ミドルエッジ世代にとって、今も永遠の名作として心に刻まれている特撮ドラマ、『ウルトラセブン』。

『ウルトラセブン』ブルーレイBOX
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数々の名エピソードや個性的な宇宙人、それに子供向けとは思えないほどハードな内容、そして何と言っても、ウルトラ警備隊の基地から飛び立つウルトラホーク発進までのメカニズムの細かさ!
とても一言では語れないその魅力で、再放送の度に新たなファンを増やしてきた、この『ウルトラセブン』。
今回紹介するのは、放送当時「少年マガジン」に連載されていた、桑田次郎先生によるコミカライズ版だ。
テレビで放送される内容とは微妙に、あるいはかなり変更されていることが多いコミカライズ版なのだが、中でも伝説となっているのが、今回紹介する第2話『湖の秘密』におけるエレキングのデザインだ!

エレキングのソフビ。
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「ウルトラ怪獣名鑑」シリーズのエレキング。
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画像の様に、テレビに登場したエレキングはどちらかというと大人しそうで、そこまで狂暴な怪獣という印象は無い。その白地に黒模様のデザインからして、パンダ的なイメージを持つ方も多いのではないだろうか。
ところが、この桑田次郎先生が描くコミカライズ版『ウルトラセブン』に登場するエレキングが、実はトンでもないことになっているのだ!果たして、その驚くべき内容とは?
桑田二郎版『ウルトラセブン』概略

「少年マガジン」表紙
数ある「ウルトラセブン」のコミカライズ版の中でも名作とされている、この桑田次郎版『ウルトラセブン』は、当時の「週刊少年マガジン」に連載されていた作品。今回紹介する『湖の秘密』はその第2話にあたり、人気怪獣エレキングが登場する回として、ミドルエッジ世代なら良くご存じのはずだ。
今回テキストとして使用したのは、当時朝日ソノラマから出版されていたサンコミックス版『ウルトラセブン』全6巻。ちなみに1巻~4巻目までが桑田次郎先生による『ウルトラセブン』、5~6巻が一峰大二先生による『ウルトラセブン』となっている。
桑田次郎版『ウルトラセブン』内容紹介

コミックス表紙と衝撃の扉絵!
問題のエレキングが登場するのは、単行本の1巻に収録の第2話『湖の秘密』。
それにしても、本作の扉絵に登場しているエレキングの外見は、もはや完全に我々の知っているエレキングでは無い!果たして、どれほど狂暴な怪獣となっているのか?

子供たちが釣り上げた怪しい生物!
湖のほとりで釣りをしている子供たち。彼らが釣り上げたもの、それは気味の悪い謎の生物だった!
まだ子猫ほどの大きさだった謎の生物は、そのまま湖に逃げ去ってしまう。
その後、湖の周りで不可解な現象が起きたため、ウルトラ警備隊が出動!モロボシダンの前に、今や巨大に成長を遂げた怪獣エレキングが、湖の中から出現する!

これがコミカライズ版のエレキングだ!

まるで"エイリアン"並みに不気味なエレキング!

レーザー銃も効かないエレキング!
ウルトラアイを敵に盗まれて、セブンに変身出来ないモロボシ・ダンに迫るエレキング!テレビのエレキングとは違って、このコミカライズ版に登場するエレキングは、めちゃめちゃアグレッシブな上に強い!しかもキバをむき出しにしたその口は、正にエイリアンそのもの。

ミクラス対エレキング!
エレキングが口から吐くビームは、ミクラスも一撃で撃退するほど!その圧倒的な力の差に、もはや打つ手が無いモロボシ・ダン。

何と、空へと舞い上がったエレキング!

テレビ版では絶対見られない、エレキングの空中戦!
救援に駆けつけたウルトラホーク1号を追って、なんと空中高く飛び立つエレキング!完全にテレビのイメージとはかけ離れた強さを見せるエレキングの攻撃に、ウルトラホーク1号も窮地に陥ってしまう!

あまりに巨大なエレキングの攻撃に、セブンも防戦一方。
ピット星人からやっとウルトラアイを取り戻したモロボシ・ダンは、遂にウルトラセブンに変身!テレビと違って自分の数倍巨大なエレキングに戦いを挑むのだが・・・。口からビームを吐くエレキングとの戦闘力の差は凄まじく、火炎に包まれたままセブンとエレキングは湖に落下!

再び出現したエレキング!
エレキングと絡み合ったまま、湖に沈んでしまったウルトラセブン。
一度はエレキングを退けたかに見えたウルトラ警備隊の前に、再び出現したエレキング!「うむむ、ウルトラセブンはやられてしまったのか?」思わず自問自答するキリヤマ隊長の前に、ウルトラセブンの復活した姿が!
あれ、エレキングの顔が急に大人しくなって、テレビ版に変わっているような?

アイスラッガーで首を切断!
空を飛ぶエレキングの攻撃に苦しみながらも、ついにセブンのアイスラッガーがエレキングを切り裂いて倒したのだった。
しかし、前半であれほど狂暴だったエレキングの顔が、この終盤では全く変わっているのは何故だろう?
何故、エレキングの顔が途中から急に変わったのか?

左が終盤に登場したエレキング。右が狂暴なバージョン。
画像の通り、テレビ版とは180度違った恐ろしく狂暴な怪獣として登場する、コミカライズ版のエレキング。ところがコミカライズ版の終盤では、なぜかいきなりテレビ版と同じデザインに変更されているという不思議。それでは、何故にこの様な変更が行われたのだろうか?

連載当時の「週刊少年マガジン」に掲載された、問題のお詫び広告!
上の画像は、この『湖の秘密』が掲載された週刊少年マガジンに載っていた、"訂正とお詫び"の広告だ。
通常、単行本収録の際にはこれらの広告やお知らせは削除されてしまうため、掲載誌を入手して調べるしかないのだが、実は前半に登場した狂暴なエレキングの方が間違いであり、やはり終盤に登場したテレビ版と同じデザインのエレキングが正しかったことが、この広告で証明されている。
てっきり、桑田次郎先生の独自の発想とアレンジによるものだとばかり思っていた、この狂暴なエレキングの登場。果たして単なる間違いだったのか?それとも確信犯的にあえて凶暴にしたものの、後で読者からの投書やクレームが殺到したので元に戻したのか?
どちらにせよ、単行本収録の際にも修正されず、こうして今でも狂暴なエレキングが読めることは、我々ファンにとっては幸運だったと言えるだろう。

桑田二郎版『ウルトラセブン』のフィギュアシリーズ
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実際、以前に桑田次郎版ウルトラセブンのデザインのフィギュアシリーズが発売された際も、エレキングは狂暴な方のデザインではなく、テレビ版の方が製品化されているほど。ひょっとしたらこれは、桑田次郎先生にとっての黒歴史なのか?そんな深読みも出来そうな、この凶暴なエレキング。幸い、現在でも愛蔵版やこのサンコミックス版など、様々な形で入手可能なので、気になった方は是非入手して読んで頂ければと思う。