80年代の日本アート・シアター・ギルドの作品紹介

80年代の日本アート・シアター・ギルドの作品紹介

ATGこと日本アート・シアター・ギルド。映画好きにはこたえられない優れた作品を配給し続けたことで知られています。今回は若手の映画監督を積極的に起用した80年代の代表作を紹介します。


ATGでも商業的に成功する作品を送り出せるということを証明した作品です。これは嬉しい。ATGを応援するものとしては嬉しい限りですよ。
良い作品だからといってヒットするとは限りませんが、ヒットしたものは良い作品と言えるのかもしれません。少なくとも「家族ゲーム」は素晴らしいです!

家族が横一列に並ぶちょっと異様な食事シーンが公開当時話題となりました。
それよりも「家族ゲーム」を観ていてアレッと思うのは、主題歌や劇伴などの音楽が一切入っていないという点です。これが「家族ゲーム」の大きな特徴です。

それはそれとして、個人的に最も驚いたのは、松田優作が短髪になってる!このことでした。

第57回キネマ旬報ベスト・テン日本映画部門:第1位、第7回日本アカデミー賞の優秀作品賞をはじめとして、第26回ブルーリボン賞、第38回毎日映画コンクール、第8回報知映画賞、第5回ヨコハマ映画祭、第24回日本映画監督協会新人賞などなど各映画賞の各部門賞を総なめにしています。

お葬式

おそらく「家族ゲーム」の大ヒットと無関係ではないと思われます。ATGは1984年には6作品を配給しております。
大林宣彦監督「廃市」、橋浦方人監督「蜜月」、池田敏春監督「人魚伝説」、石井聰亙監督「逆噴射家族」、寺山修司監督「さらば箱舟」、そして伊丹十三が監督した「お葬式」です。
「お葬式」、いやぁ、大ヒットしましたねぇ!

監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
製作:岡田裕、玉置泰
製作総指揮:細越省吾
出演者:山﨑努、宮本信子、菅井きん、大滝秀治、奥村公延、笠智衆、藤原釜足、津川雅彦
音楽:湯浅譲二
撮影:前田米造
編集:鈴木晄
製作会社:ニューセンチュリープロデューサーズ、伊丹プロダクション
配給:ATG
上映時間:124分

お葬式

「お葬式」は伊丹十三の映画監督としてデビュー作です。1962年に伊丹一三名義で「ゴムデッポウ」という作品を監督しており、役者としてのキャリアがあったとはいえ、あまりにも見事な初監督作品。出来過ぎなんじゃないかとさえ思えます。

題材が題材ですからATG関係者もこれほどヒットするとは思っていなかったのではないでしょうか?笑いあり、涙あり、エロありで申し分のないエンターテインメントとなっています。
葬式という重いテーマでありながら笑えるシーンが満載です。人間というのは滑稽な生き物ですね。

見どころは菅井きん演じる雨宮きく江の最後の挨拶シーン。まぁ、泣きますね。日本アカデミー賞 最優秀助演女優賞を受賞したのも納得の演技を見せてくれます。

「お葬式」は他にも、日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞(山崎 努)、最優秀作品賞、最優秀監督賞、 最優秀脚本賞をはじめ各映画賞を総なめにしました。
あ、キネマ旬報ではめでたくベスト1に輝いています!

台風クラブ

「お葬式」がヒットしたにも関わらず1985年は森崎東監督の「生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ」と相米慎二監督の「台風クラブ」しか配給できなかったかったのは何故なのでしょうか?映画ビジネスってやはり難しいんですね…
いや、「お葬式」」がヒットしたからこそ、2本配給出来たのかもしれないですね。そう考えると映画ビジネスってとてもとても難しい。

で、この2作品は共にATGらしいと言えます。映画好きの間では話題になりましたし、評価も高かったんですよね。

監督:相米慎二
脚本:加藤祐司
製作:宮坂進
出演者:三上祐一、紅林茂、松永敏行、工藤夕貴、大西結花
音楽:三枝成彰
撮影:伊藤昭裕
編集:冨田功
製作会社	ディレクターズ・カンパニー
配給:ATG、クズイ・エンタープライゼズ、 A PEOPLE CINEMA
上映時間:115分

台風クラブ

台風接近と共にタガが外れる中学生たち。思春期を迎えた不安定な少年少女たちを独特の視線で描いた作品です。少年少女たちは何故タガが外れるのか?と言われると、それは分かりません。おそらく明確な答えは誰も持っていないのではないでしょうか?思春期ってそんなもん。うまく言葉には出来ないですよね。それを映像にした作品です。

因みに監督の相米慎二は新人というわけではなく、既に薬師丸ひろ子主演の「翔んだカップル」「セーラー服と機関銃」を大ヒットさせ、「魚影の群れ」という素晴らしい作品をものにしていました。
新人監督には撮れない作品と言えるのではないでしょうか。

忘れてはならないのが「台風クラブ」は、工藤夕貴を一躍有名にした作品でもあります。それだけに彼女の存在感は素晴らしい!

良い映画なんですけどねぇ。商業的に成功したのかといえば「厳しい」と言わざるを得ない結果だったのではないかと思います。
ただ「台風クラブ」は、アメリカや中国でも公開されていますし、「ラストタンゴ・イン・パリ」や「ラストエンペラー」などで知られるイタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督がインスパイアされたと発言していることからも日本映画としては一定以上の評価を得たのではないでしょうか。

第1回東京国際映画祭ヤングシネマ部門大賞。第7回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞(大西結花)などを受賞しました。

君は裸足の神を見たか

商業的には大成功とはいかなかったように思えますが、1986年製作の「君は裸足の神を見たか」は青春映画の最高傑作と、私は思っています。
この映画を観たことがない、若しくは聞いた事すらないという方が多いと思いますが、どうか騙されたと思って観て頂きたい。
騙されたと思って観てみたら本当に騙されたという事はよくある話ではありますが、それでもお願いします。「君は裸足の神を見たか」を騙されたと思って観てください。埋もれたままにしておくには勿体ない作品なんですよね。

監督:金秀吉
脚本:西村宣之
出演者:石橋保、児玉玄、洞口依子
音楽:毛利蔵人
撮影:金徳哲
編集:浦岡敬一
配給:ATG
上映時間:100分

君は裸足の神を見たか

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