『ガンプラり歩き旅』その63 ~番外編 輝く銀河を駆け抜けるダイターン3!(前)~

『ガンプラり歩き旅』その63 ~番外編 輝く銀河を駆け抜けるダイターン3!(前)~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をしてきた『ガンプラり歩き旅』。 今回は前後編で、ガンプラブームと共にロボットプラモブームを牽引した、アオシマ製プラモデル群から、『ガンダム』の富野由悠季監督の名作『無敵鋼人ダイターン3(1978年)の、当時のプラモデルや最新キットを紹介していきます!


今回紹介する、アオシマ版ダイターン3、2種のプラモデル

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回は前後編で、ガンプラブームと共にロボットプラモブームを牽引した、アオシマ製プラモデル群から、『ガンダム』の富野由悠季監督の名作『無敵鋼人ダイターン3(1978年)の、当時のプラモデルや最新キットを紹介していきます!


まず今回は、ここまでの番外編で、イデオンやザンボット3でも紹介した、アニメスケール版と、ポケットパワー版のダイターン3を紹介します!

アオシマ アニメスケール 1/920 ダイターン3 1981年4月 300円

発売当時のパッケージ。この画ではジャベリンとファンを手にしているが……

アオシマのアニメスケール小サイズについては、これまでに『伝説巨神イデオン』(1980年)『無敵超人ザンボット3』(1977年)等でも触れてきたが、基本的に300円の統一箱サイズが基準なので、そこへスケール表記を盛り込もうと思うと、イデオンもザンボット3もダイターン3も、あと初動の残り一つ『無敵ロボトライダーG7』(1980年)も、それぞれかなり中途半端なスケールになってしまい、スケールの統一感が皆無で、結論からいえば、それらスケール表記は「気分と数字」として以外に意味はないのだという気にはなってしまう。

完成したアニメスケールダイターン3。真っ白な成型色。武器を持たない素手。アオシマアニメスケールの共通仕様

ガンプラで、ガンダムが1/144を名乗ったのは「1/144」というスケールが、鉄道模型やミリタリーモデルの世界では、国際標準スケールであるからだ。
ガンプラは初動で、偶然スケールが「作ってみたら1/144に近かったから」国際標準スケールに便乗したという経緯があるわけで、だから一番最初のガンダムやザクは、当初のアニメ作画内からのサイズからすると、正確な1/144スケールではないのだ。

サイドビュー。バックパックの垂直尾翼のボリュームがあるので、ボディの薄さは気にならない

そこへもってきて、アオシマの場合、1/810や1/920など、黙っていればバレない端数まで正確に記載してしまう正直者さが、今にして思うと愚直なまでに真っすぐで、こうした姿勢はビジネスとしては成功しがたいが、目先の小銭よりも大事な信用を得るスタイルであるといえよう。
もっとも、愚直に正直すぎて、初動のアニメスケールで、『イデオン』の敵メカ、ドグ・マックのスケールが1/610になっていて、その後改めてイデプラだけ1/600統一スケールを出し直そうとしたときに、一番困ったという逸話も、アオシマらしい微笑ましい話として聞こえる(当時の関係者にとっては、微笑ましいどころの問題ではなかったのだろうが……)。

バックビュー。バックパックのノズルのディテールまで作り込まれている。この辺りはガンプラに負けていない

さて、今回紹介するダイターン3は、そんな300円箱サイズ統一のアオシマアニメスケールシリーズでは、ナンバリング的にNo.1の称号が与えられており、商品枠第一号と紹介すべきだろうが、実際はアオシマから提供していただいた資料によると、同月にザンボット3も同時にリリースされているし、webの情報によれば、No.4にあたるイデオンの発売が1981年の2月と記されていることも多く、おそらくこの辺りのナンバリングは、あくまでアオシマ社内での商品管理の便乗上のものであり、市場には、イデオン、ダイターン3、ザンボット3、トライダーG7の4つが、ほぼ同時に1981年の初春に、模型店へ送り出されたものと思われる。

