1989年、北海道・大雪山山系旭岳で謎の「SOS」が発見された事件を覚えてますか?
皆さんは「SOS遭難事件」を覚えていますでしょうか?1989年に北海道・大雪山系旭岳で発覚した遭難事件で、倒木で作られた謎の「SOS」の文字、そして「助けてくれー」という声が録音されたカセットテープの存在など、ミステリアスな要素が散りばめられた怪事件の一つです。この記事では、平成初期に発覚したSOS遭難事件について紐解いてみたいと思います。
こちらが発見された「SOS」の文字。

1989年7月24日、別の遭難者の捜索中に偶然「SOS」の文字を発見。
この事件が公になったのは1989年7月24日のこと。当時、大雪山系で行方不明となっていた登山者の捜索をしていた北海道警のヘリコプターが、旭岳の南方でシラカンバの倒木で作られた巨大な「SOS」の文字を発見しました。その後、ヘリが捜索していた登山者は無事に発見・救助されたのですが、「SOS」の文字はその登山者が作ったものでないことが発覚、別の遭難者がまだいると見た北海道警は、再び捜査を開始しました。
事件が発覚した旭岳。

捜索の結果、謎のカセットテープが発見される!!
再び捜索を開始した北海道警。発見したSOSの文字の近くを調べたところ、男女のものと思われる白骨遺体を発見しました。そして、そこから100メートルほど離れたところに遺留品のリュックを発見。中からは男性の免許証や日用品のほか、カセットレコーダーとカセットテープが発見されました。そこで警察はカセットテープを再生してみたところ、驚きの音声が録音されていたのです。
遺留品として発見されたカセットテープ。

そのカセットテープには、「エー、スー、オー、エー、スー」と一文字一文字間合いが取られた、助けを求める若い男性の声が収められていました。録音時間は2分17秒。当時のワイドショーなどではこの音声が大々的に取り上げられ、そのミステリアスな内容から「なぜ録音する必要があったのか?」「只の遭難ではないのでは?」といった憶測も飛び交っていました。
実際の音声がこちら!!
「女性の遺留品が無い」という謎も!
また、この事件の謎としては「女性の遺留品が無い」という点もありました。発見された白骨の形状から遭難者は男女2名と考えられ、男性の遺留品としては前述のリュックがあったのですが、女性の遺留品は現場からは何も見つかりませんでした。この点も捜査を混乱させ、「何らかの事件性があるのでは?」と様々な憶測を呼びました。

カセットには当時の人気アニメの主題歌も収録されていた!
発見されたカセットテープですが、助けを求める男性の声のほかに「アニメの主題歌が録音されていた」という特徴があります。録音されていたのは80年代の人気アニメ「魔法のプリンセス・ミンキーモモ」と「超時空要塞マクロス」で、いずれも主題歌だったとのこと。

このことから、遭難した男性はアニメファンであると推測され、「SOS」を作ったのは「鉄腕アトム」の類似のエピソード(アトムが月で遭難した際に、月面に漂着した流木でSOSを作った)を参考にしたのでは?という憶測もなされました。

遭難者は男性1名であることが判明!事件の謎が解決へ向かう。
「謎のSOS」「謎のカセットテープ」「女性の遺留品無し」「テープに収録されたアニメソング」と、謎の要素が数多く見られたSOS遭難事件ですが、まず男性の遺留品から身元が特定され、1984年7月に行方不明となった当時25歳の愛知県在住の会社員と判明しました。そして人骨について再鑑定をおこなったところ、男女2名と思われた人骨は男性1名であったことが判明。そもそも遭難した女性はいなかったこともわかりました。
遺留品の一覧。カセットの左にレコーダーがあります。

またカセットテープについても「録音したものを大音量で再生した方が助けを呼ぶのに有効と判断したのではないか」といった推測や、カセットレコーダーの中から発見されたことから「助けを呼んでいた際に、偶然録音のスイッチが入っていたのではないか」という推測がなされています。

2012年、遭難者の元同僚が2ちゃんねるに降臨!?
こうして事件の全貌が明らかとなっていったSOS遭難事件ですが、2012年になって、新たな動きが見られました。それは、匿名掲示板「2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)」に、遭難した男性の元同僚とおぼしき人物が降臨したことです。

元同僚らしき人物の投稿はこちら!
「中の人」と名乗ったこの人物によれば、遭難した男性は「ズックリムックリ体型」であったために骨盤が大きく、そのため女性の骨と誤認されたのではないかといった指摘や、色々な分野に関心があり好奇心旺盛だったと指摘。宿泊施設にカメラを残しており、そこに自衛隊機の写真が多数撮影されていたため、誤解された点もあるのではないかと述懐しています。

また、遭難した男性が働いていた会社が当時カンパを募り、民間の捜索ヘリをチャーターしていたことも明かしており、社内でも慕われ評価されていた人物であると故人を偲んでいました。当時は捜査ヘリの費用が非常に高額であり、十分な捜索が出来なかったことを悔やんでいます。
「SOS遭難事件」が発覚してから30年以上が経過した現在。今後同じような悲劇を繰り返さないためにも、登山者一人一人の入念な準備や、万が一遭難した際の捜索態勢の整備が求められていると感じますね。
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