デカすぎてハミ出てしまう男 篠原信一(1) オリンピックすら凌駕するデカさ

デカすぎてハミ出てしまう男 篠原信一(1) オリンピックすら凌駕するデカさ

史上最強クラスの強さでシドニーオリンピックに乗り込み、誤審により銀メダル。しかし一切、審判を批判せず「自分が弱いから負けた」の一言だけ。侍のような精神力的強さも見せつけた。


記者会見が終わるとドーピング検査があった。
大量の汗と涙を流したためか、なかなかオシッコが出ず、水を飲んで出るのを待った。
長引いた検査を終え、ロッカーを出ると、最終日だったので会場の撤収作業が始まっていた。
日本のチーム関係者も、役員もみんな帰ってしまっていたが、野村忠宏だけが待っていてくれた。
作業で騒然とする通路で何時間も1人で待っていた野村忠宏は頭を下げた。
「先輩、お疲れさまでした」
この大会で金メダルを獲得した野村忠宏は、篠原信一のバッグを持ったり、会場を出て焼肉を食べるときも積極的にバカ話をして優しさをみせた。
「ヒロが1人で待っとってくれたんです。
自分にどう声かければいいんだって、あんな試合の後ですから、そりゃあアイツも困っとったでしょうね。
でもあのときヒロの顔みてハッと我に返った感覚になれましたね。
そうだ、もう切り替えようって」
篠原信一は感動したが、帰国後、天理で行われたパレードでは、
「先輩、銀ですからね。
自分より目立っちゃ駄目ですよ」
といわれた。

オリンピック後、篠原信一の「弱いから負けた」発言は、
「柔道の精神そのもの」
「潔い」
「まさに侍」
と絶賛され、全柔連には、篠原信一を称え、慰め、励ますメッセージが殺到した。
「篠原が『自分が弱いから負けた』といってくれたから日本の威信が保たれた」
という柔道関係者も多かった。
篠原信一はありがたいなと思ったが、中でもある幼稚園の子供たちが折り紙とボール紙でつくってくれた金メダルをみたとき思わず涙をこぼしてしまった。
世間に美談として持ち上げられて、篠原信一は最初はとまどっていたが、やがて
「持ち上げてくるならノッてやろう」
と思うようになった。
柔道は決して天才ではなかったが「調子ノリ」という競技があれば確実に金メダルの篠原信一は、面白トークを展開していった。

シドニーオリンピックが終わった後、ドゥイエは引退。
主審を務めたMonaghan Craigは脅迫状が送りつけられ、ニュージーランドの自宅にまで取材が押しかけてきた。
技が決まって2人が倒れたとき、主審のMonaghan Craigは彼らの背中側からみていたが、その逆側からみていた副審のMattar Emanoelは「1本」のジェスチャーをしている。
副審のMattar Emanoelは、試合後、
「どちらに技に1本としたのか?」
と確認されると
「日本」
と答えた。
日本代表監督だった山下泰裕は
「篠原選手の1本。
主審は内股すかしを見極められていない」
と主張したが、主審が内股すかしを知らなかった可能性もあった。
柔道が国際化を急いだ結果、起こった審判レベルの格差も誤審の一因とされ、シドニー後、各国で審判の研修会が頻繁に行われるようになった。
数年後には国際柔道連盟が

・審判の判定を検証、訂正するジュリー(審判委員)制度
・2台のビデオカメラで2方向から撮影し判定をサポートするビデオ判定制度

を導入した。
デカすぎる男、篠原信一の功績は大きかった。

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