1989年、TBSテレビ系「平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国」(通称:イカ天)に出場、メンバーの卓越したテクニックと、ネズミ男に扮した鈴木の奇抜な衣装が話題になった人間椅子。
以降28年、ロックに人生を捧げ続けて、近年では世界的ロックイベント「OZZFEST JAPAN」に出演、筋肉少女帯とのコラボシングルを出すなど益々精力的に活動している。
その人間椅子でギターとヴォーカルをつとめ、今年の2月1日には自伝「屈折くん」を刊行し類稀なる文才を発揮した和嶋慎治氏に、オカルトやミステリーに惹かれたきっかけ、「イカ天」時代の想い出、バンド名の由来にもなった江戸川乱歩作品について、さらに若いミュージシャンや他アーティストのカバーについて想うことまで、とことん語って頂いた。
和嶋慎治(わじま しんじ)
オカルト・ミステリーについて
1980~90年代は空前のオカルト&ミステリーブームで、ミドルエッジ世代は超能力・UFO・怪奇現象など不思議なことにワクワクする幼少期を過ごしました。
月刊『ムー』を愛読されており、オカルトやスピリチュアルの分野へ強い関心を示されている和嶋さんにオカルトについてお伺いします。
ミドルエッジ編集部
オカルト的なものに惹かれたのは何がきっかけでしたか?
和嶋慎治もともとポー(エドガー・アラン・ポー)などの怪奇小説が好きだったこともありますが、直接的には、矢追純一さん制作の「木曜スペシャル」。
ユリ・ゲラーとUFOにノックアウトされました。
ミドルエッジ編集部
80~90年代は数多くのオカルト的な児童向け書籍やテレビ番組がありましたが、よくご覧になられていたのですか?
好きな本や番組があったら教えてください。
和嶋慎治怪奇・探偵小説は、「シャーロック・ホームズ・シリーズ(偕成社版)」と「少年探偵団シリーズ(ポプラ社版)」で入り、後にポーやラヴクラフトを知りました。
特に好きだった本は、少年少女講談社文庫の『怪談』1~3巻。
第2巻の辰巳四郎のイラストが秀逸。
ミドルエッジ編集部
数多くあるミステリーで、どれか一つだけ真相を知ることができるとしたら、何が知りたいですか?
和嶋慎治地球空洞説。地球の内部はどうなっているのか。
江戸川乱歩について
ミドルエッジのユーザーは、少年探偵団シリーズなど江戸川乱歩作品に慣れ親しんだ世代です。
バンド名を『人間椅子』にしたり、アルバム名を『怪人二十面相』としたり、
江戸川乱歩と切っても切れない関係である和嶋さんに江戸川乱歩作品についてお尋ねします。
ミドルエッジ編集部
江戸川乱歩と人間椅子の作品に共通するおどろおどろしい雰囲気は、都会化・近代化された東京ではなかなか感じにくいと思いますが、青森県から上京された和嶋さんはどのように感じられていますか?
和嶋慎治乱歩作品には、大正~昭和初期の上野・浅草あたりのモダンな都会の空気が流れているように思います。
もちろん、過去も現在も青森にはないものです。
僕はそこに、おどろおどろしさというより、きっとロマンを感じているのだと思います。
ミドルエッジ編集部
和嶋さんが選ぶ江戸川乱歩作品(書籍)のベスト5を教えてください。
和嶋慎治「二銭銅貨」 「屋根裏の散歩者」 「鏡地獄」 「押絵と旅する男」 「蟲」 (発表年順)
ミドルエッジ編集部
2時間ドラマで放送されていた江戸川乱歩作品ではヌードの登場も多く、子供では堂々とエロに触れることができる数少ない楽しみでした。
人間椅子もミステリーと共にエロスをテーマにしたものが多いですが、やはりミステリーとエロスは切っても切れない関係なのでしょうか?
和嶋慎治ミステリーとエロスというより、死とエロスが切っても切れない関係にあると思います。生を際立たせるために、死とエロスは両輪のように作用するのではないでしょうか。
純然たるミステリーには、むしろエロスは不要であるように思います(例:ポーの「黄金虫」)。
ミドルエッジ編集部
江戸川乱歩の作品は映画やドラマ、アニメなど長年に渡って映像化もされています。
お好みの作品はございますか?
また、もし和嶋さんが映像化を手掛けるとしたら、明智小五郎と怪人二十面相役の俳優は誰を選びますか?
和嶋慎治すみません、個人的に乱歩のよさは短編小説(散文)にこそあると思っているので、映像化作品にはあまり興味がありません…。
対し、横溝正史は視覚化しやすいといいますか、優れた映像作品がたくさんあるように思います。
したがいまして、自ら小説のイメージを壊すような作業はしたくないのでした。
「イカ天」とバンドブームについて
人間椅子といえば、やはり鮮烈な印象を残したイカ天の話題は欠かせません。
出演当時の状況や、他の出演アーティストについてお聞かせください。
ミドルエッジ編集部
「イカ天」に出演したきっかけはなんでしたか?
