トレンディドラマ
トレンディドラマ、もはや死語ですかね。バブル期に青春時代を過ごされた方には忘れようにも忘れられないキーワードのひとつですね。今さら説明するのも何ですが、バブル期に制作された日本のテレビドラマのことです。因みに和製英語です。
どのようなものをトレンディドラマかと言うと、明確な定義はありません。ただ、オシャレだった。一般庶民よりもちょい上のライフスタイルを見せつけられて憧れたものです。特に地方の若者は東京に行けばあのような生活が待っていると、ありもしない夢に惑わされたものですよ。
出演者はトレンディ俳優と呼ばれ、浅野温子、浅野ゆう子、鈴木保奈美、安田成美、山口智子、三上博史、柳葉敏郎、陣内孝則、石田純一、江口洋介、織田裕二、吉田栄作などなど多くの美男美女がブレイクしました、

浅野温子、三上博史
明確な定義がないので、最初のトレンディドラマは何なのか?ということがはっきりしません。はっきりしませんが、主な登場人物は美男美女ばかりで、当時の話題のスポットやアイテム、ライフスタイルが反映されている。ちょっとこじれた恋愛物語で、大ヒットしたバブル期の作品というところは必須条件でしょう。となると「男女7人夏物語」でしょうかね。言い切ってもいいでしょう。
トレンディドラマはここから始まります。
男女7人夏物語
「男女7人夏物語」は、1986年7月25日から9月26日まで毎週金曜日21:00 - 21:54に放送されていました。主演は明石家さんまと大竹しのぶ。二枚目だとは思っていましたが、明石家さんまがこんなにもカッコよく、シリアスな演技が出来ることに驚いたものですよ。

男女7人夏物語
出演者は主役以外もみんなカッコいい。鶴太郎でさえも(失礼)最後はカッコよくなるんですからね。このようなドラマはありそうでなかった。
そして、何と言っても脚本がバツグンに素晴らしい!明石家さんまと大竹しのぶの掛け合いは最高でしたね。脚本を担当したのは鎌田敏夫で、彼は「飛び出せ!青春」「太陽にほえろ」「俺たちの旅」に「金曜日の妻たちへ」などなど多くの話題作を手掛けた大変なヒットメーカーです。
この作品が最初のトレンディドラマ、トレンディドラマの原点と言われているようです。が、当然当時はそのような言葉は使われてはいなかったわけで、この作品がヒットしたことでオシャレな恋愛ドラマが多く作られるようになり、いつしかトレンディドラマと呼ばれるようになったんですね。
あ、それと、「男女7人夏物語」は、芸人がお笑い以外のドラマに進出するきっかけにもなった作品でもないかと思います。
君の瞳をタイホする!
1986年に「男女7人夏物語」。その続編の「男女7人秋物語」が放送されたのが1987年。で、1988年はと言えば、それはもう「君の瞳をタイホする!」です。
出演は陣内孝則、浅野ゆう子、柳葉敏郎、三上博史、三田寛子、工藤静香。これまた必須条件とはいえ美男美女が勢ぞろいしています。

君の瞳をタイホする!
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このドラマは軽い。どこまでも軽い。その軽さを陣内孝則がバツグンの軽薄さで演じています。この軽さは素晴らしい。
しかしですね、この作品で注目すべきは陣内孝則よりもプロデューサーの大多亮でしょう。当時若干29歳。20代でプロデューサーに抜擢されるというのは異例の事だったそうですよ。大多亮の記念すべき第1回プロデュース作品がこれなのです。彼は後に「東京ラブストーリー」や「101回目のプロポーズ」といった大ヒット作品を手掛け、ドラマ黄金時代を築き上げることになります。
主題歌を歌ったのは久保田利伸でしたねぇ。ヒットしました!そう言えば、トレンディドラマからは多くのヒット曲が生まれています。これもまたトレンディドラマの特徴と言えるのかもしれません。
このドラマによってトレンディドラマというジャンルが確立されたと言われています。
抱きしめたい!
さぁ、出ました!トレンディドラマというだけでなく、80年代を代表する作品といっていいでしょうね。浅野温子、浅野ゆう子主演によるドラマで、「ダブル浅野」として日本中に大ブームを巻き起こしました。そうです。1988年7月から9月の木曜夜10時に放送された「抱きしめたい!」ですねぇ。面白かったなぁ、これ。

抱きしめたい!
主人公・池内麻子が、親友とその夫でかつての恋人であった男性との間で揺れ動く姿をスタイリッシュかつコミカルに描く。全12話
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プロデューサーは「君の瞳をタイホする!」と同じく山田良明、大多亮のコンビです。やはりこの作品がトレンディドラマの代表作ということになるのでしょうね。
女性が憧れる手が届きそうで届かないというライフスタイルの設定。笑いありの軽妙な演出。友情と恋愛ですか。いや、面白かったですよ。ホントに。
音楽を担当していたのはピチカート・ファイヴです。まだ渋谷系という言葉は出ていませんでしたから、彼らの起用には先見の明があります。
「抱きしめたい!」は余りの人気の高さに1989年3月30日、1990年1月3日、1999年10月1日、2013年10月1日とスペシャル版が4度制作されています。二人の浅野の女優としての地位を確固たるものにした作品といっていいでしょう。
君が嘘をついた
1988年は当たり年です。更にもう1本、どうしても外せない作品があります。10月24日から12月19日にかけて放送された「君が嘘をついた」です。
意外な感じですが、三上博史は本作が連続ドラマとしては初の主演となります。三上博史はまぁ、ね、カッコイイですし演技も上手いですし特に驚きはありません。相手役です。注目して頂きたいのは相手役。麻生祐未なのですが、もう、何というか美しすぎる!

