぇ、これだけのアルバムが。今になって発売禁止とは。
残念といえば、「結婚しようよ」で文字どおり結婚した四角佳子と翌年離婚することになるのですが、その心情を綴った曲もアルバムには収録されています。
吉田拓郎
1975年になると、CBSソニーを離れフォーライフ・レコードを設立し移籍。よしだたくろう から吉田拓郎へと改名。四角佳子と別れ、その後「となりの町のお嬢さん(1975年 9月 25日発売)」と再婚します。
全てをリセットして70年代後半へと突き進んでいく吉田拓郎もまた魅力的ですが、70年代前半の よしだたくろう は別格も別格。まさに日本の音楽シーンを塗り替えました!