ゼロ・クラウンは一日にしてならず

ゼロ・クラウンは一日にしてならず

2003年に発売された12代目トヨタ・クラウンは、「ZERO CROWN」のキャッチコピーとともに登場し、大ヒットをしました。しかし、ここに至るまで、トヨタは入念な準備を行っていました。今回は、9代目から始まった改革の経緯を見ていきましょう。


11代目では、スポーティグレードとして「アスリート」が設定されました。かつて、8代目に設定があったグレード名ですが、9・10代目では「ロイヤルツーリング」と命名されて消滅してしまいました。従来はいずれも多数あるグレードのうちの一つでしたが、11代目では「ロイヤルシリーズ」と対をなすスポーティなシリーズとして複数のグレードが設定され、カタログも別途用意されました。

こういったグレードの設定には、ユーザー層の高齢化がありました。若返りをしないとクラウンがユーザーとともに消滅してしまう……。トヨタにはそんな危機感がずっとありました。

日産では、1987年発売のY31型セドリック・グロリアからブロアムシリーズとグランツーリスモシリーズの2本立てで展開し、ユーザー層の引き下げに成功していました。クラウンもこれに倣った格好です。

ハードトップからセダンになったことで、濃色だと運転士付きのクルマのように見えてしまった。

全車セダンボディとなった、11代目クラウンのロイヤルサルーン

Toyota Crown Royal Saloon (S170) 1999–2003 photos

従来のロイヤルツーリングよりも差別化が図られ、久々にターボエンジン搭載車も設定された。

11代目の目玉となった、クラウン・アスリート

Pictures of Toyota Crown Athlete (S170) 1999–2003

ついにゼロ・クラウンとして結実

車体のモノコック構造化、ボディのセダン一本化、スポーティグレードの追加と改革を行ってきたクラウンは、2003年、ついに12代目(180系)にフルモデルチェンジします。

新規開発のプラットフォームを採用し、エンジンは直列6気筒を廃止してV型6気筒に統一。若々しいデザインを採用し、「ZERO CROWN」のキャッチコピーですべてが一新されたことをPRしました。

12代目の登場は、確かに衝撃的でした。特に流麗なフォルムはクラウンらしくなく、ユーザー層の引き下げも実現しました。しかし、ここに至るまでの道のりは9代目からじわじわと行われてきたのでした。台数も多く売れ、利益率も高いクルマだけに、トヨタが非常に慎重に変更を重ねていったのが伺えます。

オーナーサルーンとして違和感のない、流麗なフォルムになった。

「ゼロ・クラウン」と呼ばれて今も人気が高い、12代目クラウン

Photos of Toyota Crown Concept 2003

ユーザー層の若返りにも成功した。

12代目クラウンの看板となったアスリート

Photos of Toyota Crown Athlete (S180) 2003–05

toyota crown ad 4 ~30sec version~ - YouTube

伝統ブランドの刷新は難しい

ここまで、ゼロ・クラウン誕生までのいきさつを見てきましたが、伝統あるブランドの刷新は難しいと改めて感じました。特にクラウンはトヨタの看板車種のひとつであり、利益率も大きいので、失敗すると経営に大きく影響します。

しかし、それでも刷新に迫られた背景には、1990年代半ばに出てきた、エコロジーと安全性の向上があります。これは世界中のメーカーに突き付けられた課題で、側面衝突性能の向上と、前後方向に小さなV型エンジンを搭載することで、クラッシャブルゾーンを確保する、という方策がメルセデスベンツやBMWといった高級FRセダンを製造するメーカーで採られるようになりました。さらにガソリンタンクの造形がしやすくなったことで、車のパッケージングも変わってきました。

そういった技術革新の潮流に日本のメーカーは遅れがちでしたが、1990年代後半になると開発に着手するようになってきました。その結果として誕生したのが、トヨタはゼロ・クラウンであり、日産はV35型スカイラインなのです。

スカイラインの場合、R34型から一気にV35型に変わったので戸惑いと反発を招きましたが、ここで紹介したように、クラウンは徐々に変わっていったのです。もっともクラウンの場合、ペリメーター型フレームやハードトップボディ、ユーザー層の高齢化といった、越えなければならない課題がさらにあったのですが……。

しかし、ゼロ・クラウンの成功があったからこそ、現行14代目のような大胆なフロントグリルやピンク色のボディカラーなども可能になったのは間違いないでしょう。

登場時は衝撃的だった現行モデルのフロントグリルも、見慣れたせいか、すっかり定着している。

Pictures of Toyota Crown Hybrid Athlete (S210) 2012

関連する投稿


「クラウン」がついに70周年!『別冊ベストカーTOYOTAクラウンSPECIAL』が好評発売中!!

「クラウン」がついに70周年!『別冊ベストカーTOYOTAクラウンSPECIAL』が好評発売中!!

講談社より、雑誌『別冊ベストカーTOYOTAクラウンSPECIAL』が現在好評発売中となっています。


【阪神タイガース】2003年4月11日巨人戦!悪夢の同点劇・・・ここから快進撃が始まった!

【阪神タイガース】2003年4月11日巨人戦!悪夢の同点劇・・・ここから快進撃が始まった!

2003年といえば、星野仙一監督率いる阪神タイガースが、18年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた年。しかし、開幕から順調だった訳ではなく、4月11日の巨人戦では、9回裏に6点差を追いつかれる悪夢の同点劇がありました。普通なら、ここからチームの士気が低下してもおかしくないところ。ところが、ここからあの快進撃が始まったのです!


