’64東京オリンピックで「五輪の名花」と称された伝説の美女体操選手・チャスラフスカの数奇な人生とは?

’64東京オリンピックで「五輪の名花」と称された伝説の美女体操選手・チャスラフスカの数奇な人生とは?

ベラ・チャスラフスカ選手は1964年の東京オリンピックで体操女子個人総合優勝を含む3つの金メダルを獲得。その金髪美女が見せる華麗なる演技に一躍、日本人は熱狂したものでした。彼女はチェコスロバキア(当時)体操女子代表として、その艶やかな演技に、会場のみならず、テレビの前で、誰もが食い入るように見入ったものです。当時私は小学校の高学年でしたが、テレビの前で胸がどきどきしたのを今でも憶えています。ただ、後で祖国の自由化のためにも戦っていることを聞き、余計に応援したくなったものです。彼女の光と陰を追ってみましょう!!


チャスラフスカはついに、体操界から追放され、指導者として使ってくれる団体もなく仕事も失ってしまった。5年後にやっと与えられた仕事は、地域の子供たちのためのスポーツ・クラブで体操を教えるささやかなものだった。同様なしうちにあった人々の多くは国外に脱出し海外で活躍する道を選んでいますが、彼女はそうはしなかった。(小説「存在の耐えられない軽さ」のミラン・クンデラ、映画「カッコーの巣の上で」のミロシュ・フォアマン・・・)
なぜ、何も悪いことをしていないのに故郷を捨てなければならないのか?彼女はこの当たり前のことにこだわり続けたのだった。彼女の後に登場したコマネチが、祖国ルーマニアの崩壊の際、すぐに国を捨て海外で生きる道を選択したのとは対照的な話しだ。ただ、私にはどちらが正しいのか、間違っているのか?答えることはできないし、また、しないのが正論であろうと思う。
彼女と同じように国内で生きる道を選択した人々は、みな屈辱的な人生を歩むことを余儀なくされたが、そうした苦難の人生を歩んだ人々に光が当たる時が訪れるものだ。

もの悲しげなチャスラフスカ

しばしの春の訪れ!!

時は流れ、1989年、世界は大きく変わり始めた。ソ連国内から始まった民主化(ペレストロイカ)の波は、東ドイツに波及し「ベルリンの壁」が崩壊。その影響はソ連を解体させ、東欧諸国もそれぞれ大きな変化の時を迎えることになった。チェコ国内でも共産党による支配体制が崩れ、民主化の波が政界を大きく変えようとしていた。幸い、チェコにおける民主化は、軍隊など保守派による武力による抵抗にあうことはなく無血革命が実現。(そのため、チェコにおける改革運動は「ビロード革命」と呼ばれることになる)
この改革により、かつて「二千語宣言」に署名をしたために、それぞれの地位を追われた人々に20年ぶりに復帰の機会が訪れた。新たなチェコの指導者に選ばれたのも、彼女と同じように国内に残る道を選んだ劇作家ヴァーツラフ・ハヴェルでした。
1989年11月24日の夜、ヴァーツラフ広場に面したビルのバルコニーには、そうした英雄たちが久しぶりに顔をそろえた。「プラハの春」の時の共産党第一書記アレクサンデル・ドゥプチェク、新指導者となったヴァーツラフ・ハヴェル、歌手のマルタ・クビシュヴァ(「ヘイ・ジュード」の歌詞を変えて歌い民主化を支持し大ヒット)、テレビ・キャスターだったカミラ・モウチコワ、そしてベラ・チャスラフスカ。
チャスラフスカもまた、ついに体操協会に復帰し、国際大会の審判など、名誉回復がなされたのだった。

獲得したメダルを披露し、はにかむチャスラフスカ

悲劇が再び襲う!!

映画ならば、これでハッピー・エンドとなるところでしょう、チョンチョンと。しかし、リアルな人生においては、そう上手くはゆかず、彼女は再び悲劇に襲われることになる。1993年8月6日、プラハの北にある小さな村のバーでチャスラフスカの元夫ヨゼフ・オドロジルが喧嘩が原因で命を落としたのだった。ところが、その犯人として逮捕されたのが、チャスラフスカの息子マルティンだったのです。(当時、高校生)酔っぱらって店にいた女性客にからんでいた父親の醜態に偶然出会ったマルティンが、止めようとして喧嘩になったと言う。しかし、この事件に対し、復讐に燃える元夫の家族が共産党や新聞社を使うことで「反チャスラフスカ・キャンペーン」を展開し始めてしまった。力が弱まったとはいえ、共産党は民主化勢力への復讐の機会をうかがっており、チャスラフスカはその標的になったと言われている。この事件をきっかけに彼女は精神的に追い込まれてしまい、ついに鬱状態になってしまい、14年間も精神病院に入院することになったのだった。それはあまりに哀しいドラマの終わりだった。

チャスラフスカは東京オリンピックに出場した際に日本のファンが体操競技に詳しいことに驚き、また、滞在中に多くの日本人ファンから扇子、浴衣や日本刀などをプレゼントされたことに感激したことを語っている。それらの贈り物は2013年の時点でも自宅に保管していた。
2010年、日本国の秋の叙勲(外国人叙勲)にて旭日中綬章を受章している。他界する直前の取材で、「私は何か行動しようとするとき、日本人だったらどうするか、日本人にどう思われるか、とよく考えるのです。私は自分が想像する日本人の心を鏡にしているのです」と。何とも頭の下がる思いだ。

1年4カ月に及ぶがん闘病の末、「私は何か行動しようとするとき、日本人だったらどうするか、日本人にどう思われるか、とよく考えるのです。私は自分が想像する日本人の心を鏡にしているのです」。私は思わず背筋を正し、彼女と接してきた日本人たちに感謝した。そして、日本人の心をここまで深く理解し、半世紀も愛し続けてくれた彼女の心にも敬意を表した。
1年4カ月に及ぶがん闘病の末、2016年8月30日、チャスラフスカは天に召された。74歳。彼女こそ、東京五輪のレガシーそのものだった。

他界する直前のチャスラフスカ

チャスラフスカの画像チェックしていたら、こんな切手があるのを発見したのですが、何とこれが北朝鮮のものだったとは・・・
まことにびっくりしました!!。

北朝鮮で出したチャスラフスカをモチーフにした切手

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