当時、ほぼ同時期に店頭に並んだ、アオシマアニメスケールの富野ロボット3体。当時必死に塗装した模型少年も多かったはず

造形は、ガンプラほどには垢ぬけてはいないが、アニメスケールの中ではイデオンと並んで、プロポーションと可動のバランスは良い。
確かにダイターン3も、他のアオシマロボットプラモの例に漏れずトップヘビーで上半身の大きさに対して、下半身が貧弱な印象を受けるが、それが特に酷かったザンボット3と比較すると、ザンボット3ではレゴンが付属していなかった両腰に、ダイターンスナッパーのメインパーツになる部品が付いていることと、両脚の内側のスパンが、ザンボット3よりも広く設けられていることなどから、若干ではあるが全体のシルエットのバランスは良くなってはいる。

可動はまずまず。肩はしっかり回転する構造になっているので、肩上のアーマーを少し浮かせて接着しておくと、肩回転と干渉しない

可動に関しては、当時のガンプラを基準とすれば、可動範囲的に評価が厳しくならざるを得ない部分もあるが、可動箇所的には問題はない。
開脚は出来ないが、それは初期ガンプラ1/144も同じであり、ザンボット3のような、肩の回転可動を邪魔する襟アーマーもない。両肩に乗ったアーマーが、微妙に肩アーマーと干渉するが、両肩のアーマーを少し浮かせれば逃せるので、腕を前に突き出すポーズも可能だ。

肘の曲がり角度は45度程度

肘は見た目ほどには曲がらないが、それでもポーズの表情は付く。肘の関節が、本来のロボットとしての関節部分に当たる、白と青の境目ではなく、前腕の上部を分割して曲がる構造だが、その際、前腕外側にモールドされた星形ディテールが無粋に分割されないように、わざわざ別パーツになっているのは、この時期のロボットプラモの分割としてはポイントが高い。今風に言えば「塗装派に優しい分割」だろうか。

下半身の可動範囲

下半身は、一応脚の付け根、膝、足首に可動箇所が設けられているが、それぞれの最大可動範囲が30度ぐらいずつなので、精一杯足を動かしても、半歩足を後ろにずらしたぐらいしか効果が出ないのは惜しいところ。
脚正面のブレードを、足首と一体化させて、脛から独立させて動かせるなど、パーツ分割はいろいろと工夫が見られるのではあるが。
もっとも、この当時のデザインだし、この当時のキットだしで、脚を少しでも可動させると、自立はほぼ不可能になる。

アニメスケール版ダイターン3の頭部

顔の出来も悪くない。口のディテールの刻まれ方も、ダイターン3独特の、威風堂々さ加減がしっかり表れている。バンダイのベストメカコレクションと、アオシマのアニメスケールの「300円ロボプラモ」で「顔が失敗した主役ロボ」は見当たらないが、それは無条件で良いことと言えるだろう。

放映当時のクローバーの合金玩具ダイターン3

ダイターン3は、前作『ザンボット3』の商品的ヒットを汲んで、最初からクローバーは12アイテムの商品を展開させて成功させた。
さすがにこの合金トイは、カタログには「正確に変形します」と書かれてはいるものの、武装やパーツが過剰装飾で、アニメではもっとシンプルなのだが、逆にアオシマのアニメスケールが、ザンボット同様、何も武器が付いていない仕様なのが惜しまれる。
せめてパッケージにあった、ジャベリンとファンぐらいは付けて欲しかったところだ。

アオシマアニメスケールの、近年の再販のパッケージ

アオシマのアニメスケールは、主役ロボクラスだけが近年、二度ほど再販されたが、それぞれでパッケージデザインを微妙に変えている。
1/144ガンダムやザクと同じで、それだけ「当時のあのプラモ」的思い入れの対象として、アオシマのアニメスケールはファンが多かったことの証でもある。

