【後編】『昭和の中坊』誕生から次世代へ~中坊生活、昭和から見るか平成から見るか、男性から見るか女性から見るか~

【後編】『昭和の中坊』誕生から次世代へ~中坊生活、昭和から見るか平成から見るか、男性から見るか女性から見るか~

時間の流れが早い。 子供のころはもっとのんびりしていた。馬鹿なことを考える余裕があったと、通勤時間に思うあなた。“あの時代”を懐かしむ漫画から、今回、吉本浩二先生の名作『昭和の中坊』(原作・末田雄一郎)に着目する。また、昭和の漫画界の名物編集長を追う『ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』もご紹介。吉本先生の漫画への愛情を平成の世に引き継いだ新鋭、地球のお魚ぽんちゃん先生の人となりにも触れたい。さあ、夕焼けの彼方へ旅立とう。


左・吉本浩二先生、右・地球のお魚ぽんちゃん先生

地球のお魚ぽんちゃん(ちきゅうのおさかなぽんちゃん)とは何者か?

「下品です。漫画描いてます。男子高校生が好きです。 単行本『男子高校生とふれあう方法』発売中。漫画アクションにて連載してます。」(ツイッター自己紹介より引用)と語る、女性漫画家。
女子大生時代に末田雄一郎先生・吉本浩二先生の『昭和の中坊』に出逢って熱狂。自身もネットでシュールな漫画を発表し始め、注目される。双葉社で連載を執筆するようになり、書き溜めた作品は双葉社で『男子高校生とふれあう方法』(2016年)として単行本化。いま、もっとも2冊目の刊行が待たれる漫画家の一人である。

取材:尾之上浩司(https://shimirubon.jp/users/1672465

地球のお魚ぽんちゃん先生『昭和の中坊』にハマる



――大学の先輩から古い「漫画アクション」を借りて、吉本先生の『昭和の中坊』を知ったのですね。

**ぽん**
ガツンときて、一気に読みました。でも、知ったときは連載がもう終わっていたんですよ。

――当時、他にはどんな漫画を読んでらっしゃったんですか?

**ぽん**
『NARUTO-ナルト-』とか『銀魂』とか『浦安鉄筋家族』ですかね。王道のギャグ漫画しか読んでなくて。小中学生の頃は、少女漫画しか読んでなかったです。

――主に男の子が活躍する系。中でも『浦安鉄筋家族』は『昭和の中坊』に通じる内容ですね。ギャグ漫画が特にお好きなのですか?

**ぽん**
はい、最初に読んだのが『浦安鉄筋家族』でした。その後が『銀魂』で、一回、腐女子になって、大学に入ったらそういう熱が薄れ(笑)、そのときに『昭和の中坊』をお薦めされたんですよ。それが、自分が漫画家になったきっかけでした。

**吉本**
そうだったんですね(ひとごとのように)。

**一同**
(爆笑)

**ぽん**
当時は『昭和の中坊』の単行本が書店にはもう置いてなくて、古本屋をまわって探しました。私、何かひとつ好きになると、それだけ追うところがあって……。それまで青年漫画は読んでなかったんですが、これがきっかけで「漫画アクション」を買い始めたんです。

『昭和の中坊』の中の思い入れのあるキャラクター

――『昭和の中坊』のお気に入りのキャラクターを教えていただけませんか?

**吉本**
自分をキャラに投影していないつもりだったんですが、丸木は自分の要素が入っていると思います。

**ぽん**
私も今日は好きなキャラクターを選んできたんですが、私も丸木、好きです! すぐに顔が真っ赤になっちゃう所がいいんですよね。アイコラを作る回(第30話「できるのかな?」)の丸木が特に好きです。アイドル雑誌とエロ本を切り張りして、アイコラを作る作業をひたすら地味に続けているのですが、なかなかうまく出来なくて、丸木がニゴシに「真剣にやれ!」と切れられちゃうんです。するとアイドル雑誌は丸木がお姉ちゃんの雑誌を勝手に持ってきちゃってたもので、丸木が泣いちゃうという……。とても可哀相なんだけど、笑っちゃいました。

テンパると顔が真っ赤になるのがチャームポイントの丸木

**吉本**
それから矢島先輩が好きでしたね。

**ぽん**
矢島先輩、良いですよね! 痛々しい場面がけっこう多くって(笑)。それも愛おしいんですが(笑)。それより何より、めちゃくちゃちっちゃいんですよ。大好きなシーンがあるんです。矢島先輩が多摩川の橋を渡るシーンです。矢島先輩がニゴシたちにエロ情報を気持ちよさそうに自慢げに話していたんですが、転校生の肥後くんの方がエロ情報に詳しくて、矢島先輩が拗ねて多摩川を渡っていくんです。東京側から神奈川側にちっちゃい矢島先輩が歩いていくのを、ニゴシたちが呆然としながら見ているんですよね。そんな矢島先輩が可哀相で。私、地元が多摩川沿いなので、多摩川の橋の長さと距離感が分かるんです。大分長い時間、とぼとぼと歩く所をニゴシたちに見られてたんだなあ、と思うと、矢島先輩が可哀相で。

