プロ野球界を震撼させた黒い霧事件

プロ野球界を震撼させた黒い霧事件

日本プロ野球における裏のプロ野球史となってしまったのが、1969年に発覚した「黒い霧事件」。プロ野球の関係者が金銭にまつわる八百長に関与したとされる事件です。新聞で報道されたことがきっかけになり、1969年から1971年にかけて、複数にの関係者が次々と発覚していきました。


黒い霧事件の概要

今や国民的なスポーツとして親しまれている日本プロ野球。長い歴史の中で、闇の歴史とも言える黒い霧事件は、今でもプロ野球界の汚点となって語り継がれています。この事件は、暴力団が絡んだ野球賭博が発端となり、プロ野球関係者が金銭のために行った八百長に関わる一連の疑惑および事件です。新聞などの報道から世間に知られることとなり、1969年からの2年間に渡ってさまざまな経過をたどった末に、相次いで新事実が発覚していきました。

日本野球機構は、八百長への関与について「敗退行為」に該当するとの見解を発表しています。そのため、関与が疑われた現役選手には、厳しくは球界追放となる永久出場停止、更には長期間の出場停止や年俸減額などの処分が下されました。そして、処分が下された選手の中には、同時期に発覚したオートレースの八百長事件にも関与たとされています。この事件では、現役のオートレース選手が19名も逮捕される事態になりました。

西鉄ライオンズの失墜

この黒い霧事件では、1球団だけにとどまらず、多くの球団で処分者を出したのも特徴になっています。特に、投手陣の中心的な存在となっていたエースの池永正明を始めとして永久追放処分者が3名と、1年間出場停止処分者になった2名が在籍していた西鉄ライオンズは著しい戦力低下が否めず、1970年には球団初の最下位に。その後1972年までの3年間を連続最下位というに不名誉を味わうことになります。地元での人気も急加速で落ち込み、経営までもが不振に落ちった西鉄球団は、1972年のオフに身売りされることになってしまうのです。

事件に関与した選手の処分は

八百長に加担した選手の多くは投手でしたが、中には捕手や内野手も含まれています。処分を受けた選手19名で、所属する球団も8球団に渡っていて、黒い霧事件がいかに広がっていたかがわかりますね。実は、もっと以前から八百長に関わった選手もいたそうですが、すでに引退をしていた選手は、処分から外れています。しかし、指導者として球界に復帰するようなことはなかったそうです。

処分では、永久追放処分が6名・処分名は違っても事実上の永久追放が3名と、最も厳しい内容となりました。1年間の野球活動禁止が2名に、3か月の期限付失格選手に指名が1名。1か月の謹慎処分と無期限出場停止と減給処分が各1名で、戒告処分が2名、厳重戒告処分1名、厳重注意処分が1名となっています。処分を受けた選手のほとんどがチームに中心選手ばかりで、突然に主力を失った球団はメンバーのやり繰りに苦心したことでしょう。

永久追放処分の解除

永久追放処分を受けた池永の処分解除を求めて、処分後間もない時期から数多くの野球関係者や著名人が参加し「池永復権会」運動を開始。20万近い署名を集めて嘆願書と署名を提出したけど却下されるの繰り返しが続きます。しかし、復権運動に向かって風が吹いたきっかけが、2001年にプロ野球マスターズリーグが池永の選手登録を認めたことです。稲尾監督の福岡ドンタクズに入団した池永は、12月25日に福岡ドームで開催された対名古屋80D'sers戦に先発、3回を無安打・無失点に抑えて交代します。その試合後のインタビューで池永は、(永久追放処分については)もう許していただきたいとのコメントを残しました。

