『マラソン マン』だけど、サスペンス。夜の街を疾走するダスティン・ホフマンはどこに向かう!?

『マラソン マン』だけど、サスペンス。夜の街を疾走するダスティン・ホフマンはどこに向かう!?

『マラソン マン』というタイトルなのに、なぜかサスペンスという意外性が面白いこの映画、主演は『クレイマー、クレイマー』『レインマン』のダスティン・ホフマン。脇を固めるのは、名優ローレンス・オリヴィエ、ロイ・シャイダー。脚本には、『明日に向かって撃て』『大統領の陰謀』のウィリアム・ゴールドマン。これだけメンツがそろえば、観ない理由はない。タイトルの妥当性はともかく、まずは観ていただければよいかと!


ダスティン・ホフマン主演で、まずは信用していい映画!?

 よくある話と言ってしまうのは、ちょっとどうかと思うが、マラソンしていた青年が自動車事故を目撃して、「恐怖のどん底」的な目に遭うという物語。
 まあ、偶然、何かを見てしまい、酷い目に遭うという話はサスペンスの定番中の定番というのはあるが、40年ほど前の映画ということで良しとしよう。だいぶ、上からな言い方だが、素人の特権として、ひとまず許してもらいたい。
 とはいえ、主演は2度のアカデミー賞主演男優賞を受賞した名優ダスティン・ホフマンである。ダスティン・ホフマンが主役と聞けば、少しは安心して観てみようかなと思うだろう。
 デビュー作『卒業』から9年後、アカデミー賞主演男優賞受賞作『クレイマー・クレイマー』の3年前のダスティン・ホフマンである。脂がのっている時期だ。
 いずれにしても、十分に信用してもいい作品ではあるのだ(その先の評価は観る方次第!)。

『マラソン マン』のダスティン・ホフマン。
いい表情でしょう!?

『クレイマー・クレイマー』
5歳のビリーがまあ可愛いこと。

タイトルは『マラソン マン』だけど、マラソン・ブームとは何の関係もない

 ところで、タイトルについて、ひと言、言っておきたい。
 昨今のマラソン・ブームを考えると、このタイトルはあまり関心できない。40年も前の昔の映画だからってことで不可抗力と言っても、そりゃそうなんだろうけど、そんなことは初見の人たちにはまったく関係ない。
 最近は、みんな走るわ走る。休日にでもなりゃ、老若男女、うじゃうじゃやたら走っているこのご時世で、『マラソン マン』ってタイトルで「おっ」と思うのは当たり前。でも、そんな人にとっては、全然意味不明な内容の映画なのである。
 というよりも、こんなことが起ころうものなら、走りたくなくなってしまう。走るのが怖くなる。私もランナーの端くれだが、ただ走っているだけだが、実は危険がいっぱいでもある。道をふさいでる人にぶつかる危険、ふらふらしてる子供を蹴ってしまう危険、飛び出してくる自転車や車にぶつかる危険、後ろから襲われるんじゃないかと女性に勘違いされる危険など、いつも多くの危険にさらされているのは確かだ。
 でも、なかなか自動車事故を目撃しないし、事故を見て危険な目に遭ったりもしない。たぶん、そんな人、なかなかいない。絶対にいないと言い切れないが、まあいないだろう。 
 いつもそこにある危険を感じながら走ろうってことを落としどころにして、無理やり他の人に薦めたいなら、それもOKだが、ともかく、マラソンファンにはおよそ関係のない物語ではあるのだ。
 ちなみに、はじめに「よくある話」と書いたのは、「偶然、何かを見てしまい、酷い目に遭う」という部分が「サッスペンス」にはよくあるということで、マラソン時に偶然に見てしまって・・・なんてことは、「よく」はない、のだ。
 ただし、もしも!?の時に「走れる!」ということは、自己防衛手段になるかもと思える部分はなくもない。

 

いくらブームでもこんな格好で走ったりしない。
でも、拉致されたところから、必死に逃げるなら、こんな状態にもなるかもしれない。

ちなみに、『マラソン マン』公開の1976年はこんな時代だった

『マラソン マン』公開は、約40年前の1976年だ。昭和だと51年、なんだか信じられないような、遥か昔に思える。
 この年、個人的にまず特筆すべきは、ヤマザキナビスコが「チップスター」を発売したということ。いやいや大好きなチップスターにも長い歴史があるもんだと実感。
 この年は何と言っても、ロッキード事件。アメリカでロッキード事件が発覚し、日本でも企業トップなどの逮捕者が続出。田中角栄前首相まで逮捕されるという大事件となった。証人喚問での小佐野賢治の「記憶にございません」も話題に。
 9月に三木改造内閣発足も、12月の衆院選惨敗で三木首相退陣。代って福田赳夫内閣が発足した。アメリカでも、現職で共和党のフォードが、民主党のカーターに敗れるなど、アメリカ、日本とも政財界大揺れの一年だった。
 

 他には、「徹子の部屋」の放送開始、アップル・コンピュータ(現アップル)設立、武者小路実篤の死去、モントリオール・オリンピックの開催、ピンクレディーのデビュー、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』連載開始、巨人の王さんがベーブ・ルースを抜く715号本塁打、日本ビクターの家庭用VHSビデオテープ・レコーダ1号機発売・・・いやいや、いろいろありました。
 

1975年にソニーがベータフォーマットの「SL-6300」を、その1年後に日本ビクターがVHSフォーマットの「HR-3300」を発売した。性能はほとんど同じようなものだったが、当時は記録時間がソニーが1時間、日本ビクターが2時間だったとか。

そして、この映画、脚本家で観るかどうかを判断できる映画でもある!

