【マイル戦全勝の女王】フーちゃんの愛称で親しまれたノースフライト

【マイル戦全勝の女王】フーちゃんの愛称で親しまれたノースフライト

生涯成績11戦8勝、2着2回。マイル戦5戦全勝。GIマイル春秋連覇。コースレコード2度記録。これだけの実績がありながら、その後語られることの少ない名牝がいます。その名はノースフライト。愛称はフーちゃん。かつて "マイルの女王" と呼ばれ、わずか1年半の競走馬生活を一気に駆け抜けた、彼女の足跡をたどります。


愛称はフーちゃん

ノースフライトは、
父 トニービン 母 シャダイフライト
の間に誕生した、鹿毛の牝馬です。

生産は、老舗の大北牧場。
社台グループ主催のセリ市で、トニービンの仔を宿したシャダイフライトを最安値で落札したのが最初です。1990年4月12日、無事にノースフライトを出産しました。

ファンからは、"フーちゃん" の愛称で親しまれました。名付け親は、厩務員なりたてだった石倉幹子さん。当時は、女性厩務員がめずらしく、ノースフライトとともに話題になりました。

デビューからGI好走まで

遅かったデビュー戦

同世代のクラシック戦線では、同じトニービン産駒のウイニングチケットやベガが活躍する中、ノースフライトはまだデビューさえしていませんでした。初陣は1993年5月、4歳になってからの未出走戦でした。

その初戦を9馬身差の圧勝。続く2戦目も8馬身差の勝利。ともに能力の差を見せつけ、目標レースを、当時牝馬三冠レースの一つだったエリザベス女王杯に据えます。

GI好走 一躍注目馬に

秋は、府中牝馬ステークス(GIII)を勝利し、本番のエリザベス女王杯(GI)を迎えます。鞍上は、前走からコンビの角田晃一。

ローズステークスを勝ったスターバレリーナが1番人気、三冠を狙うベガが2番人気。2400メートルの距離適性が不安視されたノースフライトは、5番人気に甘んじました。

しかし、レースでは、その不安を払拭するかのように、道中はベガの前につける好位。最後の直線ではベガを突き放し、ついに先頭に立ちます。惜しくも、最後の最後はホクトベガに交わされますが、結果は堂々の2着。デビューからわずか半年での快挙です。

続く阪神牝馬特別(GIII)は、鞍上に武豊を迎え快勝。一躍注目馬となります。

マイルの女王へ

ステップレースを勝利

5歳古馬となった翌1994年。最初のレースは、マイルの京都牝馬特別(GIII)でした。このレースを6馬身差で完勝します。

続く読売マイラーズカップ(GII)も、後のGI馬、マーベラスクラウン、ネーハイシーザーを抑えて、勝利しました。

圧巻のGI初制覇

そして、本番の安田記念(GI)。前年から国際競走になったことから、上位人気はスキーパラダイスやサイエダティら外国馬が独占しました。ノースフライトは5番人気。鞍上は再び角田晃一です。

レースは、道中ハイペースで流れる中、ノースフライトは後ろから3頭目の後方待機。4コーナーを曲がって直線に出ると、一気に加速し、先行する外国馬勢をまとめて交わします。あっという間に先頭に立ち、そのままゴールイン。終わってみれば、末脚炸裂、2馬身半差の圧勝劇でした。

ついにGIを勝利。しかもマイルは無敗。いつの頃からか "マイルの女王" と呼ばれるようになっていました。次の目標レースは秋のGI、マイルチャンピオンシップ(GI)です。

ラストフライトへ

ライバルの登場

秋は、前哨戦のスワンステークス(GII)から始動。このレースには、一度叩いて好調のサクラバクシンオーも出走しました。

結果は、サクラバクシンオーから1馬身1/4差遅れての2着。1400メートルで、ノースフライトには距離が短いとは言え、この年初めての敗北となりました。マイル春秋連覇に立ちはだかるライバルの登場です。

そして、ノースフライトが次走マイルチャンピオンシップ(GI)を最後に引退することが発表されます。

ライバルとの最終決戦。舞台は整いました。

最強マイラー有終の美

迎えたラストレース、マイルチャンピオンシップ(GI)。ノースフライトは、単勝1.7倍の1番人気に支持されました。2番人気はもちろん、ライバルのサクラバクシンオーです。

TRJN - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:North-flight.jpg#/media/ファイル:North-flight.jpgによる

レースは、先行するサクラバクシンオーの後ろに、ノースフライトがピッタリ付く展開。ライバルをしっかりマークします。4コーナーでサクラバクシンオーが先頭に出ると、これを追走。最後の直線では、2頭が抜け出し一騎打ちの様相を見せますが、最後はノースフライトが交わし、1馬身半差を付けての勝利。鮮やかな "ラストフライト" でした。

走破タイム1分33秒0。
京都競馬場の従来の記録を0秒3も更新する、当時としては驚異的なコースレコードです。

これで、安田記念、マイルチャンピオンシップと、同一年度の春秋マイルレースを連覇し、1985年のニホンピロウイナー以来の快挙を果たしました。

最強のまま、惜しまれつつ引退。
サクラバクシンオーを管理する境勝太郎調教師の、レース後のコメントが印象的です。

引退後

引退後は、翌1995年から繁殖牝馬となりました。あいにく目立った活躍馬は出なかったものの、サンデーサイレンスとの子ミスキャストが、後に種牡馬となり、天皇賞馬ビートブラックを輩出しました。

2011年で繁殖を引退。功労馬として余生を過ごし、2018年1月22日、28歳でその生涯を閉じました。

語り継いでいきたい最強マイラー

生涯成績11戦8勝、2着2回。マイル戦は5戦全勝、コースレコードを2度記録。しかも、GI競走の2レースは、いずれも1馬身超の差をつける完勝でした。

エリザベス女王杯2着で注目を集めてから、引退レースまでわずか1年。これだけの活躍をしながら、最強マイラーとしてあまり名前が挙がってこないのは、レース同様、競走馬としてのキャリアをあまりにも速く駆け抜けてしまったからなのかもしれません。

ノースフライトは、いや、フーちゃんは、ずっと語り継いでいきたい最強のマイラーです。

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