極道の妻たち

新・極道の妻たち 覚悟しいや
「あほんだら、撃てるもんなら撃ってみい!」のセリフで一世を風靡した映画「極道の妻たち」。略して「極妻」ですが、1986年の1作目から1998年までシリーズ化され全部で10本作られています。このシリーズ、ちょっと振り返ってみます。
記念すべき第1作「極道の妻たち」は1986年に公開されました。
主演はご存じ岩下志麻。もうこの人抜きに極妻を語ることは出来ません。が、しかし。当初の予定では一作目を岩下志麻、二作目を十朱幸代、三作目を三田佳子、四作目を山本陽子、五作目を吉永小百合と主役を変えてシリーズ化していこうと考えられていました。
ヤクザのイメージとは縁遠い有名女優を起用することで幅広い層に受け入れられることを願っての事でした。そして、1作目からその思惑は大当たりしたのです。
極道の妻たちII
翌年の2作目「極道の妻たちII」は、当初の予定通り主役を十朱幸代が演じます。当時は岩下志麻のヤクザの妻役というのも意外ではありましたが、「鬼畜」など結構キツイ役をやっていましたからね。それよりも意外と言う意味では十朱幸代でしょう。
極妻はシリーズとは言え、主演が作品ごとに変わると同時に監督も当初から1作ごとに変えていく方針でした。
「極道の妻たちII」の監督は土橋亨です。前作の監督であった巨匠:五社英雄を大ヒットしたにもかかわらず変えているのです。凄いですね。
極道の妻たち 三代目姐
3作目「極道の妻たち 三代目姐(1989年公開)」。主演は三田佳子ですが、イメージとしては岩下志麻に近い感じがします。
う~ん、三田佳子。悪くはない。悪くはないですが雰囲気が似ているからでしょうか、どうしても岩下志麻と比べてしまいます。そして比べてしまうと岩下志麻の線の太さが際立つんですよね。
因みにこの3作目、監督は降旗康男。相手役はショーケンこと萩原健一です。
極道の妻たち 最後の戦い
1990年公開の4作目「極道の妻たち 最後の戦い」の主演は、最初の計画にあった山本陽子ではなく、岩下志麻に戻り、このままシリーズ最後まで岩下志麻が務めます。
極妻と言えば岩下志麻というイメージが出来上がっていくわけですが、実は かたせ梨乃。岩下志麻が出演しなかった2作目、3作目にも出演し、シリーズでは岩下志麻と並んで8本に出ているんです。
監督の方はまたまた変わって山下耕作が務めています。山下耕作監督は、「博奕打ち 総長賭博」をはじめ、「兄弟仁義 」「日本女侠伝」「山口組三代目」などなどその筋の作品を多く撮っています。
それにしても岩下志麻の復帰は嬉しいところですが、山本陽子や吉永小百合の極妻も見てみたかったですね。
新極道の妻たち
5作目は「新極道の妻たち」。1991年の公開です。監督を「温泉こんにゃく芸者」や「まむしの兄弟 」「木枯し紋次郎」などの中島貞夫が務めています。
岩下志麻は極妻の役作りにジョン・カサヴェテス監督で1980年に公開された映画「グロリア」のジーナ・ローランズを参考にしていたのだそうです。
強い女のイメージはここからだったんですね。
新極道の妻たち 覚悟しいや
4作目「極道の妻たち 最後の戦い」の監督:山下耕作を再び起用して1993年に公開された「新極道の妻たち 覚悟しいや」。
山下耕作監督は岩下志麻が4作目で復帰した際に希望した監督だったそうです。
着物の着こなしや歩き方、立ち姿など役になりきるために岩下志麻は工夫を施していますが、苦労が現れているのが声のトーンでしょう。
ドスの利いた声といいますか、なるべく低い声で話すように努めており、一作目と比べるとはっきり分かりますが、「新極道の妻たち 覚悟しいや」の声のトーンは驚くほど低くなっています。
新極道の妻たち 惚れたら地獄
1994年公開の「新極道の妻たち 惚れたら地獄」。
監督の降旗康男も3作目「極道の妻たち 三代目姐」に次いで2度目の起用です。
1作目の五社英雄以外、外部からのスター監督を招くことなく東映の自前監督をあてがっている極妻ですが、企画の日下部五朗に持ち駒がなかったためなどど言われています。真偽のほどは確かではありません。
ヤクザの妻のイメージそのままに、劇中では煙草をスパスパ飲んでいる岩下志麻ですが、本来は非喫煙者だったのだそうです。極妻のおかげで一時期チェーンスモーカーになってしまったのだとか。
役者って大変ですね。
極道の妻たち 赫い絆
8作目「極道の妻たち 赫い絆」。すっかり常連となっていた かたせ梨乃が前作に引き続き出演していません。次作から復帰しますが、1作目ではまだまだ駆け出しといった感じの かたせ梨乃でしたが、濡れ場をものともしない体当たりの演技で女優の道を切り開いたんですね。
かたせ梨乃が出てこないのはいささか残念ではありますが、代わりと言っては何ですが主題歌も担当した八代亜紀が頑張っています!
意外な感じもしますが、なかなかのはまり役です。ファンの方は要チェツク!
極道の妻たち 危険な賭け
前作で主題歌も担当した八代亜紀に味を占めたというわけでもないのでしょうが、1996年の9作目「極道の妻たち 危険な賭け」では、主題歌を担当した工藤静香が出演しています。な、な、な、なんで!?「危険な賭け」とはまさにこのことか?
キムタクと結婚する4年前の出来事です。
劇場での収益としては1作目の1/3程度となっていた極妻でしたが、ビデオがバカ売れし、テレビ放映時には高視聴率を稼ぐという二次使用でも大きな収益をあげていました。
極道の妻たち 決着
いよいよ10作目、最終作の「極道の妻たち 決着」です。監督は前作に引き続き中島貞夫で、5作目の極道の妻たち 最後の戦い」でもメガホンをとっていましたからシリーズ最多の3本を担当しています。
当時の東映社長であった岡田茂の「これで10作になるのでやめます」という鶴の一声で余りにもあっけなくシリーズ終了となった極妻。
女性に足を運ばせたヤクザ映画としても日本映画史に大きな足跡を残したことは間違いありません。
根強いファンを持っていたことは東映ビデオ制作として早速翌年から:高島礼子主演で新たに極妻シリーズが始まることでも証明済みです。
2013年にも黒谷友香主演で「極道の妻(つま)たち NEO」が制作されたことは記憶に新しいですね。これからも新たにシリーズが作られていくのかもしれません。楽しみですね。