まずは映画の内容をチェック!
1982年にリドリー・スコットが監督を務め、公開された「ブレードランナー」。
公開当時は時代を先取りしすぎた難解なカルトムービーという評判でしたが、様々なバージョンを経て徐々に人気を集め、最終的にはSF映画の金字塔と呼ばれる程の高い評価を受けました。
そんな「ブレードランナー」のまずは内容からご紹介いたします。

映画「ブレードランナー」
映画のあらすじ
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
この映画は、アメリカの小説家であるフィリップ・K・ディックのSF長編小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(原題:Do androids dream of electric sheep?)を原作としています。
本国では1968年に刊行され、日本では翌1969年にハヤカワ・SF・シリーズから刊行されています。
この作品以降、「○○は××の夢を見るか?」と言う多くのパロディが生み出され、SF小説の古典とも言えるポジションを獲得しました。
小説の内容は映画との違いもありますし、もちろん違う魅力もありますので、映画を見る前もしくは見た後にこちらを読んでみるのもよいかもしれません。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
Amazon.co.jp: アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 電子書籍: フィリップ・K・ディック, 浅倉 久志, カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン), 浅倉久志: Kindleストア
時代とともに評価の高まる「ブレードランナー」
「ブレードランナー」はアメリカでは公開直後は評判と人気がかなり高く、公開された週は週末の興行収入成績をなんと初登場第2位という記録を打ち立てました。
ですが、同時に「E.T」も公開されていた事、当時としては時代を先取りしすぎた感もあり、後の興行成績は振るわず、日本でも初回封切り時はあまりよい興行成績をあげれませんでした。
その後様々なバージョンが製作・公開され、その都度本作は人気を徐々に集めていきます。
最終的には世界中で熱狂的なファンを持つまでに至り、SF映画の金字塔と呼ばれるまでになりました。
1993年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録もされています。
「ブレードランナー」の豪華なスタッフ達
映像美の巨匠、リドリー・スコット
「ブレードランナー」で監督を務めたリドリー・スコット(Ridley Scott)は、1937年にイングランドに生まれます。
ウエスト・ハートブール美術大学を経てロンドン王立美術大学に進み、卒業後にBBC(英国放送協会)に入社しました。
後にCM業界に転進し自らのCM制作会社を設立、なんと1900本以上のCMを手がけました。
1977年の「デュエリスト/決闘者」で長編監督デビューし、「エイリアン」(1979年)や本作の大ヒットを生み出し、その天才的映像センスで一躍有名になります。
他に監督した作品は「ブラックレイン」、「テルマ&ルイーズ」、「グラディエーター」、「ブラック・ホーク・ダウン」等があり、最新作は「オデッセイ」が2016年に公開されています。

個性的な主人公達
「ブレードランナー」では、主役のリック・デッカードをハリソン・フォードが、ヒロインのレイチェルをショーン・ヤングが演じています。
ハリソン・フォードは言わずと知れたアメリカの名優で、1966年に「現金作戦」で俳優としてデビューし、1977年の「スター・ウォーズ」のハン・ソロ役で一気にブレイクします。
後に「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」(1981年)のインディ・ジョーンズ役でスターとしての地位を確立し、この作品以降様々な大ヒット映画に出演する大スターとなりました。
他に出演した映画は「地獄の黙示録」、「エアフォース・ワン」、「6デイズ/7ナイツ」等があります。
そしてショーン・ヤングは1980年に「マンハッタンのジェイン・オースティン」という映画でデビューした女優です。
本作出演以降はその美貌で人気を獲得し、「砂の惑星」(1984年)や「追いつめられて」(1987年)などに出演しました。
しかし、交際相手にストーカー行為で訴えられたり、アルコール依存症になったりと、その後は奇抜な振る舞いで世間を騒がせることが多くなりました。
「ブレードランナー」は彼女が女優として一番輝いていた時期の映画、と言えるかもしれません。

ハリソン・フォード
Is Harrison Ford starring in the Blade Runner sequel?