当時の番宣キャラクター

アニメ『無敵鋼人ダイターン3』は、前作『無敵超人ザンボット3』とは一転して、主役が子どもから大人へと変化し、アダルトでコミカルな作風へシフトしたが、それは大きく、当時の『007』ブームの再燃と、再放映による『ルパン三世』(1971年)ブームの影響があったと思われる。
もっと露骨な言い方をしてしまえば、主人公のキャラ描写やその裏にある、ある意味ザンボット3よりも残酷過酷な運命の設定が、80年代的軽薄ネアカなキャラに生まれ変わってヒットしていた『ルパン三世』のルパンへの、痛烈なアイロニーとして構築されたのかもしれないという可能性はある。

なんか中途半端なポーズだが、これでも必死に、名乗りの決めポーズをとらせようと頑張った結果の状態である

可動アクションフィギュアとして見ると、いろいろ残念な箇所が多いモデルだが、アニメスケールNo.1という意味合いでとらえるのであれば、「バンダイとガンダム」以外の組み合わせが、そのフォーマットを踏襲しても、ロボットの魅力とメーカーの意地と努力さえあれば、それは「バンダイとガンダム」だけの現象ではなく、ジャンルになり得るのだということを、どこよりも早く証明したのがアオシマであり、アニメスケールシリーズであったことは間違いはない。
というか、この商品の良し悪しは、今の物差しで測る筋合いのものではなく、「あの当時」これらのロボットアニメに心躍らせて思春期を過ごした少年たちの、原風景となって価値を齎し続けてくれているのである。

アオシマ ポケットパワーNo.12 ダイファイター 1981年4月 500円

今回入手できた、ポケットパワーシリーズのダイファイターのパッケージ。な・ま・く・び・だァーッ!

しかし、そんなアオシマを侮ってはならない!
来るべきガンプラブームに対抗するに当たって、ガンプラの仕様を猿真似するだけでは、追いつきは出来ても追い越せはしないと腹をくくったのか。
それとも、自社には自社のブランドイメージと、蓄積してきたノウハウと、自社商品仕様を好んでくれる子ども達こそが本来の顧客であるとの信心からか。
やってくれましたアオシマ!
ティーンズ向けのアニメスケールの展開開始とほぼ同時期に!
やってきました! アオシマ伝統の「生首メカ」です!

ポケットパワーNo.10 ダイターン3パッケージ

ポケットパワーNo.11 ダイタンクパッケージ

アオシマのイデオンのポケットパワーシリーズでも解説したが、ポケットパワーシリーズは「ロボット単体」と「共通のロボット素体による2種の変形」の、3種のキットがまず単独で発売され、その後それら全てのパーツを集めた「スペシャルデラックス」というキットが発売される流れを持っている。

この方式は既に1980年末から1981年にかけて、イデプラで行われており、その際、イデオン自体は分離合体するものの、イデオン単独では他メカに変形するギミックを持っていないため、他の2種のポケットパワーイデプラが、尋常ならざるトンデモメカに変形するという紹介は、以前この連載でも書き記した()。

今回のこの、ポケットパワーダイターンシリーズも、ボックスアートを見る限りでは、そこそこリアルに完成しそうな雰囲気だけは漂わせている……生首以外は。
そう、『無敵鋼人ダイターン3』のメカデザインは、着実に玩具で再現できる変形や合体で定評のある、『機動戦士ガンダム』の大河原邦男氏によるものなのだ。
だから、ダイターン3も、ダイファイターやダイタンクへと、劇的にシルエットを変化させつつも、実は実際の変形そのものは、意外と単純だったりするというのが大河原芸風でもあるのだ。
なので、アオシマのプラモデルでも、ダイターン3の変形は、他のアオシマサンライズロボットの変形や合体よりも、比較的アニメ設定に忠実で、再現度の高い物が多い……しかし、生首……。

