西川のりお   コテコテの大阪弁と捨て身の暴走で全国区へ殴り込み

西川のりお コテコテの大阪弁と捨て身の暴走で全国区へ殴り込み

高校でお笑いの世界に入り、パワフルに空回りしながら下積み時代を過ごし、ヤングOh!Oh!、漫才ブーム、じゃりン子チエ、俺たちひょうきん族で一気に全国のお茶の間に。関西独特のイケイケドンドンの暴走ぶりをみせつけた。


高3の夏休みに同級生に誘われ、初めて花月にいき、初めて横山やすし・西川きよしの漫才をみて、死ぬほど笑ってしまった西川のりおは、同級生と一緒に弟子入り。
5歳上、超マジメで超厳しく、あまり一緒にはいたくないが一生ついていきたいと思う西川きよし。
7歳上、超破天荒で超面白いが、ついていけない横山やすし。
そのギャップに苦しみながら、なんとか弟子を続け、同級生と「淀公一・公二」というコンビでデビュー。
しかし1年で解散。
同級生は、会社勤めを始めたが、目立ちたがり屋で自己顕示欲が強い西川のりおは、すぐに新しい相方をみつけ、新コンビ「横中バック・ケース」を結成。
自作のアカペラソングを歌ったり、緞帳にぶら下がって
「ターザンのように雄叫び」
をやって引きずり下ろしてしまったり、常々『大事にしろ』といわれているマイクにかじりついたりカバーを噛みちぎり、相方のケースに
「そんなことしたら感電するで」
とツッコまれると
「俺はもうシビレとるんじゃ!」
クイズネタで無茶苦茶な問題を出し、ケースに
「なんの関係があるんや」
とツッコまれると
「その答えを待ってたんや!」
といって往復ビンタ。
通常の漫才とは違う種類の笑いを起こし、
(やった)
と思った。
またクロ子として生放送番組に出演したとき、司会が年下の海原千里(上沼恵美子)だったことが気に入らず、いきなり
「俺はブルースリーやぞ!」
と叫んで海原千里(上沼恵美子)の腹部をキックして吹っ飛ばし、テレビ局から出入り禁止を、会社からは謹慎処分を食らった。
西川のりおの型破りで破壊的な芸風は、ウケるときは大きくウケ、ウケないときはまったくウケないが、とにかく常にパワフル。
暴走して自滅してしまうこともあるが、芸人を含めて熱烈なファンは多かった。
「僕はアウトローが好きなんですよ。
笑いってね、悪の部分と正義の部分のちょうど狭間なんです。
笑いって裏切りなんですよ。
僕は毒気が大好きですから。
コイツ、ムチャクチャむしよるなというね。
僕はムチャクチャするけど警察にはお世話になってないです。
ギリギリのところを攻めるというのが大事なポイントです」

ケースとのコンビ仲は悪かった。
あるとき舞台でネタがウケず、相方を客席に投げ落としたところ、今までで1番ウケた。
しかしケースは足を骨折。
その入院中、西川のりおは新しい相方を探し、
「顔の大きさでは勝っているが面白さでは完全に負けている」
という2歳下の上方よしおを見つけた。
上方よしおは、大学受験に失敗し浪人してたとき、松竹芸能の上方柳次・柳太師匠に弟子入り。
「ピンクパンク」「ムチャクチャ」というコンビを経て、「横中バック・ケース」をやっていた西川のりおに
「B&Bの片割れが新しい相方を探しとる」
と島田洋七を紹介され、柳次師匠にも、
「吉本の方が若手はノビノビやれる」
と背中を押され、吉本興業に移籍し、2代目「B&B」を組んだ。
2代目B&Bは、スピードのあるしゃべくりと抜群のセンスで半年後に第4回NHK上方漫才コンテスト最優秀話術賞受賞し、その後も数々の賞を受賞。
フジテレビのバラエティ番組「オールスター90分」に、学業に専念するために活動を休止したあのねのねに代わって2代目「B&B」がレギュラーに抜擢され、これが吉本が東京のテレビ局のゴールデンタイムでレギュラーを持ったのは、これが最初といわれている。
B&Bの漫才をみたザ・ぼんちの里見まさとは、
「もうエエよ!というくらいの大爆笑に次ぐ大爆笑で圧倒された。
正直、負けたと感じた」
といい、18歳の島田紳助は衝撃を受けて、島田洋七と同門に入り(島田洋介・今喜多代師匠に弟子入りし)、金魚のフンのようについてB&Bを研究した。
しかし2代目B&Bは、結成2年後、
「東京で勝負したい」
という洋七に対して、よしおが
「怖い」
と断ったことで仲が悪くなり、最終的に京都花月で大ゲンカをして解散。
上方よしおも新しい相方を探しているところだったのである。

