Mr.Boo!の歴史
Mr.Boo!って何?
そもそも「Mr.Boo!」って何だろう?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、まずはその説明からさせて頂きますね。
つまり狭義では1976年に香港で公開された「Mr.Boo!ミスター・ブー」の事を指すのですが、広義で捕らえるとその1作目から続いたシリーズものの総称、という事になります。
シリーズ化された映画はなんと10作以上! いかに人気が高かったが伺えます。
「Mr.Boo!ミスター・ブー」に至るまでのマイケル・ホイ監督
「Mr.Boo!ミスター・ブー」で監督を務めたマイケル・ホイは、1942年に中国広東省で5兄弟の長男として生まれます。社会に出てからは中学教師や広告代理店勤務等をしていました。
芸能界と無縁な生活を送っていたマイケル・ホイですが、先に芸能界入りしていた弟サミュエル(Mr. Boo!でも共演しています)に誘われた事により、1968年にTV番組司会者として華々しくデビューします。
巧みな話術でじわじわと人気を集め、1972年にリー・ハンシャン監督の映画『大軍閥』の主役に抜擢されてからは、映画の世界へと活動の拠点を移し始めます。

大軍閥
大军阀 The Warlord(1972)
1976年、香港にて「半斤八兩」(Mr.Boo!ミスター・ブー)公開!
70年代というと、ブルース・リー等を筆頭にアクション映画ばかりであった香港。
その中でアクションだけでなく、お笑い要素の中に当時の香港社会の現実を風刺をたっぷりきかせて作られた本作品はかなりの反響を巻き起こしました。
そう、「Mr.Boo!ミスター・ブー」はコメディ映画としてだけではなく、風刺映画としての一面も持っているのです。

半斤八兩
半斤八兩 (電影) - 维基百科,自由的百科全书
そして1979年、日本公開!
香港での人気も高まり、いよいよ日本国内でも1979年に公開されました。
「Mr.Boo!」というのは日本の配給会社が名付けたタイトルなのですが、その理由は「社内にブーというあだ名の人がいて、その人がマイケル・ホイによく似ていたから」。
そんな適当につけた名前が起用されたなんて、ちょっと驚きですね。
この予告編で使われているオープニングのテーマ曲は、映画でも役を演じているホイ兄弟の一人、サミュエル・ホイが歌っています。軽快なポップスなのですが、歌詞の内容は労働者の悲哀を嘆くちょっとシリアスなもの。
日本で広東語の曲が発売されたのは初めてであったり、後に赤塚不二夫さんによる共作が発表されたりと、話題を呼んだ一枚でした。

「Mr.Boo!ミスター・ブー」主題歌
サミュエル・ホイを聴けっ!!〜広東語ポップスを代表するシンガーソングライター〜 ロック&ムーヴィーフリーク別館/ウェブリブログ
「Mr.Boo!ミスター・ブー」の魅力を徹底解説!
映画のあらすじ
マイケル・ホイ演じる主役の探偵のウォンは香港で小さな私立探偵事務所を営んでいます。
従業員は秘書のジャッキー(テレサ・チュウ)と間抜けな助手のチョンボ(リッキー・ホイ)の3人だけ。
そこに得意な事といえばカンフーだけの青年キット(サミュエル・ホイ)が探偵を志し、雇ってくれと事務所を訪れます。
最初ウォンは雇うつもりはなかったのですが、直後に起きたスリ騒ぎでの鮮やかな対応を見て仕方なく雇うことに。
出費が増えたので今まで以上にケチになったウォン、そして我慢する3人。
そんなある日、映画館の館主から爆破予告の脅迫を受けたので調査してくれという依頼が舞い込むのですが・・・?

主役の探偵ウォン
「Mr.BOO=広川太一郎劇場」 | IMAGICA BS ~映画はイマジカBS~
随所に散りばめられた数多くの笑いのエッセンス!
あらすじだけを見てると一見シリアス映画にも見受けられますが、実際には全編いたる所にお笑いの要素が散りばめられています。
ギャグや駄洒落だけではなく、「ジョーズ」や「燃えよドラゴン」、「007」、「スパイ大作戦」等、様々な映画のパロディーも織り込まれていますので、それを探すのも楽しいかもしれません。
吹き替え版での名台詞を紹介しているサイトがありましたので、ご紹介させて頂きます。
でもやはり映画そのものを見ないと面白さはわかりづらいかもしれませんね。
ミスター・ブー | Pastime Paradise - 楽天ブログ
人気の秘密は日本語吹き替え版!
「Mr.Boo!ミスター・ブー」は1979年に劇場公開された後、1981年4月に日本語吹き替え版がフジテレビ「ゴールデン洋画劇場」で放映されます。
この吹き替え版では、マイケルを広川太一郎、サミュエルをビートたけし、リッキーをビートきよしが担当するという豪華なキャスティングでもあったのですが、何よりこの映画の人気を決定付けたのが広川氏による吹き替え。
広川氏は三代目ジェームズ・ボンドのロジャー・ムーア、TVシリーズ『バットマン』のバットマン役アダム・ウェスト、『600万ドルの男』のリー・メジャース、エルビス・プレスリーやビートルズのジョン・レノンなど、その落ち着いた魅力のある低い声で様々な俳優の吹き替えを担当し、人気を博した声優でした。
そんな二枚目役を演じる一方、コメディ映画などでは独自解釈でアドリブのギャグや駄洒落、持ち前の口調などを織り込みまくり、オリジナル映画以上の面白さを作り出す面も持ち合わせていました(「モンティ・パイソン」や「おかしなおかしな石器人」等)。
この「Mr.Boo!ミスター・ブー」ではその彼の魅力が余す事なく発揮されており、映画のコミカルさとあいまって放映翌日は物真似をする子供たちの姿が数多く見受けられました。
Mr.Boo!というと、広川氏を想像する人も数多くいるかと思います。
もしまだこの映画をご覧になった事がない方がいらっしゃいましたら、吹き替え版での視聴を断然お勧めいたします!

