アコードインスパイアってどんな車?

1989年に発売されたアコードインスパイアは、新世代の上級小型車ハードトップとして、走りと美しさを極めることを目指したモデルです。
レジェンドとアコードの中間の車種としてデビューし、スポーティーで上品な走りとスタイルで一世を風靡しました。

FFミッドシップ・縦置5気筒エンジンを採用し、前後の重量バランスがFF車としては理想的になるように作られました。その結果がロングノーズで車高の低い、流れるようなスタイリングに繋がったのですね。
1992年に全長全幅共に大きくなった3ナンバーボディで2.5Lのモデルが加わります。そして車名もアコードの名前が取れ、インスパイアとなります。

1995年にフルモデルチェンジとなり、直列5気筒2.5Lモデルに加え、V6エンジンの3.2Lモデルが登場します。一方姉妹車のビガーは販売を終了し、後継セイバーが登場しますが、こちらも直列5気筒とV6の3.2Lのラインナップとなります。
そして1998年の3代目インスパイア以降は、直列5気筒のモデルは姿を消してしまいます。
アコードインスパイアのスペック
AX-i 2,644,000円
型式 E-CB5
全長×全幅×全高 4,690×1,695×1,355mm
エンジン型式 G20A
最高出力 160ps/6,700rpm
最大トルク 19.0kg・m/4,000rpm
種類 水冷直列5気筒SOHC20バルブ
総排気量 1,996cc
車両重量 1,330kg
燃費:10モード/10・15モード 9.3km/L
1989年9月カタログより

ビガーとは?

初代ビガーは1981年にアコードの姉妹車として発売されました。エンジンは直列4気筒の1.8Lのみ。4ドアセダンと3ドアハッチバックがありました。
1985年に2代目が発売になります。3ドアが廃止になり4ドアセダンのみ。こちらもエンジンは直列4気筒で1.8L。後のマイナーチェンジで他に2.0Lも加わりました。


そして1989年、3代目ビガーはこれまでのアコードよりも上のグレードの、アコードインスパイアの姉妹車として発売されます。280cmを超えるロングホイールベースにFFミッドシップに直列5気筒のエンジンを搭載し、今までのモデルの中でも、より洗練されたスポーティーな車に生まれ変わりました。
1992年には3ナンバーボディーで2.5Lのモデルが主流となり、インスパイアと共に、ますます上級サルーンとしての評価をあげることになります。

しかしバブル景気の終了した1995年販売が終了になり、その後継をセイバーに譲ることとなりました。
3代目後期ビガーのスペック
25XS 3,248,000円
型式 E-CC2
全長×全幅×全高 4,830×1,775×1,375mm
エンジン型式 G25A
最高出力 190ps/6,500rpm
最大トルク 24.2kg・m/3,800rpm
種類 水冷直列5気筒SOHC20バルブ
総排気量 2,451cc
車両重量 1,440kg
燃費:10モード/10・15モード 10.2km/L
1992年10月カタログより

直列5気筒とはどんなエンジン?
5つのシリンダーが真っ直ぐ並ぶレイアウト。6気筒には及びませんが、直列4気筒よりもパワーとトルクがあって、動きや振動もスムースです。またV6などに比べてコンパクトに抑える事ができるので、エンジンルームの空間を充分に確保でき、軽量化も可能なエンジンです。

しかしデメリットとして、製造されてる数が少ないのでコストが高く、またメンテナンスも困難な事があげられます。

直列5気筒のエンジンを使っている車種はボルボやアウディTT RS、ハマーH3やゴルフパサートなどがあったのですが、近年ではその数はだんだん減ってきています。


FFミッドシップとは何?
ホンダがアコードインスパイアとビガーのために独自に開発したエンジンレイアウトのシステムです。前の車軸の後ろにエンジンやトランスミッションを置くことで、車重の前後のバランスをFF車としては理想的な6:4にすることが可能になりました。

通常FF車のエンジンは横置きですが、縦置きにすることで振動を少なくし、重心を下げ、ハンドリング性能が高まり、高速走行での安定性も増すことができました。

全てはスタイリッシュでスムースで、高品位な気持ちの良い走りを生み出すことに注がれたプロジェクトでしたが、アコードインスパイア/ビガー共に大ヒットしたにもかかわらず、製造コストやメンテナンスの問題もあって短命に終わってしまいます。
車に求めるもの
スペックは高いけれどコストパフォーマンスやメンテナンスは大変。でもかっこいいし、性能的にも満足がいくものだし、何より自分の個性に合ってる・・・バブルの頃にはそういった主張、感性が受け入れられた時代でした。

性能の良さと、美を求める文化があったのです。そして、結果として寄り道になってしまうかもしれないけど、新しい事にチャレンジすることを、企業が許す余裕もありました。

時代と共に車に求めるものは変わってきています。安全で便利でエコで機能的である、という点が大切なのは言うまでもありません。しかし、カッコ良さだったり、走る楽しみや所有する悦びといった、人の感情に訴えるものがないと、なかなかヒットには結びつかないものでしょう。
真の自動車好きが集まるホンダのことですから、これからもスタイリッシュでカッコ良く、走りを楽しむ、ドライバーの遊び心を突っついてくれる、そんな車作りへのチャレンジに期待したいですね。