完成したダイターン3

まずは、素組で完成させたダイターン3の状態から見ていこう。商品名は「ダイファイター」だが、当然基本形態のロボット状態から変形は始る。
ちなみに、今回のこの『ガンプラり歩き旅』での、イデプラ以降のアオシマ番外編では、イデプラの時に言及した「駿河屋の乱」で、アオシマプラモが大量にタダ同然の値段で市場に流出したデッドストック品の恩恵があったと書いたが、このダイターン3のポケットパワーは、イデオンの同シリーズと違って「駿河屋の乱」には含まれておらず、なので今回紹介するに当たっては、純粋にアンティークトイの市場で地道に探すしかなく、当然本来であれば、ダイファイターにもダイタンクにも変形できる「スペシャルデラックス」を用意したかったのであるが、何分アンティーク市場で、限られた時間の中で出会えたのはこの「ダイファイター」キットだけなので、ご容赦願いたい。

ポケットパワーダイターン3のサイドビュー

1981年のこの時期、アニメスケール、ポケットパワ―シリーズ、合体ロボットシリーズで、ダイターン3のアオシマプラモが一気に出揃った。キットのギミックや可動範囲への評価を抜かせば、プロポーション、塗装のしやすいパーツ分割という点では、ダイターン3単体では、実は一番バランスが良いのがこのポケットパワー版であったりもするのだ。

ポケットパワーダイターン3のバックビュー

しかし、大変残念なことに、写真をご覧になれば分かる通り、ポケットパワー版ダイターン3では、背中の大きな翼をはばたかせるバックパックが丸ごとオミットされている。他の部分は秀逸なだけに、ここは残念でならなかった。

ポケットパワーダイターン3の、上半身の可動範囲

可動の方は、上半身は先に紹介したアニメスケールと殆ど変わらない。
首と手首、肩の回転、そして肘の関節は見た目ほどは曲がらなくて45度程度。しかし、ポケットパワーの方は、肘関節はしっかり上腕と前腕で別れている。

ポケットパワーダイターン3の、下半身の可動範囲

一方下半身の方は、こちらはダイタンクへの変形ギミック優先で、ロボットとしての関節可動は基本的に取り入れられていない。
腰後面と腿は一体化されているので、前にも開脚にも可動はせず、膝も180度曲がるのだが、これは今も書いたダイタンクへの変形ギミックのためで、なので可動軸も膝の最後面に設けられているので、ポージングに活かせる角度には脚は曲がらない。
なので、ロボット形態として飾る場合は、表情を付けられるのは上半身の腕のみと考えた方が早い仕様である。

バックパックがないことだけ除けば、この当時のダイターン3の立体物としては優秀なプロポーションを誇っている

さて、そろそろこの辺で、ポケットパワーイデオンで見た悪夢と我々は、対峙しなければいけないだろう。
そう、ロボットプラモとしてプロポーションが良かろうと、可動範囲がどうであろうと、この商品は「ポケットパワー」なのであるから。
そのポケットパワーの神髄と実力を、ここで検証せねばなるまい。

出ました! ポケットパワーの真の主役「謎のカプセル」

今回は、この謎カプセルから、どんな便利グッズが飛び出すのか?
そういえば、四次元ポケットから様々な便利道具を取り出すロボットを描いた漫画界不朽の名作『ドラえもん』が2度目のアニメ化をされたのもダイターン3等と同時期だが、まさかアオシマ的には、スーパーロボットにドラえもん的要素を闇鍋的にぶち込んだのがポケットパワーシリーズであるとか、そんなことはない……よねぇ?

例によってパッケージのイメージイラスト。ダイターン3ではカプセルの射出口は胸にあるので、イデオンの時ほど「産卵の瞬間」的なインパクトはない

でも、このイラストでは、カプセルではダイターン3の武器、ダイターンザンバーが飛び出てくるけど、実際にカプセルから出てくるのは、もっとすごい代物ばかりだったりするのだ。

組立説明書にある、カプセルの遊び方

当時のこのシリーズを知らない人には、もう既に「このイラスト一枚で、何を理解してどうしろというのか」としか言えない図。
なのでここは一応、筆者が実験体になって、実物でこのカプセル遊びを再現してみせよう。

