第13回日本アカデミー賞
第13回日本アカデミー賞は1990年2月23日に東京プリンスホテルで開催された日本アカデミー賞発表・授賞式である。司会は西田敏行と島田陽子。
最優秀作品賞『黒い雨』
『黒い雨』は、1965年に出版された井伏鱒二の同名小説の映画化作品。広島に投下された原爆がの後に降った“黒い雨”を浴びてしまった若い女性の人生を中心として、彼女を見守るおじ・おばの夫婦や原爆後遺症に悩まされる人々の姿をモノクロームで描写している。
第42回カンヌ国際映画祭 高等技術委員会グランプリを受賞した。

黒い雨
優秀作品賞は以下の通り。
あ・うん
社葬
本覺坊遺文 千利休
利休
最優秀監督賞:今村昌平『黒い雨』
今村昌平監督は東京都出身。『にっぽん昆虫記』や『赤い殺意』で世間に知られるようになった。『楢山節考』でカンヌ国際映画祭の最高賞(パルム・ドール)を受賞。しかし、姥捨て山の話など外国人に分かるわけがなくどうせ受賞しないと言って映画祭を欠席していた。
『黒い雨』は20数社に出資を断られて資金調達に苦労した作品。カンヌでは無冠に終わったが、日本人にとっては戦争の記念碑的な映画になっている。

今村昌平
優秀監督賞と作品は以下の通り。
熊井啓(本學坊遺文 千利休)
勅使河原宏(利休)
降旗康男(あ・うん/極道の妻たち 三代目姐/将軍家光の乱心 激突)
舛田利雄(社葬)
最優秀主演男優賞:三國連太郎『釣りバカ日誌』『利休』
三國連太郎は群馬県太田市出身。息子に俳優の佐藤浩市がいる。「三國連太郎」は、デビュー作である木下恵介監督の映画『善魔』での役名を芸名にした。この時の演技により第2回ブルーリボン新人賞を受賞している。
『釣りバカ日誌』では鈴木一之助(スーさん)役、『利休』では千利休役を演じており、毎日映画コンクールの男優主演賞、報知映画賞の主演男優賞にも輝いた。

三國連太郎
優秀主演男優賞は以下の通り。
緒形拳(社葬/将軍家光の乱心 激突)
奥田瑛二(本學坊遺文 千利休)
高倉健(あ・うん)
ビートたけし(その男、凶暴につき)
最優秀主演女優賞:田中好子『黒い雨』
田中好子は 東京都足立区出身。キャンディーズの「スーちゃん」としてアイドル歌手をしていたことで広く知られている。
『黒い雨』では主人公の高丸矢須子役を演じて高く評価された。矢須子の原爆症を表現するため、入浴シーンでは体の変化を見せるべくあえてヌードとなるなどした。この日本アカデミー賞のほか、ブルーリボン賞・キネマ旬報賞・毎日映画コンクール・報知映画賞などで主演女優賞を受賞。

田中好子
Amazon.co.jp: 好子(紙ジャケット仕様): 音楽
優秀主演女優賞は以下の通り。
古手川祐子(花の降る午後)
十朱幸代(社葬/ハラスのいた日々)
富司純子(あ・うん)
三田佳子(男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日/極道の妻たち 三代目姐/利休)
最優秀助演男優賞:板東英二『あ・うん』
板東英二は満州国虎林生まれ、徳島県板野郡板東町(現:鳴門市)育ち。高校野球時代には投手として数々の記録を打ち立てた。プロ野球選手としては中日ドラゴンズに所属。引退後はタレントになり人気を集める。
『あ・うん』では製薬会社のサラリーマンである水田仙吉役を演じて受賞した。

板東英二
優秀助演男優賞は以下の通り。
江守徹(社葬)
橋爪功(キッチン/ジュリエット・ゲーム/善人の条件)
山崎努(ハリマオ/舞姫/利休)
萬屋錦之介(本學坊遺文 千利休)
最優秀助演女優賞:市原悦子『黒い雨』
市原悦子は千葉県千葉市出身。夫は舞台演出家の塩見哲。2度流産して子どもには恵まれなかったが、おしどり夫婦として有名。
1983年のテレビドラマ『家政婦は見た!』では主演をつとめ、これが当たり役となって四半世紀以上に渡って演じ続けた。
『黒い雨』では主人公の矢須子の叔母である閑間シゲ子を演じている。

市原悦子
優秀助演女優賞は以下の通り。
桜田淳子(花の降る午後)
富田靖子(あ・うん)
宮本信子(あ・うん)
吉田日出子(社葬)