大衆寿司の二天王「アトムボーイ」「すしおんど」は今
アトムボーイ → 海鮮アトム
昭和の外食ブームと共に育った「アトムボーイ」。赤い看板に鉄腕アトム風の「男の子」のキャラクター。サイドメニューが豊富で、寿司よりポテトや唐揚げに夢中になる子どもも多かった。
現在、アトムボーイの名は姿を消し、「海鮮アトム」として別ブランドに再編された。運営会社がコロワイド傘下となったことにより、看板も制服も一新された。
海鮮アトム
すしおんど → 魚べい
「すしおんど」は「元気寿司」グループの一つで、地方のショッピングモール内の店舗が多かった。特徴は従来の回転レーンのない高速レーン方式。注文すると、新幹線に乗った寿司がビューンと席まで届く。
この「すしおんど」も、2020年代に入って「魚べい」へと統合。看板は変わっても、システムそのものは継承されている。
魚べい
ローカル色が強かった寿司チェーンの終焉
とっぴー(北海道)
札幌や旭川で見かけた北海道発の回転寿司「とっぴ~」は、ネタが大きく、観光客にも人気だったが、2016年に株式会社とっぴいが破産(負債約18億円)、全直営店が閉鎖。SNSでは「道民のソウル回転寿司だった」との投稿も多く、地元民にとっては思い出の回転寿司であった。
破産手続き中に、海晃ホールディングス(後のHIRホールディングスを経てHIR株式会社)が「とっぴ~」の商標権と直営店5店舗を取得し、現在も営業している。
回転寿司とっぴ〜
かいおう(北陸)
富山県発の「回転寿司かいおう」は、北陸ならではの魚種を安価で提供し話題になった。しかし、急速な店舗拡大の裏で経営は苦しく、2017年に破産。最大30店舗以上あったチェーンは、現在「北陸富山回転寿司 PREMIUM海王 ダイバーシティ店」1店舗のみが別法人により運営されている。

回転寿司かいおう 岐阜鏡島店(2016年9月)
Wikimedia
SUSHI PREMIUM海王
地方で愛されたチェーン、ひっそりと営業を終える
ごちそう回転寿し栄助(新潟)
新潟県民にはおなじみだった「栄助寿司」は、寿司屋が回転寿司業態に参入した事例である。清潔感がある店舗には、手書きの「おすすめネタ」などがあり昭和の寿司屋らしい雰囲気が残っていた。
しかし、2019年ごろを境に、公式サイトの更新も停止。現在は全店閉鎖済。
おんまく寿司(西日本)
四国・関西を中心に展開されていた「おんまく寿司」も、かつては大型駐車場を完備した郊外型チェーンの回転すしだった。コロナ禍以前に閉店が進み、2020年前後にほぼ全店が営業を終えている。
看板も記憶の彼方の地元密着型チェーンたち
ジャンボおしどり寿司(神奈川)
店舗名どおり「ジャンボ」とつくだけあって、ネタも器も大きかった「おしどり寿司」。ボリュームを売りにしていたが、2010年代後半から店舗閉鎖が続き、運営元のエコー商事株式会社は2018年4月に民事再生法を申請した。
2024年4月、エコー商事から焼肉坂井ホールディングスの子会社・株式会社丸七へ営業権が譲渡され、現在は神奈川県内で5店舗(日野本店、磯子店、希望ヶ丘店、アクロスプラザ東神奈川店、辻堂店)を運営。
ジャンボおしどり寿司
地域に根ざした“記憶の寿司チェーン”たち
回転寿司みえ丸(三重県)
三重県内に展開していた地魚中心の寿司チェーンで、観光客と地元民の双方に親しまれながらも閉店した。

みえ丸えびアボカド
まつりずし(福井県)
福井県限定で展開されていた祭りのような内装が特徴のチェーンで、来店するだけで非日常を感じさせる空間づくりがなされていた。
ビッグマウス(北海道)
北海道に存在したチェーン「ビッグマウス 回転寿司」。1989年10月にオープンした釧路市初の回転寿司店。大きなネタと豪快な盛り付けが特徴だった。2018年7月6日に釧路地裁から破産開始決定を受けた。
回転寿司たいせい(北海道)
北海道内で展開されていた回転寿司店で、詳細な資料は少ないながらも、地元の口コミではネタの質に定評があった。
流れ寿司さんみ
埼玉県内を中心に展開していた回転寿司チェーン。レールではなく「水路」があり、寿司は、桶に載せられ流れてくるのが特徴であり、SNSの投稿では「寿司が流れてくる仕掛けにわくわくした」というコメントが見られる。
記憶の中で回り続ける寿司皿たち
かつて、週末や旅先の楽しみだった“あの回転寿司屋”。気がつけば、地図からその姿は消えていた。寿司が船に乗って流れてきた日、大きなネタに驚いた日、ハンバーグ軍艦にワクワクした思い出──そのひとつひとつが、地域ごとの文化と食の記憶になっている。昭和と平成を駆け抜けたローカル回転寿司チェーンの数々は、今も私たちの心のどこかで、静かに回り続けている。

回転寿司
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