まずは生首をめくりあげて、首の部分に空いた穴から、素敵謎カプセルを放り込む

いきなり生首ギミックの登場だが、ここでの開閉ギミックがあとあと変形でも役立つあたり、さすがアオシマ(註・褒めてない)

スプリングが仕込まれた背中のレバーを押し込むと……

胸のカバーパーツがパカッと開いて、胴体内部からカプセルが飛び出してくるぞ! ……くるぞ……

後はまぁ、転がり出てきたカプセルを開けて、一喜一憂(いや、実際には憂しかないんだけど)を味わうというのが、まぁポケットパワーの醍醐味だというのは、既にこの連載の「スペシャルデラックス イデオン」(リンク)を見て頂けた読者の皆さんならご存じだとは思いますが……。

では、やはりここで肝心の「一喜はさせずに一憂しかさせない」カプセルの中身群について、検証をすすめてみたいと思う。

これは……まさか?

これは、形も大きさゆえにディフォルメされてはいるが、三つ又の剣といえば、ダイターン3の前番組『無敵超人ザンボット3』のメイン武器、ザンボットグラップにしか見えないのではなかろうか?

両手で華麗にザンボットグラップを使いこなす、前番組ヒーローロボット、ザンボット3

言われてみれば、確か同じポケットパワーのイデオンにも『超電磁マシーンボルテスV』(1977年)の武器、超電磁ゴマに通じる「和独楽」の極小ミニチュアがカプセルの中に入っていた。
なんだろう、ポケットパワーの中身は、9割が平和日常的ボケアイテムなのに、1種類ぐらいは、しかもメイン商品の前の番組で、主役ロボットが使っていたアイテムが、イマドキの食玩の極悪アソートのような確率で入れられていて、それがカプセルガシャポンとしての「当たり」という隠れテーマでも仕込まれていたのだろうか?
……いや、考えすぎで、きっとこれも、ザンボットグラップのデザイン基になった、琉球(今の沖縄)の古武術武器・釵(サイ)がモデルなのだろう……。

琉球古武術武器・釵

もっともこの釵、ダイターン3に持たせてもサイズが小さすぎて、小学生がボンナイフを持っているようにしか見えなかったりするからさらに物悲しい。
さて、お次のカプセルは……。

小さな真四角のパーツにディテールがびっしり……これは?

これはアレだ! 平成の今を生きるワカモノには想像もつかないだろうが、昭和のあの時代、まだまだ「一家に一台」のレベルで、家電の王として庶民の住宅で君臨していた、台付きテレビジョン!

っていうか、80年代ってもうちょっとテレビのデザイン、新しくなってなかったか?

なるほど! 無敵のロボットダイターン3も、ピンチに疲れた時はカプセルから取り出したこのテレビで、お笑いバラエティを見てリラックスして……って、ねぇよ! ありえねぇよ!

ただの、プラスチックの円盤……?

ン?……空飛ぶ円盤か? いや、そんな雰囲気は微塵もしないぞこのパーツ。ただの薄い円盤でしかない。真ん中に小さく穴が開いていて……よく見ると円盤の円周に沿って溝が彫ってあるけど……これって……まさか……

当時は33回転LPと、45回転EPがありましてな……

レコード盤かよぉおおおっ! なにぃ!? テレビのバラエティ番組だけではリラックスできないから、ヒーリングのレコードでもかけないと、強敵相手に自然体で戦えないの?ダイターン3! お前そんなに神経細かったんかぁあいぃいっ! これもう、どこをどう見てもレコード盤だよね? 今更「これがダイターンファンの全展開状態です」とか言わないよね!? 素敵すぎるだろ、ポケットパワー!

これは……? この特徴的な形状は? 誰もが小学校時代、理科室で見たはずの……

顕微鏡かよぉおおおおっ!

