ペニーレインでバーボン(吉田拓郎)‐1974年
1974年にオープンした原宿のジャズ喫茶『ペニーレイン』。当時バーボンにハマっていたフォークの貴公子・拓郎の行きつけとなり、楽曲のモチーフとなるや否や、フォークの聖地扱いされ、70年代原宿を象徴する原宿の観光スポットとして人気を博しました。
その後、拓郎は『ペニーレインへは行かない』を発表していますが、“行かない”と決めたのは、本人曰く「今の原宿にはもう俺は似合わない」と思ったからなのだとか。70年代から80年代にかけて、凄まじい勢いで変貌を遂げた原宿にかつての面影はなく、もはやそこに自分の居場所はないと思ったのが真意だそうです。なんとも原宿に対する愛憎を感じさせるエピソードではありませんか。
風の街(山田パンダ)‐1975年
「昔はただの住宅街で、酒が飲める場所といえば『ペニーレイン』くらいしかなかった」とは、吉田拓郎の弁。しかし、拓郎がその酒を飲める唯一の憩いの場について歌ったせいで、全国からフォーク小僧が集い、ついには若者文化発祥の地にまでなってしまった原宿。
その原宿が、まさに住宅街から若者の街へと変遷する過渡期を描いたドラマが、東京原宿・表参道を舞台にした郷ひろみ・西城秀樹・桜田淳子出演の青春群像劇『あこがれ共同隊』であり、拓郎がプロデュースを買って出た山田パンダの楽曲『風の街』は、その主題歌として人気を博しました。

山田パンダ
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ちなみに『あこがれ共同隊』の映像を見ていると、街の容貌も雰囲気もまったく今と違うことがハッキリと分かり、この時代の原宿を愛する拓郎が失望するのも当然のように感じられます。
原宿キッス(田原俊彦)‐1982年

原宿キッス(田原俊彦)
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そして、時代は80年代へ。代々木公園横では、竹下通りのブティック・竹の子で購入したド派手な衣装に身を包んだタケノコ族がラジカセを囲んで路上で踊り狂い、表参道の裏路地では、50’Sファッション&グッズショップ『クリームソーダ』が人気となり、その店の常連たちは不良スタイルでキメるロックンロール族となって街を闊歩しているという、なかなかカオスな時代でした。
そんな当時の熱気渦巻いていた原宿を歌ったのが、このトシちゃん9枚目のシングル『原宿キッス』です。原宿でマブい女をナンパして、「恋し恥ずかし原宿キッス」をする…こんな刺激的な男女の出会いも、毎日のように繰り広げられていたのでしょう。
化粧なんて似合わない(岩崎良美)‐1982年
渋谷マルイとパルコ、NHKを通り過ぎ、代々木公園へと至る道・公園通り。そこを舞台にした岩崎良美の歌が、この『化粧なんて似合わない』です。「いつもの公園通り 駆けて行くわ 素顔で」と、当時デートスポットとしてもお馴染みになりつつあった渋谷にて、弾むような気持ちで彼との待ち合わせ場所へ向かう、ウブな女の子の気持ちを歌っています。
原宿メモリー(高田みづえ)‐1984年
アイドル歌手・高田みづえが発表した1984年の曲『原宿メモリー』は、「出てゆくの あなた出てゆくの♪」という歌詞から始まる『勝手にしやがれ』の女版みたいな歌謡曲。歌詞の内容も曲調も原宿感ゼロで、これを「六本木メモリー」「池袋メモリー」としても違和感なさそうな気も…。
涙 -Made in tears-(中島みゆき)‐1988年
同じ公園通りでも、岩崎良美の『化粧なんて似合わない』とはまったく違った価値観をもって歌に仕上げたのが、この中島みゆきのシングル『涙 -Made in tears-』です。
この一節だけ取ってみても、かつてみゆきの作品群を「私がせっかく乾かした洗濯物を、またじとーっとしめらせてしまう、こぬか雨のよう」と評したユーミンの言葉そのままな「じとーっと」とした世界観。1曲の中に6回も「男運は悪くなかった」と歌うあたりも辛気臭いったらありゃしません。でもそこが、いかにも中島みゆきらしくて癖になるのです。

涙 (中島みゆき)
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渋谷で5時(鈴木雅之&菊池桃子)‐1996年
菊池桃子とのデュエット曲としてシングル盤がリリースされた後も、松田聖子、中山美穂、工藤静香、ももいろクローバーZ、渡辺麻友など、時代を彩る様々なアイドルと歌番組でコラボされてきた鈴木雅之の名曲『渋谷で5時』。
楽曲製作の動機は、鈴木曰く「渋谷が若者の文化の発信地だということをアピールしたかった」とのことですが、今でも色褪せることも、時代錯誤感もなく、時のアイドルとのコラボで歌い継がれているところを見ると、リリースから20年以上が経った今も、渋谷が若者の文化発信地という事実は変わらないのだと理解できるというものです。

渋谷で5時(鈴木雅之&菊池桃子)
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(こじへい)