哀しき矢島先輩……

見られている矢島先輩……

**吉本**
意外と、ニゴシのお父さんが好きかも。

**ぽん**
私もニゴシのお父さんを選びました! 夜中にエロい番組を観ようとしてお母さんにバレそうになったニゴシをかばったり(第4話「動く裸の夜」)して、とにかく優しいんですよね。

昭和の時代にはそこらじゅうに居た、いい笑顔のお父さん

左・『昭和の中坊』担当時を振り返る平田昌幸「漫画アクション」編集長

**ぽん**
そして最後に、B組の竹光ははずせません(笑)。

ニゴシが窮地に立たされると、颯爽と回想シーンに現れる快男子・B組の竹光

――エロのために、誰よりも先に妄想の実現にチャレンジしている、伝説の男子ですね(笑)。

**吉本**
そうか、竹光がいましたね(笑)。

**ぽん**
竹光は、主人公のニゴシたちと違うクラスなんですよね。実際にニゴシたちと出会う場面は、最後まで無いですよね。常に回想シーンにしか登場しないんですよね。

――ぽんちゃん先生、『昭和の中坊』の好きな回を教えていただけますか?

**ぽん**
河原に落ちてたコンドームを毎日のように見に行く話(第10話「英雄コンドーム」)が好きです。セリフ回しが面白くて。セックスって“する”ものじゃないですか。ところが「セックスが行われている」や「セックスされてる」って表現が出てきて(笑)。彼らにとっては“未知なもの”なんですよね。だから、そういう言葉遣いになるんだなって。無知だからこその神がかった台詞ですね。

セックスが現実に存在することを知り、衝撃を受けるニゴシたち

**編集長**
これは末田さんの原作通りのセリフです。末田さんの言葉のチョイスも素晴らしさも、『昭和の中坊』の面白さの秘訣です。

**吉本**
僕も、この回がいちばん好きかも。

**編集長**
この回の原稿が上がったときの達成感が、半端なかったですよ。ラストで川に流れたコンドームをニゴシたちがひたすら追いかけるんです。そのシーンの吉本さんの演出がとにかく感動的で秀逸なんです。元ネタは映画『泥の河』です。

『昭和の中坊』屈指の名シーン

**吉本**
……そうでしたか、いや、ええと……。

**編集長**
「『泥の河』で行きましょう」って提案したのは吉本さんですよ(笑)。掲載誌を読んだ末田さんも、「これ『泥の河』ですね」って一発で見抜いて、さすがだな! と思いました。

**吉本**
ちょっと古めの映画が好きでして。

**ぽん**
それから駅に置いてある有害図書を捨てるポストからエロ本を盗もうとする話(第15話「ポストと嘘と有害図書」)のラストシーンがとても好きです。駅員さんに見つかっちゃって。ニゴシは「漫画が捨ててあるって聞いたんで、拾いに来たんです!」と嘘をついて逃れようとするんですよね。ところが駅員さんが「大人」で、ニゴシにいらない漫画雑誌をあげるんです。その中には大人の漫画雑誌も混ざっていて、ニゴシは大人漫画の世界を知るんです。その姿が、『昭和の中坊』を知り、「漫画アクション」を知り、世界が広がった当時の私の姿と被るんです。

大学生当時の記憶が甦る、ぽんちゃん先生思い出のシーン

**吉本**
そうでしたか……。そんな風に読んでいただけるなんて、うまく言えないのですが、とても嬉しいです。

尊敬する吉本先生への緊張も解けてきて、ここからエンジン全開になるぽんちゃん先生

**ぽんちゃん担当**
(急に話しに入ってきて)、ぽんちゃん、「今日は長年知りたかったことをいっぱい聞くぞ~」って張り切ってたじゃないですか。どんどん質問しましょうよ!

**ぽん**
あ、はい、まずは29話「丸木正一郎屋上事件」の扉のイラストなんですが、なんで丸木が胴上げされているイラストなんですか?

問題の扉イラスト

**吉本**
あ、はい、これは丸木が初めてヒロインの岩渕と話しをして、男泣きする回ですね。

**編集長**
「漫画アクション」掲載時には、「丸木、おめでとう! とにかくおめでとう! 何がめでたいのかは、お話を読んでね」というキャッチが入っていたんですね。

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