【恐怖の9番打者】打者顔負けのバッティング!18年ぶりの優勝に貢献したトレイ・ムーア投手

【恐怖の9番打者】打者顔負けのバッティング!18年ぶりの優勝に貢献したトレイ・ムーア投手

大谷翔平の活躍で注目を集める "二刀流" ですが、実は20年前、阪神タイガース18年ぶりの優勝に大きく貢献した "二刀流" の投手がいました。それがトレイ・ムーア投手。愛嬌のある風貌、変則的な投球フォーム、打者顔負けのバッティングが特徴でした。そんな頼もしい助っ人を振り返ります。


懐かしい!今は亡き竹内結子や田中邦衛などが出演する名作映画「黄泉がえり」

懐かしい!今は亡き竹内結子や田中邦衛などが出演する名作映画「黄泉がえり」

2003年に公開された映画「黄泉がえり」は、亡くなった大事な人が黄泉から帰ってくるという死者と生者の愛をテーマにした映画です。主演は草彅剛さんと竹内結子さんが務めました。亡くなってしまった人を愛し続ける人達の愛と優しさが全編に漂う映画です。竹内結子さんや田中邦衛さんなど今は亡き俳優さんも出演していてとても懐かしさを感じますよね。今回は映画「黄泉がえり」をご紹介します。


映画「ONE PIECE ワンピース THE MOVIE デッドエンドの冒険」をフルで無料視聴できる動画配信サービスを比較!

映画「ONE PIECE ワンピース THE MOVIE デッドエンドの冒険」をフルで無料視聴できる動画配信サービスを比較!

2003年公開の日本のアニメーション映画「ONE PIECE ワンピース THE MOVIE デッドエンドの冒険」。原作は尾田栄一郎のコミック。監督は宇田鋼之介。脚本は菅良幸。田中真弓、中井和哉、岡村明美、山口勝平、平田広明らが出演したこの作品を無料視聴できる動画配信サービスをご紹介します。


最新の投稿


昭和の大横綱「千代の富士」の肉体がスーツから甦る。NY発OVERCOATが挑む究極のパターンメイキング

昭和の大横綱「千代の富士」の肉体がスーツから甦る。NY発OVERCOATが挑む究極のパターンメイキング

ニューヨーク発のブランド「OVERCOAT」が、昭和の名横綱・千代の富士との異色のコラボレーションを発表。生前愛用したテーラードスーツから身体寸法を逆算し、伝説の肉体をパターン(型紙)として再現。特別展示や限定アイテムの販売を行うポップアップイベントを、2026年3月より東京・ニューヨークで順次開催します。


伝説の「プロレスリング・マスター」武藤敬司、その足跡を網羅。『Gスピリッツ選集』第3巻が待望の発売!

伝説の「プロレスリング・マスター」武藤敬司、その足跡を網羅。『Gスピリッツ選集』第3巻が待望の発売!

辰巳出版は2026年3月6日、プロレス専門誌『Gスピリッツ』の証言集第3弾『Gスピリッツ選集 第三巻 武藤敬司篇』を発売しました。平成の新日本プロレス黄金期を支え、日米を股にかけて活躍した武藤敬司のキャリアを、本人や関係者の貴重なインタビューで振り返る一冊。新録インタビューも追加された、全プロレスファン必携の保存版アンソロジーです。


没後30年、俳優・渥美清の軌跡を辿る。神保町シアターで「寅さん」から知られざる名作まで12本を特集上映

没後30年、俳優・渥美清の軌跡を辿る。神保町シアターで「寅さん」から知られざる名作まで12本を特集上映

東京・神保町の名画座「神保町シアター」にて、2026年3月14日より特集上映『没後30年 俳優・渥美清』が開催されます。国民的映画『男はつらいよ』シリーズの人気作をはじめ、主演を務めた貴重なラブコメディや社会派人間ドラマなど、全12作品をフィルムで上映。日本映画界に多大な足跡を残した稀代の名優、渥美清の多才な魅力を再発見する貴重な機会です。


『ドラゴンボール』亀仙人の「カメハウス」が超精巧フィギュア化!内装まで再現した豪華セットが登場

『ドラゴンボール』亀仙人の「カメハウス」が超精巧フィギュア化!内装まで再現した豪華セットが登場

バンダイスピリッツより、ドラゴンボールの聖地「カメハウス」を立体化した『ワールドコレクタブルフィギュア PREMIUM-カメハウスセット-』が登場。全高約22cmのハウス本体は室内まで作り込まれ、悟空や亀仙人など7体のフィギュアが付属。日常シーンから名場面まで自由に再現可能なファン垂涎のアイテムです。


伝説の歌姫が横浜に降臨!『中森明菜 ザ・ステージ・プラネタリウム』LEDドームで特別追加上映が決定

伝説の歌姫が横浜に降臨!『中森明菜 ザ・ステージ・プラネタリウム』LEDドームで特別追加上映が決定

コニカミノルタプラネタリアYOKOHAMAにて、伝説の歌姫・中森明菜の魅力を堪能できる『中森明菜 ザ・ステージ・プラネタリウム-LED ver.-』が4月5日まで特別追加上映。圧倒的な高輝度・広色域のLEDドームで蘇る歌唱姿、限定特典の「難破船」ステッカーやコラボドリンクなどファン必見の内容です。