2002年、処分嘆願却下に対する反論書を添えて、12球団のオーナーとコミッショナー事務局へ、再度「池永復権会」が嘆願書を提出します。この請願については再び事務局から却下されたのですが、3年後の2005年3月1日のコミッショナー実行委員会と3月16日に開催されたオーナー会議において、不正行為とその処分について話し合われます。その時、ついに処分対象者からの申請によって、球界への復帰の可能性がでてきました。この規約改正により、2005年、球界復帰を申請した池永に復権が認められました。その後の池永は、2011年まで山口県の社会人野球クラブチームの監督となり、2008年からプロ野球マスターズリーグの活動休止となる2010年までは、福岡ドンタクズの監督も務めていました。

黒い霧事件をプラスにした選手

多くの処分者が出て球界を去る選手もいた中、一方ではこの事件をきっかけにして野球人生に花を咲かせた選手もいました。その選手は、1968年にドラ1西鉄に入団した東尾修です。入団1年目の東尾は二軍の試合でも結果が出ず、野手転向を考えていたほどでした。しかし殺い霧事件によって究極の投手不足に陥った西鉄ライオンズにおいて、東尾は一軍の主戦としてフル回転することになったのです。後に、数回の身売りを経て西武ライオンズ時代までエースとして活躍することに。

後に東尾は、黒い霧事件が野球人生にとって最大のチャンスだったと述べています。しかし実力が伴わないうちから登板し、しかも弱小球団で投げ続けたことから、200勝を達成した投手としては梶本隆夫以来2人目の200勝よりも早く200敗した投手になっています。最終的には、251勝をした大投手として引退しました。ただ引退の原因は、高レート麻雀賭博への関与があったことからの謹慎処分でした。

選手個人で八百長ってできる?

ところでチームで行われる野球で、八百長を成立させることはできるのでしょうか。投手なら、打ち易い球を投げることはできますが、すぐに捕手から注意があるでしょうし、球威がないと判断されたら交代させられます。実際に野球賭博を行った暴力団関係者は、西鉄選手を買収し八百長試合を10回行ったが成功は僅か2回のみで、4500万円近い借金ができたそうです。

個人競技なら八百長も可能でしょうが、野球で勝負を操作するのは、かなりの至難の業となるでしょうね。あまりにわざとらしいエラーや三振などしたら、すぐにおかしいってわかってしまします。もともと無理があったと思われますが、やっぱりお金の魅力に勝てなかったのでしょうか。それでも一線級の選手ばかり、現在のような年俸なら八百長などに手を出さなかったでしょうね。

関連するキーワード


プロ野球 事件 1969年

関連する投稿


【野球選手から俳優!?】板東、長嶋、イチロー・・・人気ドラマに出演した元プロ野球選手!

【野球選手から俳優!?】板東、長嶋、イチロー・・・人気ドラマに出演した元プロ野球選手!

プロ野球選手が引退後、タレントとして新たな道を歩むケースは数多く見られます。その中には、俳優業にまで進出し、映画やドラマで活躍する人も少なくありません。今回は筆者の独断と偏見に基づき、人気ドラマに出演した元プロ野球選手の中から、特に印象に残っている面々をご紹介します。


“竹やぶの大金”を思い出す!群馬県前橋市のごみ集積所で現金約600万円が発見される!!

“竹やぶの大金”を思い出す!群馬県前橋市のごみ集積所で現金約600万円が発見される!!

7月8日、群馬県前橋市の住宅街にあるごみ集積所で約600万円の現金が見つかったことが公表され、SNSなどで大きな話題となっています。


緊急刊行!長嶋茂雄さんの追悼特集号『NumberPLUS 長嶋茂雄』(仮)が6月26日に発売決定!!

緊急刊行!長嶋茂雄さんの追悼特集号『NumberPLUS 長嶋茂雄』(仮)が6月26日に発売決定!!

