ジェームズ・ボンド
世界で最も有名なスパイといえば、007のコードネームを持つジェームズ・ボンドではないでしょうか?イギリス秘密情報部に所属し、殺人許可証(いわゆる「殺しのライセンス」)を与えられています。これによって任務遂行中は自分の一存で容疑者を殺してもOKになんですよ。
もちろん実在はしません。イギリスの作家イアン・フレミングが生み出しました。

007/カジノ・ロワイヤル
第1作は1953年に発表された「007/カジノ・ロワイヤル」で、007シリーズはイアン・フレミングが亡くなる1964年まで書き継がれました。
その間もその後も、多くの作品が映画化されているのはご存じの通りです。現在までのところ映画でジェームズ・ボンドを演じたのは全部で7人。定評が高いのはショーン・コネリーが務めたジェームズ・ボンドかもしれませんが、一番多くェームズ・ボンドを演じているのは3代目のロジャー・ムーアです。

ロジャー・ムーア
ロジャー・ムーアの007、いいですよ。父親はスコットランド人、母親はスイス人でベルリン生まれという国際色豊かなジェームズ・ボンド。柔道をはじめとしてスポーツ万能でありながら、オックスフォード大学卒業というインテリでもあります。酒にもギャンブルにも強く、もちろん美女にもてまくりです。
そんなジェームズ・ボンドを見事に演じたロジャー・ムーア版、ド~ンとご紹介します。
死ぬのは奴らだ
シリーズにロジャー・ムーアが3代目ジェームズ・ボンドとして登場するのは1973年の8作目「007 死ぬのは奴らだ」からです。
イアン・フレミングの小説においては1954年に出版された長編の第2作目にあたります。

死ぬのは奴らだ
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ロジャー・ムーア版として最初の1本ということで、制作側も力を入れたのではないでしょうか。主題歌をポール・マッカートニーに依頼しています。失敗は許されん!という感じだったのではないですかね?
出演当時、ロジャー・ムーアは46歳でした。初代としてジェームズ・ボンドを6作演じたショーン・コネリーよりも3歳年上なんですよね。年齢の問題が関係したのか、時代の要求だったのか、ショーン・コネリーのシリアスなジェームズ・ボンドに比べると、ロジャー・ムーア版はユーモラスになっているという特徴があります。
007シリーズと言えば美女がつきものなわけですが、本作でボンド・ガールを射止めたのはジェーン・シーモア。さすがに美しいです。他にもカトリーヌ・ドヌーヴやキャサリン・ロスなどが候補に挙がったと言いますからボンド・ガールのレベルは相当に高いということがよく分かりますね。
「死ぬのは奴らだ」は、世界興行成績で第3位と大ヒットしました。日本においても1973年度の洋画配給収入2位という記録をあげています。
黄金銃を持つ男
1974年に公開された007シリーズの第9作「黄金銃を持つ男」は、イアン・フレミングの遺作となった長編第12作目の同名小説が原作です。
ただ原作と映画とは内容が大きく異なっています。イアン・フレミングの小説は晩年になると、あまり評判が芳しくありませんでしたからねぇ。そこらへんも影響してるのかもしれません。

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悪役を演じたのはドラキュラ役者として有名なクリストファー・リーですが、彼はイアン・フレミングの従兄弟なんですね。
あ、そう言えばクリストファー・リーは、ポール・マッカートニー&ウイングスの名盤「バンド・オン・ザ・ラン」のジャケットにも囚人役で写ってますね。
ロケ地は、香港・マカオ・タイ(原作の舞台はジャマイカ)。ロケ地も007シリーズの見どころのひとつになっていますが、本作では香港の名門ホテル、ザ・ペニンシュラ香港が出てきます。ご存じの方も多いかと思いますが、1928年12月に開業したこのホテルの名物は緑色のロールス・ロイス。1970年代から緑色のロールス・ロイス「シルバー・レイス」や「シルバー・スパー」を世界で最も多く所有し、送迎用として使っていたことで知られていました。本作にもその緑色のロールス・ロイスが出てきますよ。
現在は14台所有の最高級車種「ファントム」が送迎に使われているそうです。
私を愛したスパイ
ロジャー・ムーアが最も気に入っている作品がこれ「私を愛したスパイ」です。シリーズの第10作で、1977年7月に公開されました。
タイトルこそイアン・フレミングのシリーズ長編第9作と同じですが、本作より内容はオリジナルとなります。同時にコミカル路線に移行され、ロジャー・ムーアのジェームズ・ボンド像が完成した記念すべき作品となっています。

私を愛したスパイ
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本作は、それまでのシリアスな雰囲気から一変し、現実にはありえない秘密兵器に大掛かりなアクション・シーン。荒唐無稽なスペクタクル・アドベンチャー映画ともいえる作品に仕上がっています。
しかし、まぁ、この年にヒットした映画は、「スター・ウォーズ」に「未知との遭遇」ですから、この路線への変更は世の中のニーズにかなっていたのでしょう。シリーズ最高の世界興行成績を上げています。
見どころは、やはり派手なアクションシーンでしょう。水中も走るジェームズ・ボンドが乗っている白い車はロータス・エスプリです。もちろん実際には水中を走れませんし、ロケット砲も装備していませんよ。
リチャード・キールが演じたのが殺し屋のジョーズ。なぜジョーズ かといえば、彼の歯を見てもらえればお分かりになるかと思います。もちろん 1975年に公開されたスピルバーグ監督の同名映画からきていることは疑いようがありません。
このジョーズ役ですが、当初はジャイアント馬場にオファーがきたということで話題となりました。「悪役は嫌だ」ということで断ったそうですが残念でしたねぇ。ジャイアント馬場のジョーズ、観たかったです。因みにこのジョーズは大当たりし、リチャード・キールは人気者となりました。
ムーンレイカー
これは流石にどうなんだ?!と思わないでもありません。何と言ってもジェームズ・ボンド宇宙へ行くですからね。これまでも世界を駆けまわっていたジェームズ・ボンドですが、ついに宇宙に進出ですか。。。なんでこんなことになったのかといえば、例の映画、そう「スター・ウォーズ」の爆発的なヒットの影響ですよ。
タイトルはイアン・フレミングのシリーズ第3作の長編からですが、内容は全く別物の「ムーンレイカー」、1979年の公開でした。

