台車
客車
電車
「電車」とは、正確には、上に人の座る座席があって、下に動力を出すモーターがついている車両をいいます。それに対して、自分だけでは動力を持たず、座席や寝台ベッドが上にあり、下は台車だけで、機関車がないと動けないものを「客車」と区別しています。
では、この2つの利点、欠点を見てみましょう。
「電車」は、何といっても機関車が不要で、自分で動くことができることが利点です。「動力分散式」といって、それぞれの車両にモーターがついているので、身軽で、特に動き出す時の加速がよいのが利点です。(すべての車両にモーターがついているとは限らず、例えば10両編成の中にモーターがついているのが5両で、残りの5両は他の車両のモーターの力を借りて動く、というようなスタイルのものも多いです。モーターのある車両を「動力車」、モーターがなく他の、モーターがある車両にくっついて動く車両を、「付随車」と呼びます。)
しかし、モーターのついている車両は、「騒音」と「振動」が大きいという問題がつきまといます。昼間は起きている人が乗るので、「静か」さより、「速さ」が求められていることが多いので、加速性に優れている電車のほうが適していますが、夜は、「寝る」ための空間が必要で、それには、「静かなこと」「揺れないこと」が求められ、モーターのある車両は寝台車には向いていないということになります。
それに対して、「客車」は、モーターを一切持たないので、騒音・振動源がなく、「静かさ」と「揺れない」という、乗っている人にはうれしい「快適さ」が何よりも自慢です。
しかしながら、客車は、モーターを持っていないので、自分だけでは一切動くことができません。
動く時には常に機関車が必要となります。
さらに、「加速性が劣る」という問題があります。先頭(もしくは最後尾)につけられた機関車の力だけで、何両もある客車を動かさなければならないので、客車の最後尾にまで動力エネルギーが伝わるまでに、タイムラグが生じ、加速のスピードが出ません。
583系は「静かな電車」
そのため、寝台「列車」ではなく、モーターを持った寝台「電車」として設計される583系は、静かさというものの追求が必要になってきます。
海外では、一見「電車」に見えても、実は先頭と最後尾に大きなモーター(もしくはディーゼルエンジン)だけを積んで、お客は乗せない、というスタイルが今でも主流です。フランスの新幹線「TGV」などは先頭と最後尾にモーターを積んで、モーターのない客車を間にはさんで動くスタイルです。先頭で「引っ張り(Pull)」、最後尾で「押す(Push)」、間に挟まれた客車は動かないということで、「プッシュプル方式」と呼ばれる方式が主流です。静かで、揺れも少ないですが、やはり加速性は電車方式にはかないません。
TGV | ヨーロッパ鉄道旅行ガイド(レイルヨーロッパ【公式】)
じゃあ、日本でもプッシュプル方式にすればよいのでは、と思われる方も多いと思います。
しかし、プッシュプル方式の車両はどうしても先頭車(最後尾車)に集中して動力源を積載するため、その車両に大きな重量がかかります。
フランスなどヨーロッパは、大陸なので地盤が良く安定しており、大きな重量が集中して加わっても問題がないのですが、日本は地盤の弱い地点が点在しており、重い車両が通ると線路や地盤に影響を与える可能性があり、安全性上、ヨーロッパとは違う問題を抱えています。
ですので、重量が分散している「電車」のほうが日本には適しているというわけです。
たくさん人を運ぶためにという理由と、モーターからベッドをできる限り遠ざけるという理由もあったと思いますが、583系は「背が高い」電車です。電車ですから、電気を架線から取らなければならないので、電線より高くは電車は作れません。その限界を、「車両限界」と呼ぶのですが、その基準一杯まで背を高く設計しました。
正直、583系以外の電車特急では、うるさくて、眠れたものではありません。
やはり、モーター音がうなりをあげています。
今ではVVVFが主流ですが、昔は抵抗器制御の電車でしたので、特に国鉄が造っていた当時の電車ではその欠点が顕著です。
盛り上がり過ぎ?のラストラン
583系、おつかれさまでした
新幹線網ができるまでの、日本の高度成長を支えた、世界初の寝台電車583系。いよいよラストランとなります。
またひとつ、昭和が終わります。
日本の高度成長を支えたモーレツサラリーマンのごとく、昼も夜も働いた583系に、「ありがとう」をお伝えしたいと思います。