ショーン・ヤング
Blade Runner Sequel Sean Young Ridley Scott | The Mary Sue
名曲揃いのサウンドトラック
「ブレードランナー」で音楽を担当したのは、、ギリシャの作曲家であるヴァンゲリス。
彼は様々な映画音楽を製作しましたが、中でも「炎のランナー」や「南極物語」等が有名かと思います。
また、2002 FIFAワールドカップの公式アンセムも製作しました。
彼の織り成す楽曲は、シンプルかつ壮大で心に残るものが多く、「フレードランナー」での楽曲もその例に漏れません。
特に「愛のテーマ」はアンニュイな雰囲気を漂わせつつ、壮大さを失っていない素晴らしい楽曲です。
この映画のサントラは、権利の問題などによりなかなか発表されず、公開直後には8曲入りのオーケストラ盤だけが発表されました。
その後1989年にはヴァンゲリスのベスト盤「THEMES/ザ・ベリー・ベスト・オブ・ヴァンゲリス」に、映画に使用された楽曲の中から3曲のみが収録されましたが、映画のサントラとしての発表にはまだ至りませんでした。
そして1994年、やっと公式にサントラが発表されます。
2008年には3枚組からなる25周年記念エディション等も発表されていますが、3枚目は映画との関連はほぼなく、もしお求めになられる場合は1994年に発売されたものの方がよいかもしれません。
「ブレードランナー」の魅力に迫る!
レプリカントという存在
この映画において大事な役割を担う「レプリカント」。
1982年に行われた記者会見によると、レプリカントは以下のように定義されています。
レプリカントという言葉は、本作で創作された言葉です。
わかりやすく言うと、「レプリカント=人間型ロボット」ですね。
「ロボット(もしくは人工知能)が感情を持つようになるのか?」というのは、古典的なSF作品のテーゼであり、今も幾度となく論議される深遠なテーマです。
2016年3月には、Microsoftが開発した人工知能「Tay(テイ)」が虐殺や差別を支持するようになり、物議を醸したりもしています。
現在も人工知能に関する論議は世界中で繰り広げられており、「ブレードランナー」の内容に真実味を帯びるようになったがゆえに今こそ人気が高まっているのだと言えます。
卓越した近未来描写
「ブレードランナー」の人気の一つにその独特の世界観があります。
本作はリドリー・スコット監督が来日した時に訪れた新宿歌舞伎町のイメージをモチーフに、アジアチックな雑踏のイメージで街が描かれています。
舞台であるロサンゼルスに多種多様な人種が入り乱れて生活しているという設定であるため、街の中には様々な言語での看板が立ち並び、特に日本語での看板や話し声やは各シーンで多用されています。
SF映画というと従来は近代的で美しく、清潔なイメージで描かれる事の多かった未来都市ですが、本作では酸性雨が降り注ぎ、人種の坩堝と化し、退廃的な近未来として描かれています。
映画製作時にはまだCGという技術もなかったのですが、リドリー・スコットは何時間もかけて繊細な模型やセットを作り、根気強くテイクを重ねて作り上げました。
その完成度の高さだけでも必見の価値ありと言える映画になっています。

「ブレードランナー」での1シーン
強力わかもと(映画『ブレードランナー』): しけもくろっく
「ブレードランナー」の根底にあるもの
「ブレードランナー」ではレプリカントが人間と相対するのですが、その根底にあるのは「人間とは何か、生きるという事はどういうことか?」という深いテーマになっています。
人間のように感情を持ち、記憶を持つレプリカントと人間の違いは何なのでしょう?
人間と同じようにレプリカントも死を恐れ、自分が何者なのかを知りたいと思い、人を愛します。
人間が人間たらしめるのは何によってでしょうか?
実際には本作中ではその答えは出ていません。
その深いテーマがまた多くの人々からの支持を受けている所以でもあるといえるでしょう。

