世紀の決戦の裏側を描いた実録マンガ「真剣勝負!猪木VSアリ」! その衝撃の内容がスゴい!

世紀の決戦の裏側を描いた実録マンガ「真剣勝負!猪木VSアリ」! その衝撃の内容がスゴい!

1976年の6月26日伝説の「アントニオ猪木VSモハメド・アリ」の一大決戦が行われた。日本中の期待を一心に集めたこの試合!今回紹介するのは、猪木VSアリ戦の2ヶ月後に掲載された実録マンガ、「真剣勝負!猪木VSアリ」!


1976年の6月26日。それは、ミドルエッジ世代の全男子にとって大事件となった、あの一大イベントが行われた日。
そう、そのイベントこそ、伝説の「アントニオ猪木VSモハメド・アリ」の一大決戦だ!

「猪木vsアリ戦」のポスター 2種

日本中の期待を一心に集めたこの試合!きっと皆さんも、当時テレビの前に釘付けになっていたのでは?
ただ、残念ながら多くの観客が期待した激しい格闘や、派手な見せ場にはならなかったため、やれ「八百長試合」だの「世紀の凡戦」など、当時のマスコミや一般観客の評価は散々な結果に・・・。
確かに対戦前の記者会見で、猪木がアリに松葉杖を送ったことでアリが激怒!猪木に掴みかかったなど、リング外での話題ばかりが先行した感のあるこの試合。

もちろん、その後この試合にまつわる様々な裏事情や、関係者の証言が次々に公にされたことで、今では厳しすぎるルールの中でお互いのベストを尽くした名勝負だった、との評価に固まって来ているのだが、どうしてもどこかスッキリしない感じがするのも事実。
そこで今回紹介するのが、猪木VSアリ戦の2ヶ月後に掲載された実録マンガ、「真剣勝負!猪木VSアリ」だ。

試合直後に掲載された作品だけに、取材調査が実にしっかり出来ており、この段階で既に試合の本質を伝えているので、資料的価値から見ても実に貴重な作品だと言える。
ただ、掲載されたのが同じ少年マガジンでも月刊の方だったため、当時このマンガがどれ程読まれたかはちょっと疑問?しかも未だに単行本には収録されておらず、幻の作品となってしまっている本作。
今回は、時代を先取りしていたかの様なこの名作マンガを、是非紹介したいと思う。

マンガ「真剣勝負!猪木VSアリ」概略

以前紹介した「アグネスラム物語」と同じ、「月刊少年マガジン」1976年9月号号に掲載されていた。

マンガ「真剣勝負!猪木VSアリ」掲載誌表紙

本作が掲載されたのは、以前紹介した「アグネス・ラム物語」と同じ、「月刊少年マガジン」の1976年9月号。

全40ページで掲載された本作の作者は、この次の10月号で映画「キングコング」のコミカライズを描くことになる、田上憲治先生。1973年から1975年まで週刊少年マガジンで連載された「紅の挑戦者」や、1978年から同雑誌に連載された「格闘技世界一・四角いジャングル」など、格闘技マンガには定評のある少年マガジンだけに、本作の内容の信憑性にも信頼がおけるところだ。

この世紀の対決について、もっと詳しく知りたい方は以下のリンクからどうぞ。

アントニオ猪木対モハメド・アリ - Wikipedia

マンガ「真剣勝負!猪木VSアリ」内容紹介

「衝撃のインサイド劇画!」と銘打っての掲載だけに、知られざる当時の裏事情が満載の内容となっている。
それにしても、アリの顔が全く似ていない・・・。

「真剣勝負!猪木VSアリ」扉絵

物語は試合の10日前、運命の調印式から始まる。

早くも炸裂するモハメド・アリのビッグマウス!

「俺は弱気になっている・・・」猪木の意外な心の内が明らかに!

同じ格闘家として、アリの実力を認めた猪木。

本作の物語は、この世紀の一戦の10日前に行われた調印式から幕を開ける。
早くも得意のビッグマウスで猪木を挑発するアリ!対する猪木は、この挑発もアリの確かな実力に裏付けされた自信の現れと見て、慎重に行動するのだが・・・。

次第に不利な状況になる中、果たして猪木に勝利の可能性は残されているのだろうか?

度重なるルール変更に翻弄される猪木サイド!

あくまでも、自身が世界最強の格闘家だと証明するための真剣勝負と考える猪木と、単なる観客へのエキジビジョンマッチだと考えていたアリ。この二人の認識のズレが、後に様々なトラブルを巻き起こすことになるとは・・・。
この試合に己のプロレス選手生命の全てを賭ける猪木に対し、アリの方もエキジビジョンで自分の体を壊されては堪らないと、試合の直前まで度々のルール改定や変更を要求してくる。
その中で最大限に自身の力を出し切った結果が、当時のあの試合内容だった訳だが、本作では試合の駆け引きよりも、むしろ猪木自身の内面や心の葛藤を深く描いているのが興味深い。

猪木が昔世話になった、アメリカの有力プロモーターからの忠告の電話が。

謎の男からの電話とは?

