あなたは、歌手・夏木マリを知っていますか?
妖艶で迫力のある演技で映画・ドラマ・舞台で大活躍を続けている夏木マリ。
我々団塊ジュニア世代には、大女優というイメージが強い彼女だが、芸能界にデビューしたのも、最初に知名度を高めたのも歌手としてだった。
清純派アイドルとしてデビューした頃、セクシー歌手としてブレイクした頃、そして近年の歌手活動。
波乱万丈でエネルギッシュな歌手・夏木マリの活動について紹介します。
1971年、19歳の時に歌手デビュー
東京都豊島区生まれで、埼玉県の現・大宮市で育った夏木マリは、1971年19歳の時に本名の中島淳子名義で「小さな恋」にて歌手デビューした。
アメリカの女性ロックシンガー、ジャニス・ジョプリンのような曲を歌いたかったが希望は受け入れられず、清純派アイドルとしてのデビューであった。

『小さな恋』中島淳子

日本初のプロモーションビデオ?
しかし、売れずにキャバレー回りの日々が続く不遇の時代を過ごすことになったという。
1973年、夏木マリとしてセクシー歌手路線に転向。
1970年頃から辺見マリ、山本リンダ、安西マリアなどセクシー系の歌手が台頭。
その流れに合わせ、清純アイドル路線からセクシー歌手に転向し、本名から「夏木マリ」に名前も変えて再デビュー。
1973年6月15日に発表した「絹の靴下」での、妖艶振り付けや指をカモンカモンさせるフィンガー・アクションが話題になり大ヒットを記録。
さらに、セクシー路線を踏襲した「お手やわらかに」「夏のせいかしら」などもヒット。
歌手・夏木マリの存在感は大きくなっていく。

『絹の靴下』夏木マリ
セクシー路線が成功、知名度を高めた夏木マリに演技の仕事も来るようになり、女優として大成しました。
と、いうような簡単なストーリーにはならなかった。
当時は歌番組が多かった時代であり、分刻みの過密スケジュールで寝ない・食べない生活に体が持たずにダウン。
「低色素性貧血」という血液中の鉄分が極度に減少する難病に掛かってしまう。
一時は命も危ぶまれるほどで、ヒット曲が生まれてこれから波に乗ろうとする大事な時期に、3カ月の入院生活を余儀なくされた。
体調の回復後、活動を再開したものの、失った勢いは戻らず再びキャバレー回りの生活に…。
ショーに魅かれて、舞台の世界へ
ドラマでは「Gメン'75」や映画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に出演するものの、大きな話題になることはなく、キャバレー周りが約8年に渡って続くことになった。
そんな夏木マリに転機が訪れたのは1980年、28歳の時であった。
キャバレー周りから抜け出したいとオファーを受けた日劇ミュージックホールでのショーだった。
トップレスのダンサーたちの高いプロ根性に触れ、仕事に対する意識が変わり舞台の仕事を始めるようになっていく。
1982年、夏目雅子主演の大ヒット映画『鬼龍院花子の生涯』に出演が決まる。
これは夏木のショーを観た監督の五社英雄がその存在感に魅せられて起用した大抜擢であった。

映画『鬼龍院花子の生涯』での夏木マリ
以降、映画『里見八犬伝(1983年)』やドラマ『毎度おさわがせします(1985年)』など女優としての幅広い活動が広がっていく。
ここからの映画・ドラマでの活躍はご存知の通り。
我々世代にとっては『里見八犬伝』の妖艶な演技がファーストインパクトであった方も多いのでは。
磨き抜かれた表現力を歌手としても発揮
多くの作品に出演し演技力を称賛されながらも、演技の下積みが無く自分が演劇を好きなのか嫌いなのか分からなくなったという。
さらなる “自分らしい表現”を追求するため、夏木マリは1990年単身ニューヨークへ渡る。
右も左もわからぬ環境に飛び込み、様々な知識を吸収しながら自ら発信することへの意欲を持ち始めていく。
そして1993年には、企画から構成・演出・出演まで全てを手がける舞台表現『印象派』を発表。
以降、2006年までに80以上のステージを重ね、国内はもちろんドイツ、フランス、イギリス、ポーランドなどで海外公演を行い、高い評価を得ていく。
ストイックに求め続けた表現力は、歌に関しても発揮されていく。
1995年には、ピチカート・ファイヴの小西康陽からのアプローチを受けミニアルバム『九月のマリ-』を発表。
小西康陽による完成度の高いジャズサウンドと夏木マリのディープなヴォーカルは、若者からの支持を得て渋谷系チャートでNo.1を獲得、いわゆる「渋谷系」の先駆けと言われている。
歌詞の情景をリアルに伝える表現力と、退廃的で哀愁漂う独特の歌唱は、歌というより一つの短編映画のようだと絶賛される。
2006年、子供のころからバンドのボーカルが夢だった夏木は日本を代表する名パーカッショニストで後に夫となる斉藤ノヴらとブルースバンド『GIBIER du MARIE』(ジビエ ドゥ マリー)を結成。
アルバムのプロモーションビデオの監督も務める。
女優と言われるのは嫌い!プレイヤーでありたい。
歌手や俳優、声優として、舞台、映画、テレビ、エッセイなどと多彩なステージで才能を発揮する夏木マリだが、肩書で女優と言われるのは嫌いだと公言している。
公式プロフィールなどでは女優ではなく俳優と表記されている。
「1つや2つの作品に出たぐらいで女優と言われるような人たちとは違う」というプライドと、「本気度と遊び心がある、そのぐらいの余裕がある仕事の仕方をしたい」というコダワリから「プレイヤー」という言葉を好んでいるという。
60歳を越えても益々エネルギッシュに。
キャリア44年目となる2015年には62歳で初めての全国ライブハウスツアー「夏木マリ MAGICAL MEETING TOUR Live & Talk 2015」を敢行。
翌2016年には華原朋美、土屋アンナ、シシド・カフカ、LiLiCoと女性コーラスユニット『and ROSEs』(アンド・ローゼス)を結成。
世代や分野を超えたコラボレーションは大きな話題となった。
表現の求道者・夏木マリの歌を堪能しよう
リズム感や声量では測りきれない魅力を感じられるのは、夏木マリが普通の歌手ではなく、挫折や苦労を繰り返しつつ、あらゆる分野で挑戦を続けた波乱万丈な芸能生活の全てが唯一無二の表現力として、歌に注ぎ込まれているからではなかろうか。
いくつになっても『カッコいい大人の女』と男女問わず尊敬を集める夏木マリ。
ドラマや映画などで活躍を続けている夏木マリの演技を楽しみつつ、彼女が求め続けた「表現する」ことの答えが凝縮されている歌の方も是非堪能してもらいたい。
ベストアルバムがキャンペーン中♪
小西康陽がプロデュースを手がけた『九月のマリー』(1995年)と『ゴリラ』(1996年発売)。
そして夏木マリ自身が企画から構成、演出、出演まで全てを手がける舞台表現〈印象派〉を音にした『印象派』(1997年)のアルバム3枚が1枚に全て収められたベストアルバム『印象派コレクション』がヴィレヴァンでキャンペーン中。
凄みすら感じさせる夏木マリの歌を堪能する絶好の機会が到来♪
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