ムーンレイカー
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荒唐無稽もここに極まった感がある「ムーンレイカー」ですが、それだけに見どころも多い作品です。何と言っても物語の舞台が、カリフォルニア、ベニス、リオ、アマゾン、そして宇宙と目まぐるしく移り変わるというスピーディーな展開は観る者を飽きさせません!
そして、前作で評判の良かったジョーズが引き続き登場しているのもちょっと嬉しいです。
日本での興行成績は外国映画部門で「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」に次ぐ第2位でしたが、世界興行成績においては見事第1位に輝きました。興行収入は2億1030万ドルで、シリーズ最高額を更新しています。
ユア・アイズ・オンリー
商業的には大成功を収めた「ムーンレイカー」でしたが、内容的には流石にやり過ぎたと思うところがあったようです。1981年6月に公開されたシリーズ第12作目の「ユア・アイズ・オンリー」は、原点回帰となった作品です。
結果、空中アクションに銃撃戦。カーチェイスにスキーアクション。水中でも戦い、ロック・クライミングもあるという実にスリリングなシーン満載のアクションムービーとなりました。

ユア・アイズ・オンリー
シリーズ中最高傑作の呼び声も高い「ユア・アイズ・オンリー」。監督は誰だかご存じですか?…知らない方がほとんどではないかと思います。ジェームズ・ボンド役が代わっていることは知っていても、監督が変代わっていることには興味がない。そんな方、多いと思います。誰が監督だろうと関係ない、007なら問題なし!そう思っている方も相当数いるのではないかと。。。
しかし、当然ながら監督は大事ですよ。この監督あってこそ「ユア・アイズ・オンリー」は生まれたわけですからね。監督の名は、ジョン・グレン。本作から5作連続で007シリーズを手掛けることになります。
原作は日本では「読後焼却すべし 」と訳されている短編の「 For Your Eyes Only」です。本の内容は前半部のエピソードに使われています。
ところで、ロジャー・ムーアは「ユア・アイズ・オンリー」の撮影終了後、正式にジェームズ・ボンド役の降板を申し出ています。ただ、この時は後任者が見つからなかったことなどから継続となりました。
オクトパシー
1983年に公開されたシリーズ第13作目「オクトパシー」。原作となるイアン・フレミングの小説もいよいよ尽きてきました。またしても短編をベースに作られています。1966年に発表された「オクトパシー」と1966年に発表された「所有者はある女性」がそれです。
原作はツギハギだし、ロジャー・ムーアは辞めたがっているしでファンならずとも不安になるところですが、いやいやどうして、これが素晴らしい作品に仕上がっているのですよ。

オクトパシー
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「オクトパシー」は、この年の世界興行成績で「スター・ウォーズ ジェダイの復讐」に次ぐ第2位となっています。アメリカにおいては、本作が1980年代の007シリーズ最大のヒットとなったんですよ。そう考えると監督のジョン・グレンは素晴らしい仕事をしたといえますね。
実際、本作も見どころ満載です。
メインのボンド・ガール「オクトパシー」役を務めたのはモード・アダムス。彼女は、役柄は違いますが「黄金銃を持つ男」でもボンド・ガールをやってましたね。更には次作「美しき獲物たち」にも出演しています。3度も出演したボンド・ガールは彼女だけらしいですよ。
美しき獲物たち
さぁ、ロジャー・ムーアが演じるジェームズ・ボンドの最終作です。カーチェイスは勿論のこと、スリリングなアクションシーンてんこ盛り、かつロジャー・ムーアが演じるジェームズ・ボンドの特徴であるユーモアをまぶした正に集大成といえる作品「美しき獲物たち」です。シリーズ第14作目で1985年5月に公開されました。

美しき獲物たち
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見どころは多数ありますが、ブラックビューティ、グレース・ジョーンズの出演もそのひとつでしょう。彼女はモデル、女優としてだけではなく、1980年に「Private Life」という曲をヒットさせたことで、音楽ファンにも知られる存在でした。
音楽と言えば、主題歌を当時人気絶頂期だったデュラン・デュランが歌い、全米1位となるなど007シリーズ史上最大のヒットを記録しています。
本作も商業的に大成功を収めました。振り返るとロジャー・ムーアのジェームズ・ボンド、どの作品も面白く大成功しているんですよね。ロジャー・ボンドはもっと評価されても良いと思うのは私だけではないはず。
「美しき獲物たち」撮影時ロジャー・ムーアは57歳で、最高齢のジェームズ・ボンドです。007シリーズはこれからも末永く続いていくでしょうが、この記録、おそらく破られることはないんじゃないでしょうかね?