不気味なアリスの世界に、触れる自信はある?
アリスと聞けば思い浮かぶのが「不思議の国のアリス」!
特にディズニーのアリスは有名で、黒いリボンに水色のワンピ―ス、白エプロンを想像することでしょう。
しかしながら今回ご紹介するのは皆さんの思い浮かべている作品ではありません。
ヤン・シュヴァンクマイエルが監督を務める、チェコが生んだ「アリス」です。
ストーリー自体は不思議の国のアリスとほぼ同じ。出演しないキャラクターはあれど、だいたいのキャラは登場します。
話の流れ全体が原作に沿っているので、ストーリーに関して特筆すべきことはないのですが。笑
あの「不思議の国のアリス」まんまを思い浮かべて鑑賞すると、度肝を抜かれます。

この作品を一言で表すなら、アリスの暗い部分を全て集めたと言う感じ。
とにかく映像で魅せる、魅せる。「見せる」じゃないところがポイントですよー。笑
そんなヤン・シュヴァンクマイエルのアリスの見どころをご紹介致します。
奇妙奇天烈摩訶不思議
こちらの作品はほとんどセリフがなく、ところどころ入るアリスのNAで進行します。
セリフがあまり見られないことから、画面についつい集中してしまうのも魅力的な点ですね。

物語はアリスの部屋にある、ウサギの置物が動き出すところからスタート。
何やらガラスケースの中でゴソゴソ……。アリスは目を奪われ、じっと見ていると……?

何やらお着替えを始めます。アリスに登場するウサギは、お洋服を着ていますからね!
ハートの女王の元へ向かうべく、せっせとお着替えです。
このウサギ、横から見るとフワフワしていて可愛いのですがアップだと結構気持ち悪いです。見ていて不安になる顔をしているというか。笑
ここで注目すべきなのは、ウサギの体内からオガクズが出続けている事。置物やぬいぐるみなら綿やガラス製なのでは……?と思うのですが、ザーザーとオガクズが出続けている。
それを本人は自分で縫合するのですが、縫いが甘いので次から次へと綻びが現れるのです。
綻び、流れ出て、ウサギはオガクズを食事として補給する。そんなショッキングなシーンが冒頭からあります。
これをどう捉えるかは人それぞれですが、当時のチェコの様子を皮肉っていると考える人もいるみたいですね。
1988年辺りのチェコは社会制主義で、民主主義を訴える人々のデモが問題になっていたのだとか。社会制下である人々への訴えと捉えるのもアリでしょう。
後に紅茶を飲んでも飲んでも流れ出る帽子屋、車椅子の三月兎も登場するのですが、同様の解釈ができるかと。

そしてウサギはドラえ●んのごとく、机の引き出しへ潜ると姿を消してしまいます。
負けじとアリスも引き出しの中へ……この光景がものすごくシュールなんだなぁ。笑
机の中に吸い込まれてワンダーランドへって、結構珍しいかも。
ことごとく不気味な世界
登場人物、というか登場する人間はアリスのみで、あとは人形やオモチャのオンパレード。
全体的にキャラがあんまり可愛くないのも、また一つの魅力なのでしょう。笑

正装のウサギ。目の焦点が基本的にあってないからコワイ。

「これは誰……」となりますが、アリスです。
クッキーを食べて小さくなってしまったアリスは人形で表されているのですが、全然可愛くないのでびっくりします。
アリスを演じるリスティーナ・コホウトヴァーちゃんは超美少女なのですが、人形になると
ものすごい……ギャップが……。

ギリギリ、このネズミは可愛いかな?
このシーン何をしているの?と思いますよね。こちらはアリスの涙で部屋が水浸しになってしまう、あの名シーンです。
小さなネズミは洪水に混乱、アリスの頭の上に辿り着き、頭上でリゾットを作っています。笑

缶詰を丁寧に開けて~

トマトが出てくる!!こういった芸の細かさにも感動です。

オガクズが出切った仲間を救出しているの図。こっち見ないで……。
アリスの抱く残酷さ
ルイス・キャロルの不思議の国のアリスは皆さんご覧になっているでしょうか?
アリスと聞くと可愛いイメージがあるんですけど、実際結構空気が読めなくて、気が強い女の子という感じですよね。
いらんこと言い、みたいな性格をしていることが最初は衝撃的でした。
この作品だと余計な事は言ってないのですが、好奇心旺盛で気が弱くはなさそう。
一人でどんどんウサギを追いかけて進んでしまう、そんな強さを持った少女です。
ですがどのアリスにも共通しているのが、純粋さゆえの残酷さがあること。
原作ですと言葉遊びが羅列していて、人を惑わす言葉達にふとした残酷さと奇妙さを覚えました。
こちらの「アリス」はリスティーナ・コホウトヴァーちゃんの演技力もあってのことですが……とにかく表情がない。驚くような反応を見せても、無邪気な雰囲気というのは全く無いんですよね。
たま~にキャッキャと笑う姿も見せるのですが、ちょっと笑いのポイントもズレている。
淡々と摩訶不思議な世界を練り歩いていくのも、どこか不穏な感じがあるかも。
そう思っていたら、最後の最後のオチで「おおお……」となりました。笑
冒頭に、ストーリーは本作のアリスと同じで~と書きましたが、でも最後までしっかりと観て頂きたいですね。
何も、全てが一緒よー!なんてたかなし亜妖は言っていませんぜ。笑
中毒性の高いアリスと言っても過言ではないでしょう。なぜか何度か観たくなる、そんな作品です。
余談ですがワタクシはこの作品に中学生の時出会いまして、奇妙な世界観に惹かれて大ファンになったのであります。
当時はDVDでの購入でしたが、最近は動画配信サイトでも観られるようで。
大人になってから見ると、物事の見方が変わるからですかね。とにかく恐怖を覚えました。笑
なんだか心の奥がザワザワしてくるような、そんな怖さですね。
確かR15指定だったかな?決してお子様の前では見ないように!!!