和嶋慎治その頃、人間椅子はライブハウスに出始めたばかり。動員を増やしたくてもどうしていいか分からずにいたところ、「イカ天」の放送がスタートします。練習スタジオで、「これだったら僕らも出れそう」という話になり、応募~採用~出演という流れでした。
ミドルエッジ編集部
出演時は緊張されました?出演時の想い出を教えてください。
和嶋慎治お客さんの前でのライブではありませんでしたから、それほど緊張しなかったように思います。
登場した際、僕がバンドコンセプトを滔々と述べるのを見て、後で鈴木君が「和嶋ってけっこうしたたかだな」と言ったのを覚えています。
ミドルエッジ編集部
1980年代終盤から1990年代前半にかけてバンドブームで次から次へと色んなバンドが登場しました。
人間椅子は独特なので他のバンドと似ているとは言われなかったと思いますが、同世代のバンドに嫉妬したり影響を受けたりしたことはありましたか?
和嶋慎治とにかく「たま」には驚きました。
それまでの、バンドはこうあるべきだ、みたいな概念を軽やかに脱ぎ捨てたかのようなアンサンブル、圧倒的な才能。もうまったくかなわないと思いました。
また、「THE NEWS」には、ひたむきさ、反骨精神といった点で影響を受けました。
ミドルエッジ編集部
「イカ天」ブームが大きくなり過ぎたために、「イカ天バンドなんて…」と軽く見られる傾向があったと聞きます。
和嶋さんもそういった風当たりを感じたことはありましたか?
和嶋慎治イカ天バンドで一括りにされてしまうのが、イロモノ視されているようで、何か歯がゆくはありました。ある雑誌はイカ天バッシングなんかもしていましたね。
ミドルエッジ編集部
今も活動を続けている「イカ天」バンドはとても少ないですよね。
「続けていて良かったなぁ~」と実感されるのはどんな時ですか?
和嶋慎治若い方に、街で励ましの声をかけられた時。
時代の変化について
ミドルエッジ編集部
近年ではももクロと共演されたり、声優の上坂すみれさんに楽曲提供されたり、若いアーティストとも交流を持たれていますが、意識やテクニック、環境など当時のアーティストたちと最近の若いアーティストたちの違いを感じることはありますか?
和嶋慎治若い方々の演奏力には目を見張るものがあります。
楽器を習得する際、その時代々々の情報量に大きな違いがあるからなのですが。
また、音楽に対する変な固定観念がないところも、好ましく思っています。
ミドルエッジ編集部
和嶋さんが青春時代に聴いていた頃はレコード、デビューした頃はCD。
最近ではネットによる配信と、音楽をファンに届ける手段も変化してきました。
それを意識して楽曲作成や演奏をすることはありますか?
和嶋慎治特に意識することはありません。
いまだにアルバムの構成をする際、ここからはB面だな、なんて考えながら選曲したりしますから。
ミドルエッジ編集部
40歳を過ぎると体力やテンション的なもので若い頃のようにいかなくなったなと落ち込んだり、悩んだりする方が多いです。
人間椅子のライブでは「ホントに50歳なの?」と疑問に思えるほどのパフォーマンスを見せつけていますが、体調管理などで心掛けていることはありますか?
和嶋慎治個人的には、ツアー中は一滴もお酒を飲まないようにしています。
飲酒後の数日間はアルコールの離脱症状が出てしまうので…。それから僕は喫煙者なのですが、ツアー期間はアイコスにするようにしています(気休めかもしれませんが)。
ミドルエッジ編集部
ミドルエッジはインターネットのメディアなのですが、インターネットに対してどのように感じて、どのように使っていこうと考えていますか?
和嶋慎治情報の発信源としては、今やインターネットは紙媒体、テレビなどよりもはるかに上であるように思います。
何より、自分たちが若い人の耳目に触れるようになったのも、おそらくインターネットからですから。
まだ把握しきれていないところもありますが、上手に付き合っていければと思います。
カバーすること、カバーされることについて
ミドルエッジ編集部
以前、テレビ番組の企画でブルーハーツ「リンダリンダ」やフィンガー5「恋のダイ
ヤル6700」から、「007」や「燃えよドラゴンのテーマ」まで様々なカバーをされて
いましたね。
カバーする曲の選曲は皆さんが行われたのですか?
印象に残っている曲はどれでしょう?
和嶋慎治自分たちが面白いと思うものをカバーしていました。
ジミヘンの「パープル・ヘイズ」は、顔を黒塗りにしたりして、楽しく演奏できました。声も似ましたね。
ミドルエッジ編集部
自分たちの曲ではなく、カバー曲を演奏することの楽しさやそこから得られる気付きとかはあるのでしょうか?
和嶋慎治いわゆる名曲をカバーしていましたから、いい曲ならではの構成、メロディなど、多くを学びました。
ミドルエッジ編集部
アマチュアによる人間椅子のカバーも動画共有サイトにアップされています。
カバーされる側の心境はどのようなものでしょうか?
和嶋慎治素直に嬉しく思います。それは、何かしらの影響と楽しみを皆さんに与えているということですから。
ミドルエッジ編集部
動画共有サイトのコメントには「カバーアルバム」出してほしいという声もあります。
オリジナル曲だからこその人間椅子であると思う反面、人間椅子ならばどんな人のどんな曲を選び、どんな風にカバーするのにも興味があります。
今後カバーアルバムを出す可能性はありますか?
和嶋慎治正直な気持ちをいいますと、カバーには他人の褌で相撲を取っているようなところがあるというか…。
一方、オリジナルは自分を表現することにほかならないと思います。したがって、オリジナル曲の方にはるかに魅力を感じてしまうのです。例えそれがカバーを越えられないとしても。