反体制の音楽だったフォークソングのイメージを一変させ、フォークのプリンスと呼ばれた吉田卓郎の「結婚しようよ」

反体制の音楽だったフォークソングのイメージを一変させ、フォークのプリンスと呼ばれた吉田卓郎の「結婚しようよ」

レコード会社の移籍と共に発表された「結婚しようよ」は、それまでの反戦運動や学園闘争など、反体制のシンボルとしてのフォークソングのイメージを一変させました。ブライダル業界へも影響を与えた「結婚しようよ」を振り返ります。


「結婚しようよ」とは

吉田拓郎について

デビュー前の活動

広島育ちの吉田拓郎は、1966年に日本コロンビア洋楽部主催のフォークコンテストにソロで出場し、全国大会3位になります。1967年のヤマハ・ライト・ミュージック・コンテスト中国地区で優勝し、1968年には全国大会でヴォーカル・グループサウンズ部門で4位になりました。
まだレコード化もされていなかったのですが、ラジオ出演やDJを担当したりして、ラジオにもリクエストが殺到するほどでした。吉田拓郎の発案で、3つのフォークグループにより「広島フォーク村」を結成し、学生運動のバリケードで囲まれたステージで「イメージの詩」を歌い、終了後に学生たちに取り囲まれるということもありました。

エレックレコード時代

1970年にエリックレコードに入社して、「イメージの詩」、「青春の詩」を発売しましたが、NHKのオーディションに落ちてしまったり、広島フォーク村のアルバム発売記念コンサートにも客がほとんどいないなど、目立った活躍はできませんでした。

インディーズレーベルだったエレックレコードから「イメージの詩」、「青春の詩」を発売しました。

イメージの詩のジャケット

ハイファイ堂 メールマガジン

CBSソニー時代

1971年にCBSソニーから「今日までそして明日から」を発売し、1972年に発売した「結婚しようよ」がヒットしたことで、吉田拓郎の名前が知られるようになります。
オリコンチャート3位、40万枚を売り上げたこの「結婚しようよ」のヒットにより、それまでの長髪の若者が歌う反体制的なものとされていたフォークソングが、普通の音楽として認知されるようになりました。
続く「旅の宿」もヒットしたことにより、他のアーティストへの作曲の依頼も入り、作曲家としての人気も高まりました。

「結婚しようよ」のヒットにより、フォークソングのイメージは一変し、社会に受け入れられるようになりました。

結婚しようよのジャケット

吉田拓郎 と 結婚しようよ - エルペディア【Wikipedia】

よしだたくろうから吉田拓郎への改名

1975年には、井上陽水、泉谷しげる、小室等らとアーティストによる初めてのレコード会社フォーライフレコードを設立します。それまではひらがなの「よしだたくろう」としていましたが、これを機に漢字の「吉田拓郎」に改名しました。
森山良子の「歌ってよ夕日の歌を」、キャンディーズの「やさしい悪魔」、石野真子の「狼なんて恐くない」など、多くの楽曲を提供しヒットさせました。
その後、2003年には肺がんの手術を受けましたが、手術は成功し復活コンサートも開催、2013年にはライブアルバム「吉田拓郎LIVE2012」がオリコンDVD週間ランキングトップ10入りして、史上最年長66歳を記録しました。

3年ぶりのNHKホールでのLIVEの模様を収録しています。

吉田拓郎LIVE2012のDVDジャケット

Web Treasure hunter: 吉田拓郎 LIVE 2012 (DVD)

「結婚しようよ」が与えた影響

長髪・フォークソングの認知

それまでのフォークソングは、ギターをかき鳴らして自分の主張を叫ぶ、反体制的な音楽というイメージが強いものでした。「結婚しようよ」とストレートに自分の思いを告げる拓郎の歌は、従来のフォークファンたちには「商業主義」、「軟弱」などと非難され、他のアーティストとのジョイントライブなどでは歌が聞こえないほどの「帰れ」コールが起こるほどでした。本当に帰ってしまったこともあったようですが、「帰れ」コールの中で歌い続ける姿が共感を呼んだことと、あさま山荘事件が起きたことにより、学生運動に共感していた若者たちの気持ちが変わりつつあったことも影響していたようです。
長髪でギターを持っているだけで「不良」と呼ばれていた若者たちですが、当時としては異質の「長髪」と、常識である「結婚」をシンプルに歌う「結婚しようよ」は、大人たちも微笑ましく受け入れていきました。

長髪とジーンズは若者のスタイルとして広がっていきました。

旅の宿のジャケット

吉田拓郎

ブライダル産業への影響

「結婚しようよ」の発売後、歌詞の内容通り、軽井沢の「聖パウロ教会」で結婚式を挙げました。それまでの家同士の結婚式という儀式から、若者の新しいスタイルとして受け入れられ、教会での結婚式が女性の憧れとなり、「結婚しようよ」は結婚式での定番となりました。

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