君が嘘をついた
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「君が嘘をついた」は、三上博史の初主演の他にも、大江千里が連続ドラマに初めて出演した作品でもあります。また、ブレイク前の鈴木保奈美、宇梶剛士、東幹久も出演しているんですよ。
それともうひとつ。後に「101回目のプロポーズ」「愛という名のもとに」「高校教師」「ひとつ屋根の下」といった話題作を手掛けることになる野島伸司も本作が連続ドラマとしてはデビュー作です。
しかし、なんですね、トレンディドラマって多くの俳優、制作スタッフ、ミュージシャンを育て上げ、世に送り出したんですね。改めてドラマの全盛時代だったんだなぁと思います。
君の瞳に恋してる!
1989年1月16日から3月20日まで放送された「君の瞳に恋してる!」。これはちょっと毛色が違っています。そもそもトレンディドラマの中に入れてもいいものかどうか悩むところですね。
と言うのは、主演の中山美穂は確かにカワイイ。で、相手役ですが前田耕陽です。何が問題かと言うと、トレンディドラマというには共に若いんですよね。中山美穂は当時18歳でフジテレビ系列の「月9」での主演最年少記録です。

君の瞳に恋してる!
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中山美穂が憧れる年上の男性の役に石田純一。石田純一を主役にした方がトレンディドラマっぽいですけどね。いや、勿論そういった問題ではありませんね。
で、「君の瞳に恋してる!」は石田純一以外も脇役がいいんですよ。かとうかずこ、田中美奈子、吉田栄作、西田ひかる、マイケル富岡に真木蔵人ときますからね。
多彩な出演者たちが織り成す様々な恋愛模様。親元から離れた生活。でもってオシャレ。確かにトレンディドラマの要素ですね。
タイトルの「君の瞳に恋してる!」は、1982年にボーイズ・タウン・ギャングが歌ってヒットさせた曲からとられています。それがそのまんま主題歌かと言えばそうではなく、村井麻里子の「どうしようもなく恋愛」が主題歌でした。
ハートに火をつけて!
1989年4月13日から6月29日に放送されたのは、浅野ゆう子初単独主演作品「ハートに火をつけて!」。当時の浅野ゆう子といえば、そりゃもう飛ぶ鳥を落とす勢いでしたからね。この作品も当然ヒットしました。

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それにしても柳葉敏郎はイイ役だなぁ。。。で、大きな話題となったのは浅野ゆう子がカラオケで歌うシーンです。そのレパートリーがもう、中島みゆき「わかれうた」、郷ひろみ「お嫁サンバ」、都はるみ「北の宿から」、キャンディーズ「年下の男の子」、吉田拓郎「結婚しようよ」に井上陽水「夢の中へ」などなど実に多彩で、ほぼ毎回歌いまくっているんですよ。
タイトルの「ハートに火をつけて!」ですが、「ハートに火をつけて」と言えば、ロックファンの間では言わずと知れたアメリカのバンド、ドアーズの名曲。1967年の大ヒット曲です。主題歌は杏里の「Groove A・Go・Go」なのですが、挿入歌としてドアーズの「ハートに火をつけて」が流れるという、ちょっとしたサプライズがあります。
同・級・生
柴門ふみの漫画をドラマ化した「同・級・生」。1989年7月3日から9月25日まで安田成美主演で放送されました。これ原作の漫画がバツグンに面白く、待望のドラマ化だったんですよね。

同・級・生
有名広告代理店に勤める鴨居透(緒形直人)と学生時代の同級生の名取ちなみ(安田成美)を中心に、すれ違う男女の恋愛模様をロマンチックに描いた
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安田成美も良いのですが、相手役の、優しいというか、優柔不断というか、トレンディドラマを象徴する男性像を緒形直人が実に見事に演じているんですよ。
バブル期に実際このようなタイプの男性がモテていたかといえば甚だ疑問ではありますが、トレンディドラマの主役といえばこのタイプですよね。
おそらく現実社会においてはバリバリでイケイケが主流だったので、こうしたタイプの男性がドラマで好まれたのはその反動のような気がします。
主題歌「GLORIA」が大ヒットし、一躍ZIGGYはメジャーになりました。ポップな曲とはいえ、ZIGGYのようなロックンロール・バンドが一般的な人気を集めたんですからねぇ。音楽のプロモーションとしてもトレンディドラマは最強でしたね。
愛し合ってるかい
80年代最後を飾るのは1989年10月16日から12月18日まで放送され、平均視聴率22.6%、最高視聴率26.6%を叩き出した「愛しあってるかい!」です。
「愛しあってるかい!」というのは、当時人気だった今は亡き忌野清志郎が率いたバンド「RCサクセション」がライブで呼びかけていた有名なセリフからとられたものでしょう。そう言えば、トレンディドラマって既存のものを結構流用してますね。だからとっつきやすかったのかもしれません。

愛しあってるかい!
この時期、軽い男を演じさせると右に出るものは居ない陣内孝則が、またしてもやってくれました。そして相手役はキョンキョン。もちろんカワイイです。最高にキュートです。キュートという言葉はこの時期キョンキョンのものでした。と、思いますよ。
共演は柳葉敏郎、近藤敦、藤田朋子、田中律子、和久井映見などですね。
う~む、トレンディドラマってやっぱり楽しい。出来ることなら現代版のトレンディドラマというものも観てみたいです。ただ、活字離れと言われて久しく、最近ではテレビからも離れていってますからねぇ。これでは、なかなかドラマのブームは起こりにくいでしょうねぇ。。。
テレビドラマのファンとしては、頑張ってまたブームを起こしていただきたいものです。