ガルベス投手入団の経緯
1996年の春季キャンプ。1人の外国人投手が入団テストを受けていた。後に彼が、斎藤・桑田・槙原の三本柱の穴を埋める活躍をする事も、そしてプロ野球史上に残る「あの1球」を投げる事になる事も、まだ誰も知らない…。

ガルベス選手の投球フォーム
入団の経緯から分かるように、ガルベス投手は入団当時、ガルベス投手はそれほど期待されていませんでした。(ただ、上の画像の様に舌を出して投げる独特な投球フォームに関して少し話題になっていましたが)

伝説の先発三本柱(斎藤・槙原・桑田投手)
この前年のシーズン「先発三本柱」の一角・桑田真澄投手が阪神戦で三塁線沿いに上がった小フライを捕球しようとした際に右肘を強打。側副靭帯断裂の重傷を負った事が主な原因となり、巨人は優勝を逃していました。当時の巨人は桑田投手に代わる先発投手が喉から手が出るほど欲しいチーム状況だったのです。
「メークドラマ」の立役者に
そうして開幕した1996年シーズン、ガルベス投手は先発の一角を勝ち取るものの、気性の荒さも目立ち、5月1日には下の動画の様な乱闘事件を起こしています。
ちなみにこの乱闘をきっかけに、ガルベス投手はこの年のオフ、日本酪農乳業協会のCMに出演。
「カルシウムブソク、シテイマセンカ?」という台詞で人気を博しました。

ガルベス投手が出演したCM
この96年の巨人のチーム状況に話を戻すと・・・今度はシーズン中に三本柱の一角、槙原投手が戦線離脱(終盤に復帰)。登板過多になった中継ぎ陣は崩壊…。と巨人はBクラスに沈んでいました。ところが、7月9日の対広島16回戦の2回に9連打のプロ野球タイ記録で勝つとチームは一気に加速します。最大11.5ゲーム差をひっくり返してのリーグ優勝。これは後に「メークドラマ」(長島監督の造語)と呼ばれます。

「メークドラマ」を達成して、リーグ優勝
この優勝に貢献したのは、打撃陣では仁志敏久・清水隆行選手のルーキーコンビ。本塁打王に1本差の2位と主軸として大活躍した松井秀喜選手。崩壊していた救援陣は途中加入のマリオ投手や日本ハムからFA移籍してきた河野博文投手・・・。と各ポジションの選手が奮起したのは勿論ですが、何といっても斎藤投手と共に16勝(6敗)を挙げて最多勝を獲得したガルベス投手の活躍なしには、この優勝はなかったと言えるでしょう。
96年の日本シリーズを振り返る
この年の日本シリーズ、巨人の相手は「がんばろう神戸」のキャッチフレーズを胸にパリーグを連覇したオリックスでした。この対戦の最大の注目は松井秀喜選手とイチロー選手の「直接対決」でした。

松井VSイチローが実現した96年の日本シリーズ
ただ、イチロー選手は第1戦で決勝本塁打を放つなど活躍したのに対し、松井選手は要所にリリーフ登板した野村投手に完全に抑えられた事も影響して、オリックスが4勝1敗で巨人を下します。
この年の日本シリーズの第2戦に登板して負け投手になっていますが、1年目からガルベス投手は三本柱の桑田投手の穴を生め、巨人の救世主的な大活躍を見せたと言えるでしょう。
球史に残る「あの1球」
翌1997年も先発ローテーションの中心に座ったガルベス投手。打線との兼ね合いなどが原因となり「貯金」を作る事は出来なかったものの、槙原投手と並んでチームトップの12勝(12敗)を挙げます。
ですが、そんな活躍よりもガルベス投手の印象が強いのは、1998年7月31日の阪神タイガース戦で投じた「あの1球」でしょう。
下の画像のガルベス選手の隣にいる「ダンカン選手」がわかった人はよほどの巨人ファンでは?

主審にボールを投げるガルベス選手
この大事件を起こしたガルベス投手に対して、下記の様な処分が下されました。
この試合の後、長島監督が「丸刈り」になった事は大きな話題になりました。

誤解・・・してませんか?
日本プロ野球史に残る一大事件を記憶している方も多いかと思うのですが、この事件がきっかけになってガルベス投手が翌シーズン以降、解雇された・・・と誤解(記憶違い)していませんか?実は契約延長しているのです。もちろん当時もガルベス選手の契約が延長になった事に批判が集まりました。
(この再契約についてセ・リーグの審判団が連盟に対して抗議文を送る程でした)
しかも「あの事件」が起きた翌年の1999年には、調整が遅れていた桑田真澄投手にかわって開幕投手に選ばれているのです(外国人投手の開幕投手は巨人初の事)
この1999年、ガルベス投手は9勝12敗と負け越します。

王監督と長島監督
翌2000年、ジャイアンツはダイエーから工藤公康投手、阪神のダレル・メイ投手、ルーキーの高橋尚成投手ら新加入の投手。そして2年目の上原投手らがローテーションを形成。圧倒的な戦力で優勝を果たすものの、ガルベス投手は0勝6敗と5年目で初めての未勝利に終わり、この年限りで解雇されます。
※日本シリーズは、王ホークス対長島ジャイアンツの「ミレニアム対決」を制して巨人が日本一に。
球歴を振り返ってみてお分かりかと思うのですが、ガルベス投手は斉藤・槙原・桑田のいわゆる「先発三本柱」に衰えが目立った時期から、上原投手、高橋投手といった新たな柱が確立されるまでの間、巨人の先発陣を支えていたのです。ガルベス投手の通算成績は、NPB通算5年で46勝43敗。「あの1球」だけで全てを語れるような選手では決してないと思うのです。