『マラソン マン』という映画では、ダスティン・ホフマンだけでなく、脚本家にも注目する必要がある。その脚本家とは、『明日に向かって撃て!』『大統領の陰謀』『遠すぎた橋』『ミザリー』など、数々のヒット作を生み出したウィリアム・ゴールドマン。『明日に向って撃て!』(1967年)と『大統領の陰謀』(1976年)では、アカデミー賞脚本賞を獲得している。そんな彼が自作の小説を自ら脚本化した映画が本作『マラソン マン』だ。
 万一、ダスティン・ホフマンが嫌いでも、ウィリアム・ゴールドマンが手掛けた作品なら見る価値があると考える人は、とりあえず観てもいいとは思う。ただ、強くお勧めはしない。なぜか。
 それは私自身がラストシーンが何か腑に落ちないところを感じるからだ。でも、くどいようだが、観ておいてもいいとは思う。

アメリカン・ニューシネマの名作
『明日に向かって撃て』。
まだ無名だったロバート・レッドフォード、
すでにスターだったポール・ニューマン。
とにかく、傑作。

『大統領の陰謀』は、ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマン。こちらも文句なく面白い。

『マラソン マン』・・・その物語。

 舞台はニューヨーク。
 ベーブは、オリンピックのマラソン連覇のアベベに憧れるランニング好きの大学院生。そんなベーブがランニング中に自動車事故を目撃してしまう。

この姿はマラソンマンと言ってもいいだろう、いちおう。

 事故に遭ったのは、72歳のクラウスという老人。死亡した老人の兄クリスチャン・ゼル博士は、知らせを受け、暗殺かと疑う。なぜ、暗殺かと疑うか。それはクリスチャンが元ナチスだったからだ。
 そこから、話は展開していく。ベーブは、恋人エルザと一緒にいる時に、2人組の暴漢に襲われる。ベーブの兄でアメリカ諜報員のドクは、元ナチスたちの自分への警告だと考える。ドクはその後、クリスチャンに会う機会を得るが、隠しナイフのようなもので刺されてしまう。瀕死の状態でベーブの部屋までたどり着くドク。
 だが、ドクは、そこで絶命するのだった・・・。
  

ベーブの兄ドク役のロイ・シャイダーといえば、個人的に『ジョーズ』の印象が強いが、この当時40歳を超え、大学院生の兄役とは思えない雰囲気。というか、40歳前のダスティン・ホフマンの大学院生も微妙に無理があるかも。

昨今のアメリカ諜報員は、海外ドラマなんかで観るとかなりタフなイメージだけど、こんなところで迂闊にも爺さんに刺されるなんてどうかなと思えなくもない。でも、まあ、その爺さんが狡猾な元ナチスということでアリとしようか。

とはいえ、ベーブのところまで瀕死の状態で辿りついたのは、アッパレ。

 失意のベーブは、さらに事件に巻き込まれていく。数々の裏切りの中で、クリスチャンとの最後の対決にのぞむのだ。
 そこに希望はあるのか。

『ヘンリィ五世』『ハムレット』など数々の名作に主演したイギリスの名優で、初めて一代貴族に叙されたローレンス・オリヴィエ。
でも、この顔、怖すぎます。

あれ、元ナチスのお爺さん、歯医者なの?
って、いやいや、これ見ると、
どこが「マラソンマン?」と思ってしまう。

問題のラストシーン。
どうも納得のいかないのは私だけ・・・?

サスペンス映画としての味わい・・・

 主人公ベーブについて言えることは、いくつかの不幸が重なっていて、それが気の毒だな、と。一つは事故を目撃したこと、そして兄貴がアメリカの諜報機関の人間だったということ。そんなこんなで、主人公が十分に理不尽な目に遭いそうなサスペンス的なお膳立てはできている。
 そして、登場人物たちのさまざまな思惑や複雑な背景を織り込みながら、ハードボイルドな展開も小気味よく、重要人物の裏切り具合もなかなか良い感じで、サスペンスフルに物語は進む。
 釈然としない部分はああるものの、まま流しつつ、ダスティン・ホフマンの力強さとローレンス・オリヴィエの狡猾さと乱暴者ぶりを見ながらラストへ。
 で、もって、そんな結末!?と思いながらも、まあ、なくはないかなあと考え直す余韻を残し、マラソンが趣味の男のサスペンス映画は終了するのだ。
 

<キャスト>
ベーブ(トーマス・リービ)・・・ダスティン・ホフマン 
クリスチャン・ゼル博士・・・ローレンス・オリヴィエ
ドク(ヘンリー・リービ)・・・ロイ・シャイダー
ジーンウェイ・・・ウィリアム・ディヴェイン
エルザ・オペル・・・マルト・ケラー

<スタッフ>
監督 ジョン・シュレシンジャー
脚本 ウィリアム・ゴールドマン
原作 ウィリアム・ゴールドマン
製作 ロバート・エヴァンス シドニー・ベッカーマン
音楽 マイケル・スモール
撮影 コンラッド・L・ホール
編集 ジム・クラーク

ダスティン・ホフマンを横なめする

 いわゆる名優。やはり、初期の作品のインパクトが強い。個人的には好きな俳優だが、近年は主演作が少ないのが寂しい。まあ、年齢的なものもあって仕方ないのかもしれないが、ロバート・デ・ニーロが今でも主役、脇役で縦横無人の活躍を見せているので、負けずに頑張ってほしい(まあ、デ・ニーロは別格か)。
 では、ダスティン・ホフマンの主要映画6本を動画でどうぞ。

<卒業>

<真夜中のカーボーイ>

<大統領の陰謀>

<クレイマー、クレイマー>

<トッツィー>

<レインマン>

それでは、どうぞ。

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