突然だが、いつも観ているアクション映画でこんなシーンに覚えは無いだろうか?
そう、過去のアクション映画で何度と無く繰り返されて来た、もはや映画ファンにはお馴染みのこの設定。
観ている方も手に汗握り、イヤでもサスペンスが盛り上がると言う、アクション映画には欠かせない重要なシーンだ。
ところが先日、たまたまこの手の映画を見ていた時、ふとある疑問が涌いた。
「そう言えば、この設定を最初に持ち込んだ映画って、何だったのか?」
そこで今回は、アクション映画における爆弾解体シーンの定番設定、通称「赤と青のジレンマ」のルーツについて紹介してみようと思う。
果たして、この定番のシーンを最初に持ち込んだ映画とは何だったのだろうか?
実は意外にも、そんなに昔の映画では無かった?
「赤のコードを切るか、それとも青のコードを切るか?」このスリリングな展開を最初に持ち込んだ映画は何か?
実はこの疑問に関しては、既に明確な答えが出ている。
この「赤と青のジレンマ」を最初に映画で描いた作品は、1975年日本公開のリチャード・レスター監督によるイギリス映画、「ジャガーノート」だとされているのだ。

映画「ジャガーノート」日本版ポスター
ここまで読んで、「あれ、007ゴールドフィンガーの方が先じゃ無いの?」そう思った方はかなりの映画マニア!

「007ゴールドフィンガー」日本版ポスター
そう、確かに「ゴールドフィンガー」のクライマックスでも、爆発寸前での爆弾解体シーンは出て来るし、タイマーギリギリで解除成功!となるのだが、残念ながら赤と青どちらを切るか?という描写では無いのだ。
実は「ゴールドフィンガー」の場合、他の色も混じった複数のワイヤーの束をボンドが引き抜こうとした時、脇から爆弾の専門家が現れて、おもむろにタイマーの進行を止めるスイッチを切る、という展開。しかもタイマーの数字が僅か7秒前で止まって、カウンターの表示が「007」になるという素晴らしさ!
この「赤と青のジレンマ」、恐らく「リーサルウェポン3」の冒頭シーンが一番有名で記憶に残っている方が多いと思うのだが、その他に過去作での爆弾解体シーンでは、かなりの頻度でこの描写が登場する。

「ブローンアウェイ復讐の序曲」日本版ポスター
例えば「ブローン・アウェイ復習の序曲」内の大学に仕掛けられた爆弾の解除シーン。
その他にも「スピード」や「ザ・ロック」に「ライブワイヤー」などなど。
ちなみに「ブローン・アウェイ復習の序曲」では赤か白のコードとなっている。
最近では、正月にテレビで放映されたドラマ「都庁爆破!」の様に、爆弾解除のためのパスワードを打ち込むという展開も一般的となって来ている。この場合はパスワードを打ち込める回数に上限が設定されていて、「残りあと1回!」という展開でスリルを盛り上げる場合が多い。
では、何故これほどまでに「赤と青のジレンマ」が映画界で流行することになったのだろうか?
何故この「赤と青のジレンマ」が、こんなに流行し一般化したのか?

映画「ジャガーノート」より
このシーンが定番化した理由、それは爆弾解体の専門家による作業が最終段階まで進んだ時、最終的に長年のカン、或いは運に頼らざるを得ないという点にある。知識や技術の及ばない部分で、最後の決断を迫られるというそのサスペンスの盛り上がりと、一か八かのギャンブルに出ると言うそのスリルが、これだけ一般に浸透した理由だろう。もちろん、ここで間違って爆発してしまっては映画が成立しないので、普通は見事に正しい色を切って爆弾は解除!という結果に終わることになるわけだ。

「リーサルウェポン3」
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但し、コメディ映画やパロディ映画などでは、この設定を逆手に取って大爆発という場合もある。前述した「リーサルウェポン3」などは、アクション映画でこれをやった、非常にレアなケースだと言えるだろう。
更に、最後の段階でこうした意地の悪い選択を用意することで、犯人の異常性や偏執的性格を表現する効果もあるなど、スリルを盛り上げる以外にも映画自体に深みを与える効果は極めて高いと言える。
最後に
こうして駆け足で振り返って来たが、今まで映画を見ていて当たり前だと思っていた定番シーンでも、実はそのスタートがある映画が「発明」した物だったことが判る。皆さんも機会があれば、お気に入りの映画から是非こうした発明を見つけてみては?