西川のりおは、
「これで新コンビ結成や!」
と思ったが一悶着があった。
B&Bをやめたとき、
「よしおは芸能界を引退する」
と受け取っていた島田洋七の師匠、今喜多代が、
「筋を通してない」
と激怒したのである。
のりおの師匠、西川きよしとよしおの師匠、上方柳太が仲に入って、コンビを組むことを許され、やっと「西川のりお・上方よしお」が誕生した。
礼儀、楽屋マナー、漫才のつくり方、やり方、すべてが漫才師らしい上方よしおは、
「9割アドリブ。
予定調和が嫌い。
ドギマギする自分が好き」
と台本完全無視で暴走する西川のりおに
「相方はアドリブいっぱい入れて来はるんで、ツッコミたるものボケを殺さず、ボケの要望、期待に応えたい」
と正統派なツッコみを入れ続けた。
結局、島田洋七はB&Bで相方を4回変えたが、上方よしおと別れた後、一時的に間寛平とコンビを組んだ。
そして花王名人劇場」に出演したとき、前座で西川のりおが暴走したので島田洋七と間寛平は、まったくウケず、
「客を温めておくのでなく客を疲れさせた」
と激怒した。

「西川のりお・上方よしお」は、最初は前座ばかりで、ギャラは1回1千円。
1ヵ月で10回舞台あって1万円となるがそこから税金を引かれ、もらえるのは9千円。
「少ないギャラから税金とるな。
人でなし」
西川のりおは、そう思いながらアルバイトへ向かい、そしてアルバイト先から花月の楽屋に向かうとき、
「こんなんでどこが芸人や」
と思った。
そして舞台に上がってウケると持ち時間は15分なのに30分やった。
スタッフは合図を出してもやめないので、マイクを切り、それでもやめないので緞帳を下げた。
西川のりおは緞帳の前に出てマイク無しで漫才を続け、客は、その熱意が伝わって大爆笑した。

「休み多いからテレビ好きなだけ観れるんです。
でも芸人にとってテレビは観るもんやなく出るもん。
ホンマ最低の生活やった。
女引っかけても月9千円じゃなんもできへん。
名前は売れてへんわ、金はないわ、やらしてもらいたいわ、どうすりゃええんじゃいうて、いつも泣いとりました」
テレビばかり観ていてもあきるため、散歩に出始めた西川のりおは、最初は10~20分だったが、
「家に帰ってもやることがない」
とどんどん長くなっていき、
「倒れるまで歩いたろ」
と心斎橋、難波、梅田とひたすら街を歩きまくり、逆に体調が悪くなったこともあった。

この街ブラに4歳下の明石家さんまも参加。
昼間からコーヒー1杯で喫茶店に4、5時間居座り、バカ話をしながら外を歩く女性に点数をつけ、夕方になって獲物が増えると、
「パトロール」
に称して、ナンパしにいった。
西川のりおの実家は自転車屋を営んでいて、さんまは、その店舗兼住宅によく泊まった。
「さんま、もっと売れたいなあ」
「売れたいですね」
「今はこんなんやけど将来は俺が全国ネットの番組の司会して、お前はパネラーや」
「そうでんなあ、兄さん」
西川のりおは後輩と夢を語ったが、後年、さんまがバカ売れすると
「逆になっとるやないか!」
と激しく怒り、妬んだ。

