大井競馬からの出発
イナリワンは1984年5月27日北海道門別町に産まれた。
父ミルジョージ、母テイトヤシマ。
小柄だかバネがあり俊敏な姿を、大井競馬の福永二三雄調教師に見初められ、
そのキャリアを南関東の大井からスタートさせることになった。
ちなみに福永二三雄は、現JRA騎手・福永祐一の叔父である。

父・ミルジョージ

福永二三雄調教師
いざ中央へ!
1986年12月9日。
デビュー戦で2着に4馬身差をつけて圧勝すると、そこから8連勝。
1988年は苦手の重馬場が続いたこともあり負けを重ねたが、徐々に復調。
かねてから芝向きと思われていたイナリワンは、年末の東京大賞典を優勝したことで
その活躍の場を中央競馬に移すことになった。

1998年 東京大賞典優勝

鞍上は宮浦正行騎手
武豊を背に
中央に入厩してからは、美浦・鈴木清厩舎に入厩。
ひと足先に中央へ移籍していたオグリキャップの活躍もあり、イナリワンの転厩も
話題になったが、中央初戦すばるステークス4着、続く阪神大賞典は5着と期待に
応えられなかった。
この2戦で激しい掛かり癖を見せたことから、当たりの柔らかさに定評がある
武豊騎手に手綱を任せ天皇賞・春に向かうことになった。

美浦・鈴木清調教師
レコードタイムで中央撃破!
イリナワンは当日4番人気。
レースでは、心配された掛かり癖も顔をのぞかせることなく後方を追走。
向正面から徐々に進出を開始すると、4角で先頭集団を捉えにかかった。
直線抜け出すと、あとは独走体勢。
グングンと他馬を引き離し、5馬身差をつけて圧勝。
レコードタイムのおまけつきだった。
Vol.06 中央の年度代表馬に輝いたイナリワン – データ集 | 東京シティ競馬 : TOKYO CITY KEIBA

その強さは本物だった
次に狙うは宝塚記念。
前走とは一転、先行しての競馬となった。
厳しいペースになったが、イナリワンの脚は直線に入っても勢い衰えることはなく
フレッシュボイスの追撃をクビ差しのいでゴール。
地方から転厩して中央のG1を2連勝。
新しいスターの誕生に競馬ファンは沸いた。

今も語り継がれる伝説の名勝負
宝塚記念の後は休養に入り、秋初戦に毎日王冠を選択した。
ついにオグリキャップと初対戦。
このレースから手綱を任されることになったのは、ベテラン・柴田政人騎手。
道中後方を追走していたイナリワンだが、直線に入るとオグリキャップに馬体を
併せてグイグイと伸びてくる。
ゴール前は2頭の激しい追いくらべとなり、懸命に食い下がったが、わずかハナ差で
競り負けてしまった。
平成三強の座危うし
毎日王冠では負けてなお強しの存在感をアピールしたイナリワンだったが、
あの激闘の反動で天皇賞・秋とジャパンカップを凡走。
オグリキャップ、スーパークリークと並び“平成三強”と称されていたイナリワンの存在は
日に日に薄くなり、有馬記念前には完全にオグリキャップとスーパークリークの“二強”
という見方に変わっていた。

オグリキャップ

スーパークリーク
見よ!イナリワンと柴田の底力!
有馬記念当日、オグリキャップとスーパークリークが圧倒的な支持を受けるなか、
イナリワンは4番人気に甘んじていた。
しかしこの時イナリワンの体調は回復しており、鞍上の柴田政人騎手もかなりの
手ごたえを感じていた。
レースでは、ライバル2頭が前を行く展開を後方で追走。
4角で先頭集団に取りつくと、オグリキャップを交わして先頭に立ったスーパークリークを
捉えにかかった。
柴田の渾身のムチに応え、迫るイナリワン。
ハナ差抜け出したところが、3度目のG1制覇となるゴールだった。

1990年12月23日の奇跡
地方から転厩してG1を3勝。
その活躍から1989年の年度代表馬となる。
1990年に入り重賞を3戦。
天皇賞・春ではスーパークリーク相手に善戦するも2着に敗れた。
続く宝塚記念でも4着に敗れ休養に入るが、脚部不安を発症し、そのまま引退となった。
中山競馬場でイナリワンの引退式が行われたのは1990年12月23日。
その数時間後にライバル・オグリキャップが伝説をつくったのは、やはり因縁と
言うべきか。

主な産駒
大井で重賞4勝をあげたイナリコンコルド。
中央でオープンまで昇りつめ重賞戦線でも活躍したシグナスヒーロー。
自身も制した東京王冠賞を勝ち、親子制覇で話題になったツキフクオーなど、父として
個性的な面々を輩出した。

イナリコンコルド

シグナスヒーロー
32歳の大往生
2016年2月7日。イナリワンは、繋養されていた北海道のあるぷすペンションで
老衰のため32歳でその生涯を閉じた。
平成三強の中でいちばんの長生きだった。
ペンションでは、現役時代の気性の激しさはどこへやら、年下馬の面倒をよく見る
穏やかで優しい性格だったという。
イナリワン死す、有馬V柴田政人師「一世一代の競馬。根性がすごかった」 : スポーツ報知
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