シュールだよね!? シュールすぎるよね!? 全長100mクラスの巨大ロボットが、ミリとかミクロン単位の微生物とか雪の結晶とかを、このサイズの顕微鏡で観察するとか! 主にサイズ的なスケール的な観点から、無理があり過ぎてシュール過ぎるだろう! さてはアオシマ、何も考えてねぇな!(←いまさらかよ)


……とまぁ、ここまでがアオシマ王道のポケットパワーシリーズの基本ギミック遊びなのだけど、このシリーズの真の醍醐味は「生首マシーンへの完全変形」にあることは、「スペシャルデラックス イデオン」で立証済みの期待大!

とはいうものの、イデオンの謎のメカへの変形は、そもそもイデオンは合体ロボットであって、イデオン自体が変形しないメカなのに、変形シリーズに無理矢理組み込んでしまったがゆえの悲劇(喜劇?)だったのだ。
ダイターン3の「ダイファイター」や「ダイタンク」は、実際にアニメでその変形形態が登場するし、それは同じポケットパワーシリーズのトライダーG7での、トライダービーグルとトライダーフォートレスにも同じことが言える。

ポケットパワーシリーズでの、トンデモの割を食ったのはイデオンだけで、他のアオシマオリジナルロボット群(シャイアードやジェロード)は、自社責任(笑)の範疇なので、まぁダイターン3では、そうそう爆笑物のミュータントは仕上がらないだろうと期待と不安が沸き上がる。
しかし、パッケージアートでは、ダイファイターにもダイタンクにも生首がしっかり描かれている。

しかし実は、このキットを変形させていくと、意外とこのキットに限っては、生首晒しが変形構造上、ベターな配置ということが分かってくるのだ。
このキットは「ダイファイター」なので、ダイファイターにしか変形は出来ないが、実際の変形プロセスを追って見ていこう。

まず、ダイターン3は、ダイファイターに変形する時も、ダイタンクに変形する時も(実際は逆の順序で変形するのだが)頭部がボディに収納されて、両肩の大きなアーマーが展開移動してきて頭部の位置に収まり、それぞれの変形メカの機首になるのだが。

同時期のアオシマの「合体ロボット」版では、このアーマーを肩にスプリングで取り付けることで、スプリングのテンションと牽引力で、保持と変形を兼ねていたのだが、ポケットパワー版では、可動フレームを内部に仕込んで、アーマーの可動を正確に動作させることに成功している。

組立説明書より。肩アーマーのギミックが分かりやすく説明されている

実際のキットでの、肩アーマーの変形移動のプロセス

筆者は正直、この肩アーマーの変形ギミックは、このキットよりも上位にある「合体ロボット」版のスプリングによる固定方式よりも、かっちりとした位置にアーマーを決めることが出来、耐久性も優れていると思っている。
問題はここから。
元よりデザイン上での段階から、ダイターン3の肩アーマーは、垂直に展開して合体した時に、ダイターン3の頭部を収納できるだけのスペースが確保されていない。
アニメではダイターン3の頭部は、ボディの中からせり出してくる演出が見受けられるのだが、この「ボディの中の頭部が、エレベーター式にせり上がってくるシステム」を、プラモデルで再現するのが極めて(特に当時の技術では)困難なので、このポケットパワーシリーズでは、首周りと共に襟の後ろに向けて、開き倒れて、肩アーマーの機首が合体できるスペースを確保する。
かような手続きを踏むと、どうしてもダイファイター、ダイタンク共に変形時には、正面から見た時に、どどーんと生首がにらみつけてくるという完成形に至ってしまうと、こういうわけである。

「頭部のせり上がり」に関しては、後年のバンダイガンプラの『機動戦士Vガンダム』の1/100 HGヴィクトリーガンダムみたいに、頭部と襟周りをエレベーター式にして、ボディ内部に収納式にすればもっとリアルにダイファイターやダイタンクへの変形が出来たかなとも思うのだが、バンダイのHG Vガンダムは90年代の技術と設計の商品であるし、むしろそれでもHG Vガンダムでは、ちょっと油断すると首が襟元ごと、ストンとボディ内部に落ちてしまうような構造だったことを考えると、1981年という時代でアオシマの技術力では、合体ロボットシリーズのような差し替えにするか、このポケットパワーのように生首土台ごと反転して、肩アーマーの展開を逃がすようにする方が確実だし、理にかなっている変形だとは言えよう。