実は本作で一番重要なのがこの部分。アメリカの影の実力者から掛かってきた、電話のエピソードだろう。
どこと無く「ドン・キング?」的な人物が猪木に電話をかけてくるのだが、彼から暗に匂わされるのは「これはガチの勝負ではなくて、ショーなのだから」ということ。つまり、やんわりと「八百長試合」を提示されているのだが・・・。
果たしてこの部分、どこまで本当なのか?今となっては不明だが、脚色だとしても、こうした描写が含まれていることは、非常に異例なことだと言える。

遂に猪木の生の感情が明らかにされる!

正に燃える闘魂!猪木がこの一戦に賭ける決意は固い!

アメリカの大物からの電話にも屈すること無く、猪木は一世一代の大勝負に臨む!
世間の冷たい目を跳ね返すため、そして自分こそが世界最強の格闘家だと証明するために!

これがルールの盲点を突いた猪木の秘策だ!

一瞬の勝機に賭ける猪木!

猪木に容赦無く浴びせられる観客の罵声・・・。

いよいよ始まった猪木VSアリ戦!
いきなりマット上で仰向けに寝そべった猪木。本作ではこの戦法に行き着くまでの経緯が描かれているため、「成る程、そうするしか無かったのか!」と正当な評価が出来るのだが、リアルタイムで試合を見ていた人々の反応は、このマンガの中の観客と同じだったのだ。

アリにも卑怯者呼ばわりされ、観客の嘲笑の的に・・・。

観客の嘲笑やヤジを受けながら、それでも猪木は絶望的に不利なルールの範囲内で最善を尽くし、一瞬のチャンスを待つのだが・・・。

猪木の予想とは裏腹に、アリの足は15ラウンド耐え続けた。
周囲の人間は気付かないが、実際に戦っている猪木には、アリの凄さが次第に恐怖に感じられていたのだった。

遂に最終ラウンド!

アリの迫力と隙の無さに、どうしても間合いに踏み込めない猪木。

最終ラウンドだ、攻めるしか無い!だが・・・。

この試合の裏側や真の凄さを、当時の観客は理解出来なかったのだ。

遂に終了、両者引き分けの結果に・・・。

遂に迎えた最終ラウンド!
もはや後がない猪木は、アリの懐に飛び込もうと試みるのだが・・・。
意外にもここで明らかになるのは、アリの隙の無さに為す術もない猪木の姿!何も出来ず立ち尽くす猪木に、無情にも試合終了を告げるゴングの音が鳴り響く。
「30万返せ!」の観客の声が実にリアルなこのページ。恐らくテレビの前の視聴者も同じ気持ちだったことだろう。
こうして世紀の対決は、両者にとって不完全燃焼な形で幕を閉じることになってしまったのだ。

全力を尽くして闘った、しかし・・・。
試合後の控室でのインタビュー、猪木の目に光る物が。

余りに弱々しい猪木の姿。

試合直後に書かれたのに、この暗いラストはスゴい!

そして迎える本作のエンディング!
このラストで語られるのは、あまりに人間臭い猪木の本音の吐露だ。
試合直後の控室。ここでの猪木のインタビューにもある通り、観客を楽しませるためのエキジビジョンマッチとして、予定調和に終わらせることを良しとしなかった、猪木の格闘家としてのプライドがここで吐露される。
自分としては、がんじがらめのルールの中での精一杯のファイトだった。それだけは観客に分かって欲しいが、今となってはすべては言い訳にしか受け取られない。実にリアルなこの猪木の発言を当時の読者に伝えただけで、本作には大きな価値と意味があると言えるだろう。

いつしか試合から41年の月日が流れ、現在では歴史がこの試合に正当な評価を下してくれている。だが、当時の状況をリアルタイムで伝えながら、世論に迎合すること無く、その真実と試合への正当な評価を伝えようとした本作の価値と資料性は極めて高い。
今となっては雑誌で見るしか無い、実録格闘技マンガの傑作!それがこの「真剣勝負!猪木VSアリ」だったのだ。

最後に

いかがでしたか?
試合直後は、本編中の観客の描写にも良く現れている様に、「世紀の凡線」との見方が多かった、この「猪木VSアリ戦」。
このマンガが見事なのは、猪木が何故あのような戦法を取らなければならなかったか?その部分をきちんと描いている点だ。
特に猪木側が、もはや後に引けない背水の陣で試合に臨んでいた様子が詳しく書かれているのは貴重!試合直後のこの段階で、正当な評価を与えようとした本作のその真摯な姿勢は、もっと評価されるべきだろう。

この世紀の対戦実現までの金銭的問題やルールについての交渉など、猪木側の粘り強い努力により奇跡の実現をみたことが、このマンガを読むと非常によく分かる。
当時のスポーツ新聞やプロレス専門誌だけでは無く、子供達が読むマンガ雑誌でも、こうした後追い情報がフォローされていたことは、我々ミドルエッジ世代にとっても実に幸運だったと言えるだろう。

あれから実に41年の歳月が流れ、モハメド・アリも昨年の6月3日、惜しくもこの世を去ってしまった。
今夜は久々に、ネットにアップされている試合映像を見返してみてはいかがだろうか?

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