「西川のりお・上方よしお」が初めて東京のテレビに出演することが決まると、西川のりおは、すぐに1歳下のザ・ぼんちのおさむに
「ボクら、日本テレビの『ヤジ馬寄席』出てくるわ」
と自慢。
「どこや?」
「大阪の田舎モンには困ったもんやな。
東京や東京。
後楽園ホールや。
日本テレビ、N、T、V。
明日の新幹線は何時だったかな?
「今晩飲み行こか」
悔し紛れに周りを誘うおさむをみながら、西川のりおは
(勝った!)
と思った。
ちなみに明石家さんまは3歳上のぼんちおさむの家にも泊まったこともあるが、マジメなおさむが夜中、何度も、頭を叩くフリをしながら舌で音を鳴らす練習や、
「オッ、オッッッ、おさむちゃんで~す!」
の練習をして、顔を真っ赤にしてジャンプしまくるため、まったく眠れなかった。

吉本からもらう給料が月7~10万円になった西川のりおは、その多くをオシャレに投資した。
舞台衣装は、ほとんどをブランド品で揃え、ズボンの折り目などはキッチリしてないと気がすまず、靴も、いつもピカピカに磨いた。
私服や衣装にお金をかける一方、西川のりおは、桂文珍、前田五郎と並んで「吉本3大ケチ」といわれるほど財布のヒモが固かった。
芸人仲間で飲食したとき、
「お勘定、まかせなさい」
ということは、まずない。
それどころか誘われると必ず
「すまんな」
という。
だから西川のりおの財布の中をみた者は誰もいない。
新幹線に乗ると降りた客が残していった雑誌をすべて回収し
「儲かったな!」
高額のギャラが入ると
「パッと使うとか怖くてできへん」
とそっくり貯金し、破天荒キャラと真逆の堅実さをみせた。

政府が発表する「高額納税者公示制度」、通常「長者番付」(2006年に廃止)を、明石家さんま、島田紳助などの順位と納税額を蛍光ペンを持ちながらチェック。
少し歳下のさんまや紳助に加え、かなり離れたダウンタウンやナインティナインもランクに入ってくるようになり、彼らをテレビで観ると、
「この番組1本出たら、それこそちょっとした自動車買えるくらいもらってるん違うか」
「あのCMは、1億3千万くらい会社に入ってきて、アイツは1億ほどもらうんちゃうか」
「年間契約料とロイヤリティーと・・」
などと思ってしまい、
「家でテレビを観てても、いっこもオモロない!
体に悪いわ!」
と激怒。
バブル絶頂期には不動産などのサイドビジネスに手を出して大損し、そのことを著書「のりおのゼニはこう貯めるんや! 1千万はすぐ手にできる」「オレの銭かえせ!!―バブル崩壊西川のりお大爆発」につづった。

大阪の若手芸人にとって「ヤングOh!Oh!」は、憧れの番組だった。
番組の起こりは、桂三枝。
弟子入り後、1年足らずで深夜ラジオ「歌え!MBSヤングタウン」のパーソナリティに抜擢されると
「ひとりぼっちでいる時のあなたにロマンチックな明かりを灯す、 便所場の電球みたいな桂三枝です」
という独特の語りかけや
「オヨヨ」
「いらっしゃーい」
というギャグでブレイク。
「ヤングOh!Oh!」は、「歌え!MBSヤングタウン」のテレビ版で、合言葉は「若者の電波解放区」
司会は桂三枝と笑福亭仁鶴が行っていたが、すぐに横山やすし・西川きよしも加わり、吉本芸人による大喜利、コント、漫才、トークをメインに、多彩なゲストが登場し、アイドルが歌を歌った。
桂三枝は
「あっち向いてホイ!」
「さわってさわってナンでしょう(箱の中身はなんだろな)」
「たたいて・かぶって・ジャンケンポン」
などのゲームを考案。
吉本にとって「ヤングOh!Oh!」は、新喜劇や劇場中継以外の初めての番組だったが、爆発的な人気を得て、松竹芸能が独占していた上方のお笑い勢力図を逆転させた。

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