広川太一郎氏
広川太一郎 : 【代表作記載】声優の訃報まとめ - NAVER まとめ
Booになる心得
日本での劇場公開時、パンフレットに「Booになる心得」というものが記載されていました。
「BOO」とは変なところで真面目なんだけどちょっと抜けてて、お調子者な三枚目だけど憎めない、そんな人物像のようですね。
お笑いだけではなく、カンフーも見所!
「Mr.Boo!ミスター・ブー」というとお笑い映画のイメージですが、当時の香港映画らしくもちろんアクションシーンもしっかりとあります。
この作品で武術を指導したのは、ブルース・リー亡き後にジャッキー・チェンとともに香港アクション映画を代表する人物となるサモ・ハン・キンポーです。
ぽっちゃりした体型なのに素早い動きをする彼は「動けるデブ」と称され、武術指導だけではなく俳優や監督業など、数多くの作品に携わってきました。
そんな彼が武術指導を担当していたのだから、見応えのあるアクションシーンが作り出せたのでしょう。
ちなみに本作品でチンピラ役として出演もしています。

サモ・ハン・キンポー
わたなべりんたろうの日記 サモ・ハン・キンポー出演の黒烏龍茶のCMが嬉しい! - webDICE
他にもこんな有名人が!
マイケル・ホイが監督・主演を努め、サモ・ハン・キンポーが武術指導を担当した「Mr.Boo!ミスター・ブー」。
実はそれだけでなく、プロダクション・マネージャーになんとジョン・ウーの名前が!
ジョン・ウーというと、「男たちの挽歌(1986年) 」「フェイス/オフ(1997年) 」「ミッション:インポッシブル2(2000年) 」等の数々の大ヒット映画を手がけた香港出身の有名監督ですが、そんな彼が携わっていたと聞くと、なるほど納得の完成度です。

ジョン・ウー
ジョン・ウー監督のおすすめ映画5選! | Ciatr[シアター]
Mr.Boo!シリーズ化!
Mr.Boo!の歴史
1976年に香港で封切られた「Mr.Boo!ミスター・ブー」は、その後シリーズ化して数多くの作品が生まれています。その歴史をみてみましょう。
・Mr.Boo!天才とおバカ (日本未公開)
・Mr.Boo!インベーダー作戦 (日本公開1979年)
・Mr.Boo!ギャンブル大将 (日本公開1979年)
・新Mr.Boo!アヒルの警備保障 (日本公開1982年)
・新Mr.Boo!鉄板焼 (日本公開1985年)
・帰ってきたMr.Boo!ニッポン勇み足 (日本未公開)
・新Mr.Boo!香港チョココップ (日本未公開)
・新Mr.Boo!お熱いのがお好き (日本未公開)
・新Mr. Boo!香港グワグワコケコッコ戦争 (日本未公開)
・新世紀Mr.Boo! ホイさま カミさま ホトケさま (日本未公開)
・Mr.Boo!花嫁の父(2004年大阪アジアン映画祭2006で「Mr.BOO! 愛憎バトル」の邦題で上映)
※上記において「日本未公開」とは、劇場上映について
初代が日本で公開された1979年には他にも2作公開されていたり、日本での劇場上映がなかったもののDVDやBlu-ray化された作品が多かったりと、改めてMr.Boo!の人気の凄さに驚かされます。
人気の高かったシリーズ作品
本作品以降10作以上も発表されたMr.Boo!シリーズですが、その中でも特に人気の高かった2作品をご紹介いたします。「Mr.Boo!ミスター・ブー」を見て楽しんだ後は、次はこの辺りをご覧になってはいかがでしょうか?

Mr.Boo!インベーダー作戦
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新Mr.Boo!アヒルの警備保障
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繰り返し見たくなる「Mr.Boo!ミスター・ブー」
昔見たという方から、最近初めて見たという方。
世代は違うかもしれませんが、共通して言えるのが「もう一度見たい」という声の多い事です。
大人になってから見てみたら違う発見・違う笑い方ができたという方、休みがまとめてとれる時はMr.Boo!シリーズをゆっくり見てみたいという方、世知辛いニュースが多い昨今だからこそこの映画で笑いたいという方。
理由は様々ですが、多くの人々に愛される映画という事は間違いないようです。
Mr.Boo!シリーズの中でも最高傑作といわれるこの作品、今度のお休みにはゆっくり見てみませんか?