「ブレードランナー」をより深く知る!
存在する5つのバージョン
本作にはなんと5つの異なるバージョンが存在します。
それぞれに細かい違いなどありますので、順を追ってみていきましょう。
●リサーチ試写版(ワークプリント)ー1982年
本作公開前、ダラスやデンバーで観客の反応を見るために実験的に作られたバージョン。
●初期劇場公開版(オリジナル劇場公開版、US劇場公開版)ー1982年
北米で初めて商業上映された際のバージョン。リサーチ試写版で不評だった点を改善。
ナレーションの追加やエンディングのハッピーエンド化などの変更点。
●インターナショナル・バージョン(インターナショナル劇場公開版、完全版)ー1982年
ヨーロッパや日本で公開された際に使われたバージョン。前作でカットされたシーンが追加されたり、微細な変更が多少あり。
●ディレクターズ・カット(最終版)ー1992年
公開10周年を記念し再編集されたバージョン。
本作発表以降評価は徐々に高まり、本作はサイバーパンクの原典としての地位を確立。
「デッカードが見るユニコーンの夢」のシーンが追加。
●ファイナル・カットー2007年
公開25周年を記念し再編集されたバージョン。
特撮カットの鮮明化、細かい撮影ミスの修正等の他、リサーチ試写版や完全版でのみ見られたそれぞれのシーンが復活。
この映画を見てない方はどのバージョンを見ていいのか悩んでしまいそうですが、最初は監督が本来作りたかったというディレクターズ・カットやファイナル・カット版がお勧めです。
ちなみにこれら5つのバージョンは、2007年にリリースされたDVDボックス「ブレードランナー製作25周年記念 アルティメット・コレクターズ・エディション」で全て視聴する事ができます。
色々と見比べてみるのもいいかもしれませんね。
6人目のレプリカントは一体誰なのか?
「ブレードランナー」において、デッカードは「地球に侵入したレプリカントは男3人、女3人の計6名であり、うち1名は既に死亡している」と上司から説明されていますが、本作では4名しか登場していません。
実際は6人目のレプリカントは配役まで決まっていたのですが、予算の都合で登場シーンは撮影されませんでした(「ファイナル・カットでは「1名が既に死亡」→「2名が既に死亡」に変更されています)。
このため、「6人目はデッカードではないか?」いう論議がなされました。
実際はただのミスだったのですが、監督自身がそのアイデアを気に入り、それを暗に匂わせるような「デッカードが見るユニコーンの夢」のシーンを撮影します(そのシーンの詳細な説明は下記のサイトに詳しく明記されています)。
このシーンは「ディレクターズ・カット」で初めて使用されたのですが、監督自らは2000年に行われたインタビューにおいて「デッカードはレプリカントだ」と明言しています。
この明言に対しては賛否両論が巻き起こり、現在でも「ブレードランナー」における最大の謎と言えますが、どんな解釈をするのも私達見る側の自由です。
あなたはどちらだと思いますか?
SFマニア必見『ブレードランナー』の解説|デッカードはユニコーンの夢を見るか? |PUUL(プウル)

デッカードが見るユニコーンの夢
「ブレードランナー」本当にデッカードはレプリカントなのか?
映画の続編としての小説
「ブレードランナー」はフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を原作としていますが、後にディックの友人であるK・W・ジーターにより、映画の続編として3作の小説が発表されています。
それぞれ、
「ブレードランナー2 レプリカントの墓標(Blade Runner 2: The Edge of Human)1995年」
「ブレードランナー3 レプリカントの夜(Blade Runner 3: Replicant Night)1996年」
が日本国内では早川書房より発売され、2000年に発表された3作目にあたる「Blade Runner 4: Eye and Talon」は日本語版は発売されていません。
原作の続きというより、映画の世界を引き継いだ作品になっていますので、更に深く「ブレードランナー」の世界を楽しみたい方にはお勧めです。

ブレードランナー2 レプリカントの墓標
ブレードランナー2―レプリカントの墓標 (ハヤカワ文庫SF) | K.W. ジーター, K.W. Jeter, 浅倉 久志 |本 | 通販 | Amazon

ブレードランナー3 レプリカントの夜
ブレードランナー〈3〉レプリカントの夜 (ハヤカワ文庫SF) | K.W. ジーター, K.W. Jeter, 大野 晶子 | 本 | Amazon.co.jp
映画の続編公開は2017年!
アメリカではアメリカで2017年10月6日に、そして日本では同年11月に「ブレードランナー」の続編が全国公開されることが決定したそうです!
タイトルは「ブレードランナー 2049」。
今回は前作の舞台2019年から数十年後の設定だそうです(タイトル通り2049年?)
今回もデッカード役はハリソン・フォードが演じる事になったそうで、製作総指揮はリドリー・スコット、監督は「プリズナーズ」「ボーダーライン」のドゥニ・ヴィルヌーヴが務めるそうです。

「ブレードランナー 2049」
『ブレードランナー』続編の日本公開は来年11月、コンセプトアートも - 映画・映像ニュース : CINRA.NET
「ブレードランナー」から約30年、特撮などの技術はどう進化しているのでしょうか?
デッカードの謎は明かされるのでしょうか?
人間とは何か?というテーマへの明確な回答は出るのでしょうか?
公開前に是非ともしっかりと初代「ブレードランナー」を復習・堪能して、来るべき続編公開を待ちたいですね♪