シャ乱Qが解散をかけて挑んだ『上・京・物・語』
シャ乱Qは、1991年にNHK主催の音楽コンテスト『BSヤングバトル』の第2回グランプリを受賞。
多くのレーベルによって争奪戦が繰り広げられた末、1992年7月にメジャーデビュー。
だが、なかなか売れず次の曲がヒットしなければ契約解除→解散というところまで追い詰められてしまう。
まさに背水の陣のシャ乱Qが勝負曲としてリリースしたのがこの『上・京・物・語』。
夢を叶えるために地方から上京する若者の恋人への未練と葛藤、そして決意を描いた遠距離恋愛ソングである。
大阪出身のメンバー5人が「絶対成功して夢を叶えてやる!」という気持ちを込めた渾身の楽曲であった。

シャ乱Q『上・京・物・語』
シャ乱Q(シャらんキュー)
1988年12月結成。
カタカナ・漢字・アルファベットが混ざった一風変わった「シャ乱Q」のバンド名は、メンバーが所属していたアマチュアバンドの名前「シャッターズ」(しゅう、まことが所属)「RAM(乱)」(つんく、しゅう、たいせーが所属)「QP(キューピー)」(はたけが所属)を寄せ集めたもの。
当初は「シャ乱P」というネーミングにする予定だったが、当時活躍していた女性お笑いコンビ・おきゃんぴーを連想させる、として最終的に「シャ乱Q」となったとのこと。
動画で聴きたい!シャ乱Qの『上・京・物・語』
特徴的なシンセサイザー音に合わせ、「ラン ララララランランランラン」から始まる印象的なイントロ。
ボーカルつんくの鼻にかかったような特徴的な声に乗せられた切ない歌詞。
夢を追い上京する若者の切ない遠距離恋愛を、バラードとしてではなく、あえてテンポが速く賑やかなメロディに合わせることで、より胸のモヤモヤ感が掻き立てられる。
「東京で成功してやる!」という野望や、「このままヒットしなければ…」という焦りなど、シャ乱Q自身の想いが込められているからこそ生まれた曲なのではないか。
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『上・京・物・語』で叶えた念願のヒット
決死の覚悟でリリースした『上・京・物・語』をラジオ局へ積極的に売り込みをかけた。
なお、私がシャ乱Qを初めて知ったのもラジオで聞いた『上・京・物・語』であった。
後にテレビで歌っている姿を見て奇抜な衣装やメイクと、楽曲とのギャップに驚かされた…。
当初はセールスがパッとしなかったものの、テレビ東京系「浅草橋ヤング洋品店」でタイアップに使われると注目度が急上昇。
ほぼ同時にフジテレビの深夜番組「殿様のフェロモン」のオープニングテーマ曲としても使用され、生放送にメンバーとマネージャーが出演してプロモーションを行った。
楽曲の良さやメンバーのインパクトから話題が広がり歌番組へも次々と出演、シャ乱Qの『上・京・物・語』は結果的に12万枚以上を売るスマッシュヒットになった。
作詞をしたまことは、『上・京・物・語』の印税で65万円のロレックス デイトナを購入したという。
シャ乱Q『上・京・物・語』→『シングルベッド』の最強コンボ
『上・京・物・語』のヒットにより、契約解除・解散を免れたシャ乱Q。
次に出したシングル『恋をするだけ無駄なんて』も同じく「浅草橋ヤング洋品店」エンディングテーマに起用されて約11万枚のヒットとなるが『上・京・物・語』を下回る結果となった。
そこで、さらなる飛躍を狙って出された曲が『シングルベッド』だった。
オリコン最高順位は9位であったが、100位以内の登場回数は54回のロングセラーとなり、シャ乱Q初のミリオンセラーとなった。
この『シングルベッド』を『上・京・物・語』の続編として聞くと非常に切ない…。
「ずっと待っている」と言う彼女を残し上京し、夢を叶えて迎えに行くと心に誓ったが…。
結局別れることになってしまったという悲しく切ない物語に。
実際には、『上・京・物・語』と『シングルベッド』とは連続した作品として作られたものではなく、作詞も『上・京・物・語』はまことであるのに対して、『シングルベッド』はつんくである。
両曲の歌詞に共通するのは夢を追う青年と恋人の物語という点だけ。
しかし、同じ年にリリースされた切ない恋愛ソングとして、どうにも繋げて聴いてしまう自分がいるのだった。
2011年、Acid Black Cherryがシャ乱Qの『上・京・物・語』をカバー
ロックバンド・Janne Da Arcのボーカルを務めるyasuのソロプロジェクト・Acid Black Cherryが、2011年3月30日に発売したシングル「少女の祈りIII」のカップリングで、シャ乱Qの「上・京・物・語」をカバーを収録した。
シャ乱Qが再結成後に歌った『上・京・物・語』
2013年、結成25周年を迎えたシャ乱Qが再始動。
大阪城ストリートライブ(通称:城天-しろてん-)での貴重な『上・京・物・語』の演奏動画をご紹介♪
記憶に残したいシャ乱Qの『上・京・物・語』
『シングルベッド』のミリオンセラー以降も、『ズルい女』・『空を見なよ』・『My Babe 君が眠るまで』など多くのヒットを飛ばして、知らない人がいないほどの超人気バンドに上り詰めたシャ乱Q。
結果として、『上・京・物・語』はシャ乱Qのシングル売上TOP10に入っていない。
だが、私にとってシャ乱Qを知った初めての曲であり、この曲がヒットしなければシャ乱Qは解散することになっていたかもしれないという、とても貴重な歌である。
成功する前だったからこその強い想いが込められた『上・京・物・語』は、上京経験者や遠距離恋愛経験者だけでなく、『あの頃は●●を目指していた』という全ての人の記憶に残り続けて欲しい。