しっかり合わさった機首。ボディ正面からは、背中に回った生首は見えないのでまともに見える(笑)

そして脚の変形だが。ここは合体ロボットシリーズ同様、腰の横面と後面が独立ブロックになっていて(特にポケットパワーでは、脚の腿と一体パーツになっている)接続軸がボディ後面の中央に位置しているので、ここを支点に両脚を回転させると、アニメ設定同様に、両脚が90度展開した形で、ピッタリ、ボディより一段上の位置でファイターのシルエットを形成するという方式をとっているのである。

ロボットの変形やギミックのビジュアル効果を知り尽くした大河原邦男デザインの真骨頂的変形

また、ダイターン3時はバックパックになるべき、主翼と垂直尾翼は、主翼カバーと共に丸ごと余剰パーツ扱いになっている。

ダイファイター用の余剰合体パーツ

だったら、これらに接続ピンとダボを設けて、申し訳程度でもバックパック状態へと合体させて背中にはめこめれば、一応ダイターン3状態が完璧なものになるのに、と思わざるを得ないが、逆を言えばこれらは、ダイタンク時には、どこへ行ったのか行方不明なパーツになるわけで、商品を「ダイファイター」「ダイタンク」に分けた以上、バックパックを「ダイタンク」に付属させる意味もなく、ダイファイター固有のアイデンティティになるパーツともいえるので、別パーツ化されているのであろう。

ダイターンの背中を確認してみても、そこには大事な(笑)ポケットパワーカプセル射出レバーがあるだけで、後付けでバックパックが取り付けられそうなダボもピンもないので、あくまでこれらは「ダイファイター変形時用の特別付属パーツ」扱いなのであろう。

完成したダイファイター

余剰ダイファイター用パーツを、両腕に被せて、両脚の間に差し込んで、ダイファイター・ポケットパワー版の完成である。

上から見下ろしたダイファイター

むしろ、翼系パーツが全て別パーツなので、自由な大きさが確保できているので、ダイファイター単独の完成状態としての、翼の面積とボディの大きさのバランスは悪くなく、戦闘機としてのシルエットとしてもカッコいい部類に入るのではないだろうか。

真横から見たダイファイター

惜しむらくは、どうせ変形用余剰パーツをつけてくれるなら、アニメ内でもどこから出てきてどう収納されていたかもわからない、脚の腿付け根から背中へ伸びる、スロープのパーツもつけてくれたら、もっと「らしい」ダイファイターになったかもしれない。

正面から見たダイファイター。ダイファイターなのに、ダイターン3がこっちをにらみつけてきている……。

アオシマ生首メカというと、どうしても馬鹿にしてしまいがちになるが、今回のこの、ポケットパワーのダイターン3のように、理にかなっている生首メカも存在するということ。もっともそうまでして生首を、どうしても変形用取り外し部品にしたくない拘りが理解できないが(笑)
だって実際、「合体ロボット」版では、あっさり頭部は、変形時に取り外すように出来ている。
やはり「生首」は、ポケットパワーシリーズのアイデンティティなのだろう(笑)

ポケットパワーシリーズの富野ロボット、イデオンとダイターン3の並び

というわけで、次回はダイターン3編の後編で、アオシマのダイターン3シリーズ最上位商品「合体ロボット ダイターン3」を徹底的に紹介していくだけではなく、「ダイターン3のアクション再現に最適な、近年のフルアクションフィギュアのダイターン3」の頂点例として、ガレージキットメーカーの浪曼堂が、90年代に発売していた、塗装済み組立ソフビキットのダイターン3を紹介したいと思う!
ダイターンファンの皆さんは、日輪の力を借りて、刮目して待て!


(取材協力 青島文化教材社)

市川大河公式サイト

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【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

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2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。