6月3日に長嶋茂雄さんが89歳で死去したのを受け、文藝春秋が刊行するスポーツ総合誌『Sports Graphic Number』より、「ミスタープロ野球」としてファンに愛された国民的スーパースターである長嶋さんの功績をたたえた追悼特集号『NumberPLUS 長嶋茂雄』(仮)の発売が決定しました。


【訃報】巨人軍終身名誉監督・長嶋茂雄さん死去。3月には大谷翔平との“対決”が話題に

【訃報】巨人軍終身名誉監督・長嶋茂雄さん死去。3月には大谷翔平との“対決”が話題に

プロ野球界における伝説的存在“ミスタープロ野球”こと長嶋茂雄(ながしま しげお)さんが3日、肺炎のため東京都内の病院で亡くなっていたことが明らかとなりました。89歳でした。


【藤川球児】広末涼子と同級生!? 火の玉ストレート誕生前の球児の球歴

【藤川球児】広末涼子と同級生!? 火の玉ストレート誕生前の球児の球歴

2025年より阪神タイガースの監督に就任した藤川球児。現役時代は、"火の玉ストレート" と呼ばれる "魔球" で活躍した名投手ですが、魔球誕生以前にもたびたび話題になっていた選手でした。球児という名前、ドラフト1位、広末涼子と同級生など、火の玉ストレート誕生前の藤川球児のエピソードを振り返ります。


最新の投稿


プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

新日本プロレスの“100年に一人の逸材”棚橋弘至氏による著書『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』が2025年12月18日にKADOKAWAより発売されます。引退が迫る棚橋氏が、26年の現役生活で培った視点から、プロレスの魅力、技の奥義、名勝負の裏側を徹底解説。ビギナーの素朴な疑問にも明快に答え、プロレス観戦をさらに面白くする「令和の観戦バイブル」です。


ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

小学館クリエイティブは、ウルトラマンシリーズ60周年、『小学一年生』100周年の節目に『学年誌 ウルトラふろく大全』を11月28日に発売しました。『ウルトラQ』から『ウルトラマン80』までの学年誌・幼児誌のウルトラふろく200点以上を網羅的に掲載。組み立て済み写真や当時の記事も収録し、ふろく全盛時代の熱気を再現します。特典として、1970年の人気ふろく「ウルトラかいじゅう大パノラマ」を復刻し同梱。


伝説のプロレス団体 UWF40周年記念イベント“無限大記念日”開催!

伝説のプロレス団体 UWF40周年記念イベント“無限大記念日”開催!

伝説のプロレス団体『UWF(ユニバーサル・レスリング・フェデレーション)』が、設立40周年を記念し、特別イベント「無限大記念日」を書泉ブックタワー(東京・秋葉原)にて開催します(2025年12月24日~2026年1月12日)。第1次UWFの貴重な試合映像や控室、オフショットなど、4,000枚以上のアーカイブから厳選された写真が展示されます。復刻グッズや開催記念商品も販売され、当時の熱狂が蘇ります。


グラニフ×『幽☆遊☆白書』初コラボ実現!幽助、蔵馬、飛影など全21アイテム登場

グラニフ×『幽☆遊☆白書』初コラボ実現!幽助、蔵馬、飛影など全21アイテム登場

株式会社グラニフは、TVアニメ『幽☆遊☆白書』との初コラボレーションアイテム全21種類を、2025年12月2日(火)より国内店舗および公式オンラインストアで販売開始します。主人公の浦飯幽助をはじめ、桑原、蔵馬、飛影のメインキャラクターに加え、戸愚呂、コエンマなど欠かせないキャラクターをデザイン。11月26日より先行予約も開始され、ファン必見のラインナップです。


全長20cmの迫力!1/18スケール『国産名車コレクション』創刊

全長20cmの迫力!1/18スケール『国産名車コレクション』創刊

アシェット・コレクションズ・ジャパンは、隔週刊『1/18 エクストラスケール 国産名車コレクション』を2026年1月7日に創刊します。全長約20cm、1/18スケールのダイキャスト製で、日本の自動車史を彩る名車を精巧に再現。ボディラインやエンジンルーム、インパネなどの細部ディテールにこだわった「エクストラ」なコレクション体験を提供し、マガジンでは名車の開発秘話や技術を深掘りします。